別れの曲の難易度は、全音ピアノピースの6段階でいちばん上のF(上級上)です。テレビやCMで流れる冒頭のメロディは、ゆったりしていて音の数も少なく、「これなら自分にも弾けそう」と感じた方も多いのではないでしょうか。ところが楽譜を買って弾き進めると、ページをめくったあたりから急に黒い音符が増え、両手が同時に跳ね回る中間部で手が止まってしまいます。
「冒頭はなんとか弾けるのに、なぜ最後まで通せないの?」と悩んでいるのは、あなただけではありません。Yahoo!知恵袋には、ピアノ教室の発表会で「幻想即興曲や革命を弾いた生徒はいるのに、別れの曲を弾いた生徒を見たことがない」という投稿まであります。別れの曲は、やさしそうに聴こえる曲の中に、上級の難所が1か所に集中している曲なのです。
- 別れの曲は実際どのくらい難しいの?全音Fってどのレベル?
- 中間部はなぜあんなに弾きにくいの?どう練習すればいい?
- ピアノを始めて何年目くらいなら挑戦していいの?
この記事では、全音ピアノピース・ヘンレ社・ピティナという3つの公式な指標で別れの曲の位置を確かめたうえで、中間部の難所を小節番号つきで分解し、今のレベルから最後まで弾き切るための練習ステップをお伝えします。ショパンのエチュード全体の難易度はショパン エチュード難易度ランキング【全24曲】で紹介しているので、この記事では別れの曲1曲を深掘りします。ノクターンやワルツを弾いたことがあり、次の目標として別れの曲を考えている方に向けた内容です。
※本記事は一部PRを含みます
別れの曲の難易度は全音F(上級上)|3つの指標で見る本当の位置

別れの曲の難易度は、全音ピアノピースのA〜Fの6段階で最も上のF(上級上)です。ドイツの原典版出版社ヘンレ社の9段階評価では7(難しい)で、上級の入口にあたります。指標によって見え方が少し違うので、まずは3つを並べてみましょう。
全音・ヘンレ・ピティナの3つの指標を並べると
別れの曲の難易度を3つの公式な指標で比べると、次のようになります。
| 指標 | 別れの曲の評価 | どういう位置か |
|---|---|---|
| 全音ピアノピース(A〜F) | F(上級上)/No.063 | 最上位ランク。革命のエチュード、英雄ポロネーズ、バラード第1番、スケルツォ第2番と同じ段 |
| ヘンレ社(1〜9) | 7(難しい) | ショパンのエチュード24曲の中では中位。作品10-9が6(中級)、木枯らしなど最難関が9 |
| ピティナ・ピアノステップ | 発展2〜展開3で演奏可 | 中上級〜上級のステップで弾ける曲として登録 |
出典:全音ピアノピースサイト(全音楽譜出版社)「難易度から探す」、G. Henle Verlag 難易度表、ピティナ・ピアノ曲事典
全音ピアノピースの難易度Fには、革命のエチュード・黒鍵のエチュード・木枯らしのエチュード・英雄ポロネーズ・バラード第1〜3番・舟歌、さらにベートーヴェンの「熱情」やリストの「ハンガリー狂詩曲第2番」まで、30曲あまりが並んでいます。別れの曲は、この「ピアノ曲の最上位グループ」の一員だということです。
一方で、ヘンレ社の評価が7にとどまっているのは、ショパンのエチュード全体と比べたときの相対的な位置だからです。ヘンレ社は作品10-9を6(中級)、作品25-6や木枯らし(作品25-11)を最高の9としており、別れの曲はその真ん中あたりにいます。「ピアノ曲全体では最上級、ショパンのエチュードの中では中くらい」というのが、別れの曲の正直な位置です。
※Yahoo!知恵袋の先の質問でも、回答者によって「革命と並ぶ上級上」「幻想即興曲より易しく悲愴くらい」と意見が割れていました。評価がここまでぶれる曲は珍しく、その理由は次の「冒頭と中間部の落差」にあります。
\弾きたい曲を1曲ずつ完成させる/
別れの曲の基本情報|作品10-3・ホ長調・約4分
別れの曲の正式な名前は「12の練習曲 作品10 第3番 ホ長調」です。ショパンが20〜22歳のころ、1832年に作曲し、作品10の12曲はまとめてフランツ・リストに献呈されました。
| 作曲者 | フレデリック・ショパン(1810〜1849) |
|---|---|
| 正式名 | 12の練習曲 作品10 第3番 ホ長調 |
| 作曲年 | 1832年(出版1833年) |
| 拍子・速度 | 4分の2拍子、Lento ma non troppo(遅く、しかし遅すぎずに) |
| 形式 | 3部形式(A:1〜21小節、B:22〜61小節ごろ、A’:62〜77小節) |
| 演奏時間 | 約3分40秒〜4分20秒 |
| 難易度 | 全音F(上級上)/ヘンレ7(難しい) |
楽譜は全部で77小節と短く、演奏時間は4分前後です。「上級上の曲」と聞くと10分近い大曲を想像しがちですが、別れの曲は量ではなく「質」で難しい曲だと覚えておいてください。
Fランクの正体は「冒頭」ではなく「中間部」

別れの曲が全音Fと評価される理由は、冒頭の有名な旋律ではなく、中間部(22小節ごろ〜61小節ごろ)にあります。曲はA(冒頭の主題)-B(中間部)-A’(主題の再現)の3部形式で、A部分だけを見れば中級上〜上級の曲です。
ところが中間部に入ると、音楽は「poco più animato(少し生き生きと)」の指示とともに次々に転調し、両手が重音(2つ以上の音を同時に弾くこと)で動き回ります。最後は46〜53小節、両手の6度の重音が8小節続くクライマックスを迎えます。全音Fの正体は、この8小節です。
難易度を考えるときは、「A部分は中級上〜上級、B部分は上級上」と2つに分けて捉えるのがおすすめです。こう分けると、「どこまでなら今の自分でも弾けるか」「どこに練習時間を集中させるべきか」がはっきりします。
冒頭21小節は、それだけでちゃんと1曲として成立する音楽だよ。ただ、全音Fの「上級上」は中間部を含めての評価だから、「冒頭は弾ける、中間部はこれから」と分けて考えるのがいちばん正直で、練習の計画も立てやすいんだ。
別れの曲が難しいポイント4つ|中間部に難所が集中する
別れの曲の難しいポイントは、大きく分けて4つあります。1つ目は冒頭から続く「旋律と伴奏の弾き分け」、残りの3つはすべて中間部に集中しています。先ほどの難所マップの①〜④の順に見ていきましょう。
難所①:右手1本で旋律と内声を弾き分ける
別れの曲の冒頭では、右手が旋律と伴奏の両方を担当します。旋律は主に右手の4・5の指(薬指と小指)で弾き、その下の16分音符の刻み(内声)を1・2の指(親指と人差し指)が受け持ちます。いちばん弱い指で旋律を歌い、いちばん強い指で伴奏を小さく弾くという、ふだんとは逆の力加減が求められるのです。
とくに親指は音が大きくなりやすく、人差し指は同じ柔らかい音を保つのが難しい指です。旋律だけ、内声だけをそれぞれ取り出して弾き、自分の耳で「旋律が内声に埋もれていないか」を確かめる練習が欠かせません。
フランスの名ピアニスト、アルフレッド・コルトーは、校訂した楽譜の中で、上の声部をフォルテのレガートで、中の声部をメゾピアノで、いちばん下の16分音符をピアニッシモで弾き分ける練習を提案しています。音の数が少なくても、3つの音量を同時にコントロールするという意味で、A部分も決して初級の曲ではありません。
難所②:中間部の転調と跳躍
中間部に入ると、音楽は次々に調を変えていきます。調号はホ長調(♯4つ)のままなのに臨時記号(♯・♭・♮)が一気に増え、譜読みの段階で時間がかかるのがこの部分です。
さらに、左手は広い範囲を跳躍しながら重音をつかみ、右手は3度や6度の2つの音を同時にトリル(細かく交互に鳴らす)のように動かす場面が出てきます。右手の「二重トリル」は、2つの音がずれないこと、音がばらけず芯のあるタッチで鳴ることの2点ができて初めて「弾けた」といえるので、ここで止まってしまう方がとても多いのです。
ハノンには3度の重音(第50番)や6度のトリル(第59番)を鍛える練習曲があり、中間部に入る前の準備運動として使えます。中間部のパッセージをいきなり弾くより、こうした「部品」の練習を先に積んでおくと遠回りに見えて近道です。
難所③:減7の和音が続く「つかみにくい」部分(38小節〜)
38小節あたりからは、減7の和音(不安定で緊張感のある響きの和音)や三全音(ドとファ♯のような、増4度の不安定な音程)が続きます。臨時記号が多く、リズムも不規則なため、指が覚えにくいのが特徴です。和音の形が似ているのに少しずつ違うので、「なんとなく」で弾くと必ず間違える場所でもあります。
この部分は、1音ずつ読むより「半音ずつ上がる(下がる)進行でできている」と構造で捉えると、急に見通しがよくなります。楽譜に鉛筆で「半音上」「半音下」と矢印を書き込み、和音の形がどう平行移動しているかを先に確認してから鍵盤に向かってみてください。
難所④:46〜53小節、両手の6度の重音
別れの曲で最も難しいのが、46〜53小節の両手の6度の重音が8小節続くクライマックスです。6度とは「ドとラ」のように6つ離れた音程で、右手も左手も2つの音を同時に押さえながら、鍵盤の上を大きく動き続けます。
難しさの種類は3つあります。1つ目は、2つの音を同時に正確な場所でつかむ正確さ。2つ目は、8小節のあいだ力を入れたまま弾き続けてしまい、手首や前腕が固まること。3つ目は、厚い響きの中でも旋律が聴こえるように音を整える耳です。手の小さい方や指が開きにくい方にとっては、別れの曲全体の中で最大の壁になります。
ただし、あきらめる必要はありません。あるピアノ講師のブログでは、手が大きくないご本人が毎日のストレッチを続けた結果、9度(ドから次のレまで)が届くようになったと書かれています。6度の重音は練習時間よりも「毎日少しずつ」の積み重ねが効く箇所です。
別れの曲の中間部を攻略する練習ステップ

別れの曲の中間部は、「いきなり両手で通さない」ことが最大のコツです。4小節ずつ区切り、重音を和音の形で覚え、片手でとてもゆっくり弾いてから両手に進む、という順番を守るだけで、挫折する確率はぐっと下がります。
5つのステップで中間部を仕上げる
中間部を仕上げるまでの流れを、5つのステップにまとめました。
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 4小節ずつ区切る | 中間部を4小節単位に分け、1か所ずつ譜読みする | 難所②③④を混ぜない。1日1〜2ブロックで十分 |
| 2. 和音でつかむ | 動いている重音を「1拍分の和音」としてまとめて押さえ、手の形を覚える | 和音の移り変わりを目で追わずに押さえられるまで |
| 3. 片手練習 | 右手・左手を別々に、とてもゆっくり弾く | 手首や腕に力が入っていないか確認しながら |
| 4. 両手でゆっくり | 4小節単位で両手を合わせ、つなげる範囲を少しずつ広げる | 46〜53小節は最後に回してもよい |
| 5. テンポを上げる | メトロノームを少しずつ上げ、A’主題への戻りまで通す | 中間部の後の静けさまで含めて1つの流れに |
中間部だけで2〜3か月かける前提で、週末にまとめて練習するより1日10〜15分を毎日続けるほうが指が覚えます。ステップ3の「とてもゆっくり」は、本当に全部の音がスローモーションで見えるくらいの遅さです。指が確実に動くようになるまで、テンポを上げないことが結果的にいちばん早い道になります。
6度の重音は「上の音」を聴きながら練習する
46〜53小節の6度の重音は、2つの音を同じ強さで鳴らそうとすると響きが硬くなります。ピティナ・ピアノ曲事典の解説でも、厚い響きの中でも和音の最高音を歌わせ、硬く聴かせないことが大切だとされています。右手は上の音(5の指側)を、左手は下の音を少しだけ意識して出すと、6度の連続が「音の壁」ではなく旋律として聴こえてきます。
手が小さい方は、無理に指を広げ続けるより、1つの重音を弾いたら一瞬手の力を抜くことを意識してください。スラー(なめらかにつなぐ指示)で2つずつまとめられた重音は、手首をしなやかに使い、スラーの終わりの音で脱力して大きくしないのがコツです。力を入れたまま8小節を弾き切ろうとすると、手首や前腕を痛める原因になります。痛みを感じたら、その日の6度の練習は終わりにしましょう。
テンポは「Lento ma non troppo」をどう読むか
別れの曲の速度記号は「Lento ma non troppo(遅く、しかし遅すぎずに)」です。実はショパンの自筆譜では「Vivace(速く生き生きと)」と書かれており、出版の段階で遅いテンポに改められたと考えられています。ポーランドのショパン研究者ヤン・エキエルによれば、ショパンは出版譜にメトロノーム記号「100」を書き添えており、一般的な演奏はこれより遅いことが多いとされています。
この経緯を知っておくと、テンポ設定のヒントになります。冒頭をあまりに遅く弾くと、旋律が途切れて重たくなりがちです。「ゆっくりだけれど、前に進む流れは失わない」くらいのテンポを目指すと、中間部に入ったときの「少し生き生きと」との対比も自然に生まれます。
もう1つ覚えておきたいのは、中間部を「強く・重く」弾かないことです。ショパン自身は華奢で体力に乏しく、ピアノの音も大きくなかったと伝えられています。中間部の激しさは「音量の激しさ」ではなく「和声と動きの激しさ」なので、強打で厚ぼったくするより、軽やかに流れるほうがショパンらしく聴こえます。
別れの曲は何年目で弾ける?年数より「先に弾けておきたい曲」で判断

「別れの曲はピアノを始めて何年目で弾けるのか」という疑問には、年数だけでは正確に答えられません。週に何時間練習するか、子どものころに習っていたかどうかで、同じ「5年目」でも実力はまったく違うからです。目安として言えるのは、全音Eの曲(ノクターン作品9-2や幻想即興曲など)を1曲通して弾けた人なら、別れの曲に取りかかれるということです。
全音ピアノピースのショパン作品で見るステップアップ
全音ピアノピースのランクで、ショパンの代表的な曲を並べると次のようになります。
| 全音ランク | ショパンの主な曲 | 別れの曲に向けて身につくこと |
|---|---|---|
| D(中級上) | 夜想曲 嬰ハ短調(遺作)、華麗なる大円舞曲 作品18、ワルツ 作品64-2 | 旋律を歌わせる基礎、左手の伴奏に乗せて右手を動かす感覚 |
| E(上級) | ノクターン作品9-2、雨だれの前奏曲、幻想即興曲、ワルツ(遺作) | 右手の中での音量の弾き分け、臨時記号の多い譜読み、速いパッセージ |
| F(上級上) | 別れの曲、革命のエチュード、英雄ポロネーズ、バラード第1番 | — |
年数の目安として、子どものころから続けている方であれば中高生のうちに、大人になってから始めた方であれば毎日練習して5〜8年目くらいでE段の曲に手が届くケースが多いようです。ただし、これはあくまで目安です。「何年目か」より、「E段の曲を1曲、最後まで仕上げたことがあるか」で判断してください。
ノクターン作品9-2では、右手の旋律を歌わせながら左手の伴奏を小さく保つ「歌う力」が、幻想即興曲では臨時記号の多い譜読みと速いパッセージへの耐性が身につきます。別れの曲の「A部分はノクターンで、中間部はエチュードの入口の曲で準備できる」と考えると、ステップアップの道筋が見えてきます。
挑戦する前のセルフチェック
別れの曲に取りかかる前に、次の項目を確認してみてください。3つ以上当てはまれば、挑戦してよいタイミングです。
- ショパンのノクターンかワルツを、少なくとも1曲最後まで弾いたことがある
- 右手の中で、旋律だけを大きく、伴奏を小さく弾き分けられる
- 臨時記号の多い楽譜でも、時間をかければ自力で譜読みができる
- オクターヴ(ドから次のドまで)を無理なく押さえられる
- 同じ曲に2〜3か月かけて取り組むことに抵抗がない
当てはまる項目が少ない場合は、表のDやEの曲を先に1曲仕上げるのが近道です。遠回りに見えても、別れの曲の「歌う」部分はノクターンで、「重音」の部分はワルツやエチュードの入口の曲で、それぞれ準備できます。ショパンのノクターンの難易度はショパンのノクターンの難易度一覧にまとめています。
大人・初心者が別れの曲に挑むなら|冒頭だけ先に仕上げるのもアリ
大人になってからピアノを始めた方や、まだ全音Eの曲を弾いたことがない方でも、別れの曲を目標にすること自体はまったく問題ありません。大切なのは、いきなり全曲を目指さず、段階を区切ることです。選択肢は「冒頭だけ」「中間部カットのショートバージョン」「アレンジ版」の3つあります。
A部分(1〜21小節)だけを「1曲」として仕上げる
別れの曲の冒頭21小節は、それだけでまとまった音楽として聴かせることができます。まずはA部分だけを目標に設定し、旋律と内声の弾き分けまで丁寧に仕上げてみましょう。家族の前で弾いたり、録音して聴き返したりできる「完成した1曲」があると、そのあとの中間部の練習にも前向きに取り組めます。
A部分が仕上がったら、中間部の練習ステップに進みます。中間部が弾けるようになるまでの間も、A部分を弾く楽しみは手放さずにいられるので、挫折しにくい進め方です。
中間部をカットした「ショートバージョン」という手もある
原曲の楽譜のまま、中間部を飛ばしてA部分から終わりのA’部分へつなぐ「ショートバージョン」も、大人の学習者にはよく使われる方法です。19小節あたりから73小節あたりへ飛ぶと、調も同じホ長調なので自然につながります。使う楽譜は原曲のものなら何でもかまいません。
目安として、ランゲの「花の歌」が弾ける方なら、このショートバージョンには挑戦できます。発表会でも「別れの曲(抜粋)」として演奏する方は少なくありません。まず短い版で人前に出し、後から中間部を足して「完全版」を目指す、という2段階の目標にすると、モチベーションを保ちやすくなります。
やさしいアレンジ版から入るという選択肢
原曲がまだ難しすぎると感じる場合は、初中級向けにアレンジされた楽譜から入るのも1つの方法です。市販の大人向け曲集には、たとえば次のようなアレンジが収録されています。
| レベル | アレンジの特徴 | 収録例 |
|---|---|---|
| 入門 | ハ長調に移調、冒頭の有名部分のみ。左手はアルベルティ・バス(分散和音の伴奏) | 「おとなのためのピアノ曲集 クラシック編1」(橋本晃一編) |
| 初級 | ヘ長調、冒頭部分のみ。左手の動きが少なくおしゃれな響き | 「きらきらピアノ おとなのピアノ名曲集 クラシック レベルA」(轟千尋編) |
| 初中級 | ニ長調、装飾音も入り原曲に近い雰囲気。難しい中間部をカットして前後をつなぐ | 「おとなのためのピアノ小曲集〜バイエルからツェルニー30番併用」(橋本晃一編) |
| 中級 | 原曲の楽譜で中間部をカットするショートバージョン | 原曲楽譜(全音ピアノピース No.063など) |
アレンジ版で曲の流れを体に入れておくと、原曲に進んだときの譜読みがぐっと楽になります。ただし、アレンジ版は楽譜によって難易度がかなり違います。購入前に楽譜のサンプルページを確認し、今弾いている曲と同じくらいの音の密度かどうかを目安に選んでください。
ひとりで練習が止まったら、曲単位で学べる方法も
別れの曲の中間部は、「なぜ弾けないのか」が自分では分かりにくい場所です。力みなのか、運指なのか、譜読みの間違いなのかは、弾いている姿を見てもらうとすぐに分かることが多いものです。独学で練習が止まってしまったときは、1曲だけを目標にしたレッスンを短期間だけ使うのも選択肢に入れてみてください。大人の独学で行き詰まりやすいポイントは、大人のピアノ独学のコツでも詳しく解説しています。
\憧れの曲を最後まで弾き切る/
別れの曲を「歌う」ために知っておきたい背景
別れの曲は、ショパン自身が自分の作品の中でもとりわけ愛した旋律だと伝えられています。難所の練習と同じくらい、どんな曲として弾くかを知っておくと、冒頭の旋律の表情が変わってきます。
ショパンが「これ以上美しい旋律は書けない」と語った曲
ショパンの弟子アドルフ・グートマンの証言として、ショパンがこの曲について「こんなに美しい旋律はもう二度と書けない」という趣旨のことを語ったと伝えられています。グートマンの証言には、ショパンがこの曲を聴きながら「ああ、わが祖国よ!」と声を上げたという話も残っています。
作曲された1832年は、ショパンが故郷ポーランドを離れ、パリに移り住んで間もない時期でした。旋律を「きれいに弾く」だけでなく、戻れない故郷への思いが込められた歌として想像してみると、フレーズの終わりの音の置き方が変わってくるはずです。
「別れの曲」はショパンが付けた題名ではない
「別れの曲」という名前は、ショパン自身が付けたものではありません。日本でこの呼び名が定着したのは、ショパンの青年時代を描いた1934年製作のドイツ映画が、日本で『別れの曲』という題名で公開され、この曲が主題として使われたことがきっかけとされています。欧米では「Tristesse(悲しみ)」や「L’Adieu(別れ)」と呼ばれることもありますが、これも後の時代に付けられた愛称です。
題名のイメージに引っぱられて、最初から最後までしんみりと弾く必要はありません。中間部の激しさを含めて1つのドラマとして弾くと、冒頭の旋律が戻ってきたときの美しさがいっそう際立ちます。
同じ作品10の仲間の中での位置づけ
別れの曲は「12の練習曲 作品10」の3曲目で、前後の第2番(半音階)や第4番は速いパッセージの曲です。音楽学者ジム・サムスンは、自筆譜に速い指示があったことから、熱情的な第4番と対になる作品と考えています。つまり別れの曲は、エチュード集の中で「歌う技術」を鍛える役割を担った曲だといえます。
エチュードの中での難易度や、ほかの曲との比較はショパンのエチュード難易度ランキングで詳しくまとめています。
聴き比べで「自分の別れの曲」を見つける
練習の合間に、ピアニストごとの演奏を聴き比べてみるのもおすすめです。ポリーニの「主題の歌わせ方と中間部を一気に弾き切る技術」、ブーニンの「クリアで華やかな音像」、中村紘子の「やや遅めのテンポで語りかけるような温かさ」、ルガンスキーの「深みとシャープな切れ味」、横山幸雄の「音の粒が揃った自然な流れ」など、同じ楽譜からこれほど違う音楽が生まれるのかと驚くはずです。
自分がどの演奏に惹かれるかを知っておくと、テンポ設定や中間部の音量の判断に迷ったときの「基準」になります。
別れの曲の難易度に関するよくある質問
別れの曲の難易度について、よく調べられている疑問に短く答えます。
別れの曲と幻想即興曲はどちらが難しい?

全音ピアノピースでは、別れの曲がF(上級上)、幻想即興曲がE(上級)で、別れの曲のほうが上のランクです。ただし難しさの種類が違います。幻想即興曲は右手4つに対して左手3つという「4対3のポリリズム」と、速いパッセージを最後まで保つ持久力が壁になり、最初から両手が合わずに止まる人が多い曲です。一方の別れの曲は、冒頭は弾けても中間部8小節の6度の重音で止まる人が多い曲です。
「速い曲で勢いに乗るのが得意」なら幻想即興曲から、「ゆっくりでも音を聴き分けて歌わせるのが得意」なら別れの曲から、と自分の得意で選ぶのがおすすめです。幻想即興曲の難易度と練習ルートは幻想即興曲の難易度と練習ルートで解説しています。
別れの曲と革命のエチュードはどちらが難しい?
全音ピアノピースでは、別れの曲も革命のエチュード(作品10-12)も同じF(上級上)です。Yahoo!知恵袋の回答でも「革命と並ぶ上級上」とする意見と「革命が弾ける人なら別れの曲も弾ける」とする意見の両方が見られます。革命は左手の速い16分音符が最初から最後まで止まらない曲で、「全体がずっと難しい」タイプです。別れの曲は「難所が1か所に集中する」タイプなので、どちらが弾きやすいかは人によって分かれます。
手が小さいと別れの曲は弾けない?
手が小さくても弾けます。6度の重音はオクターヴより狭い音程なので、オクターヴが届く手なら物理的には押さえられます。問題になるのは「届くかどうか」より「届いた状態で力を抜けるか」です。先に紹介したように、毎日のストレッチで9度が届くようになったピアノ講師の例もあります。重音のあとに一瞬力を抜く癖をつけ、痛みが出たらその日は切り上げる、を守ってください。
別れの曲は発表会で弾いてもいい?
もちろん弾けます。ただ、発表会で全曲を弾く生徒が少ないのは事実で、冒頭だけ、または中間部をカットしたショートバージョンで演奏する方も多いです。「抜粋」であることを恥じる必要はまったくありません。冒頭21小節を美しく歌えた演奏は、中間部を無理に弾いて崩れた演奏より、聴く人の心に残ります。
別れの曲の楽譜はどれを選べばいい?
原曲の楽譜なら、全音ピアノピース No.063(1曲だけ安く手に入る)、ショパン演奏の標準とされるパデレフスキ版、ショパン国際ピアノコンクールの公式楽譜であるエキエル版(ナショナル・エディション)、原典版のヘンレ版などがあります。迷ったら、運指やペダル指示が丁寧なパデレフスキ版か、1曲単位で買える全音ピアノピースから始めるのが無難です。著作権の切れた古い版は、IMSLP(ペトルッチ楽譜ライブラリー)で無料でも閲覧できます。
まとめ|別れの曲の難易度は全音F、鍵は中間部8小節
この記事では、別れの曲の難易度と、中間部の難所・練習ステップ・挑戦の目安をお伝えしました。冒頭の3つの疑問への答えをまとめます。
- どのくらい難しい?:全音F(上級上)、ヘンレ7(難しい)。ピアノ曲全体では最上級、ショパンのエチュードの中では中位
- 中間部はどう練習する?:4小節ずつ区切り、重音を和音でつかみ、片手→両手→テンポアップの5ステップ。46〜53小節の6度は上の音を聴きながら、力を抜いて
- 何年目で弾ける?:年数よりも、全音Eの曲(ノクターン作品9-2や幻想即興曲など)を1曲通して弾けたかどうかが目安
別れの曲の難易度は、冒頭の印象よりもずっと高いのが正直なところです。それでも、難所がどこにあるかを知り、A部分と中間部を分けて練習すれば、目標までの道のりはぐっと現実的になります。この記事で紹介した練習ステップを参考に、まずは冒頭21小節から始めてみてください。
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