ボサノバの名盤おすすめ10選|ボサノバとは何かと定番曲もわかる

ボサノバの名盤を探していると、「イパネマの娘」が入ったアルバムだけでも何種類もあって、どれを選べばいいのか迷ってしまいませんか?カフェで流れていて心地よかったあの音楽を、ちゃんと自分の部屋でも聴きたい。そんな方は多いのではないでしょうか。 ボサノバは、1950年代末のブラジル・リオデジャネイロで生まれ、アメリカのジャズと出会って世界中に広がった音楽です。誰が作り、誰が歌い、誰が世界に広めたのかを知ると、「最初の1枚」がぐっと選びやすくなります。

  • ボサノバの名盤で、最初に聴くべきアルバムはどれ?
  • ボサノバとはどんな音楽で、サンバやジャズとは何が違うの?
  • 気分や場面に合わせて選ぶなら、どのアルバムがおすすめ?

この記事は、ボサノバをきちんと聴いてみたい方や、ジャズからボサノバに興味を持った方に向けて、名盤10枚を録音年・レーベル・参加メンバーとあわせて紹介し、ボサノバとは何かもやさしく解説します。聴く順番の目安と、10枚の次に進みたい名盤まで紹介するので、この記事を読み終えるころには、今夜かける1枚が決まっているはずです。

目次

ボサノバの名盤おすすめ10選|最初の1枚は『Getz/Gilberto』

ボサノバの名盤で最初に聴くなら、スタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトの『Getz/Gilberto』がおすすめです。「イパネマの娘」「デサフィナード」など定番曲がそろい、ブラジルのボサノバとアメリカのジャズが出会った瞬間を1枚で味わえるからです。ここではブラジル本国の名盤と、アメリカで生まれた名盤の両方から、録音年・レーベルを確認できた10枚を選びました。 迷ったら、『Getz/Gilberto』→『Chega de Saudade』→『Wave』→『Elis & Tom』の順で聴いてみてください。「世界に広まったボサノバ」から「原点」へ、そして「インストの到達点」「歌の到達点」へと進む流れで、4枚だけでボサノバの全体像がつかめます。

ソラ
「イパネマの娘」が入ったアルバムがいくつもあって、どれが本家なのか分からない…
カイ
世界的に有名になったのは『Getz/Gilberto』のバージョンだよ。ボサノバの名曲は、いろいろな歌手や演奏家が録音し直しているから、「誰の、どのアルバムの録音か」で選ぶのがコツなんだ。

アルバム 年 レーベル 主な参加者 こんな人に
『Getz/Gilberto』 1963録音 Verve スタン・ゲッツ、ジョアン・ジルベルト、トム・ジョビン、アストラッド・ジルベルト 最初の1枚に
『Chega de Saudade』 1959 Odeon ジョアン・ジルベルト(プロデュース:トム・ジョビン) ボサノバの原点を知りたい
『Jazz Samba』 1962録音 Verve スタン・ゲッツ、チャーリー・バード ジャズ好きの入口に
『Elis & Tom』 1974録音 Philips エリス・レジーナ、トム・ジョビン 歌の魅力を味わいたい
『The Composer of Desafinado, Plays』 1963 Verve トム・ジョビン(編曲:クラウス・オガーマン) ピアノとストリングスで
『Wave』 1967 A&M トム・ジョビン(編曲:クラウス・オガーマン)、ロン・カーター インストで静かに
『Herb Alpert Presents Sergio Mendes & Brasil ’66』 1966 A&M セルジオ・メンデス、ラニ・ホール 明るくポップに
『Big Band Bossa Nova』 1962 Mercury クインシー・ジョーンズ ビッグバンドで華やかに
『Canção do Amor Demais』 1958 Festa エリゼッチ・カルドーゾ、ジョアン・ジルベルト(ギター) 誕生前夜を聴きたい
映画『黒いオルフェ』サウンドトラック 1959 — トム・ジョビン、ルイス・ボンファ 映画とあわせて

『Getz/Gilberto』(1963年録音)|世界にボサノバを広めた決定盤

『Getz/Gilberto』は、1963年3月18〜19日にニューヨークで録音され、1964年にヴァーヴから発売されたボサノバの決定盤です。テナーサックスのスタン・ゲッツ、ギターと歌のジョアン・ジルベルト、ピアノのアントニオ・カルロス・ジョビン(トム・ジョビン)、ドラムスのミルトン・バナナらが参加し、プロデュースはクリード・テイラーが務めました。 「イパネマの娘(The Girl from Ipanema)」で英語の歌詞を歌っているのは、ジョアンの当時の妻アストラッド・ジルベルト。気負いのない素朴な歌声が大きな話題となり、このアルバムはグラミー賞の最優秀アルバム賞を、「イパネマの娘」は最優秀レコード賞を受賞しました。ジャズのアルバムが最優秀アルバム賞を獲ったことは、当時のボサノバ人気の大きさを物語っています。

ピアノで聴く「イパネマの娘」(演奏:Hiroshi Nakamura)

『Chega de Saudade』(1959年)|ボサノバ誕生の記念碑

ジョアン・ジルベルトの『Chega de Saudade(シェガ・ジ・サウダージ)』は、ボサノバ誕生を告げた記念碑的なアルバムです。1959年にブラジルのオデオンから発売され、トム・ジョビンがプロデュースを担当しました。タイトル曲のほか「Desafinado」なども収録されています。ささやくような歌声と、ギター1本でサンバのリズムを表現する独特の奏法は、ここからボサノバの「標準」になりました。 音数の少ない、隙間を生かした響きは、発売から60年以上たった今聴いても驚くほど新鮮です。日本では『想いあふれて』の邦題でも知られています。

ピアノで聴く「Chega de Saudade」(演奏:Sangah Noona)

『Jazz Samba』(1962年録音)|アメリカのボサノバ・ブームの火付け役

スタン・ゲッツとギタリストのチャーリー・バードによる『Jazz Samba』は、1962年2月13日にワシントンD.C.の教会のホールで録音され、ヴァーヴから発売されました。Billboardのアルバムチャートで1位を獲得し、収録曲「Desafinado」でゲッツはグラミー賞を受賞しています。アメリカでボサノバ・ブームが起こるきっかけとなった1枚で、ジャズファンがボサノバに入る入口として最適です。 なお、ブラジル遠征でいち早くボサノバに魅了されたチャーリー・バードは、同じ1962年に自身のリーダー作『Bossa Nova Pelos Passaros』(リヴァーサイド)も録音しています。ナイロン弦ギターを指で爪弾く気品ある音色が好きになったら、こちらにも手を伸ばしてみてください。

ピアノで聴く「Desafinado」(演奏:Sangah Noona)

『Elis & Tom』(1974年録音)|歌とピアノの対話

ブラジルを代表する歌手エリス・レジーナと、トム・ジョビンが共演したアルバムです。1974年2月から3月にかけてロサンゼルスで録音され、フィリップスから発売されました。冒頭の「三月の水(Águas de Março)」での2人の掛け合いは、何度聴いても楽しさにあふれています。アレンジとピアノはセーザル・カマルゴ・マリアーノが中心となって手がけました。 笑い声まじりに言葉を投げ合うデュエットからは、音楽を奏でる喜びそのものが伝わってきます。ボサノバの「歌」の到達点として、多くのファンが挙げる1枚です。

ピアノで聴く「三月の水(Águas de Março)」(演奏:Piano Mario)

『The Composer of Desafinado, Plays』(1963年)|作曲者本人が奏でる名曲集

『The Composer of Desafinado, Plays』は、トム・ジョビンがアメリカで録音した初のソロ・インスト作品です。1963年にヴァーヴから発売され、クラウス・オガーマンの優美なストリングスを背景に、「イパネマの娘」「Desafinado」「Corcovado」といった自作の名曲を、ジョビン自身が控えめなピアノとギターで奏でています。 音数を絞ったジョビンのピアノは、メロディーメーカーとしての才能と美しい和声の感覚がそのまま伝わってくる、最良のお手本です。歌詞を追わずにボサノバの「曲そのものの美しさ」を確かめたい方に、まず聴いてほしい1枚です。

ピアノで聴く「Corcovado」(演奏:Hiroshi Nakamura)

『Wave』(1967年)|夜に浸れるインストの傑作

トム・ジョビンの『Wave(波)』は、夜に静かに浸りたいときにぴったりのインスト中心の傑作です。1967年にA&Mから発売され、クラウス・オガーマンが編曲・指揮を担当。ジョビンのピアノとギターに、ストリングスやフルート、ロン・カーターのベースが寄り添います。 表題曲「Wave」の、寄せては返す波のような旋律は、一音一音を慈しむように響きます。ほぼインストゥルメンタルなので、読書や作業のBGMにも向いています。

ピアノで聴く「Wave」(演奏:Jacob Koller)

『Herb Alpert Presents Sergio Mendes & Brasil ’66』(1966年)|ポップに花開いたボサノバ

セルジオ・メンデス&ブラジル’66のデビュー作は、ボサノバをポップに翻訳して世界に広めた1枚です。1966年にA&Mから発売され、Billboardのアルバムチャートで7位まで上昇しました。冒頭の「Mas Que Nada(マシュ・ケ・ナダ)」は、ボサノバを知らない人でもどこかで耳にしたことがあるはずです。 英語詞の明るいコーラスが多く、ボサノバ入門として最も敷居の低い部類と言えます。厳密には「Mas Que Nada」はサンバ寄りの曲ですが、だからこそサンバとボサノバの「地続き感」を体で覚えられるアルバムでもあります。

ピアノで聴く「Mas Que Nada」(演奏:Hiroshi Nakamura)

『Big Band Bossa Nova』(1962年)|「Soul Bossa Nova」で知られる華やかな1枚

クインシー・ジョーンズの『Big Band Bossa Nova』は、ボサノバのリズムをビッグバンドで豪快に鳴らしたアルバムです。1962年にマーキュリーから発売されました。冒頭を飾る「Soul Bossa Nova」は、のちに映画やテレビで繰り返し使われてきたおなじみのメロディで、「Manhã de Carnaval」「One Note Samba」のカバーも収録されています。 静かな室内楽のようなボサノバとは対極の、気分が高まる賑やかさが魅力です。ブラジル生まれのボサノバが、アメリカのジャズの中でどう料理されたかを体感できます。

ピアノで聴く「Soul Bossa Nova」(演奏:jakespeare711)

『Canção do Amor Demais』(1958年)|ボサノバ前夜の記録

歌手エリゼッチ・カルドーゾの『Canção do Amor Demais』は、ボサノバの「前夜」を記録した歴史的なアルバムです。1958年に発売され、トム・ジョビン作曲・ヴィニシウス・ジ・モライス作詞の楽曲が集められ、ジョアン・ジルベルトがギターで参加しました。ジョアンの刻む新しいギターのリズムが、公式録音として初めて世に出た作品のひとつとされています。 翌年の『Chega de Saudade』で花開くボサノバの萌芽を、ひと足先に聴ける1枚。歴史をたどる楽しみを味わいたい方におすすめです。

ピアノで聴く「Eu Não Existo Sem Você」(演奏:Paulo Cesar Santana)

映画『黒いオルフェ』サウンドトラック(1959年)|世界に扉を開いた映画音楽

1959年公開の映画『黒いオルフェ(Orfeu Negro)』は、リオのカーニバルを舞台にギリシャ神話を描いた作品で、音楽をトム・ジョビンとルイス・ボンファが手がけました。ボンファ作曲の「Manhã de Carnaval(カーニバルの朝)」の物憂い旋律は映画とともに世界へ広まり、ブラジル音楽が国際的な注目を集める大きなきっかけになりました。 哀愁のあるメロディが好きな方へ。映画を観てからサウンドトラックを聴くと、曲の背景まで味わえて二度おいしい1枚です。

ピアノで聴く「Manhã de Carnaval(カーニバルの朝)」(演奏:KoYumi Music)

【一次情報を追加:執筆者が最初に聴いたボサノバのアルバムと、そのときの印象(どこで聴いたか、どの曲が刺さったか)を1〜3文】

ボサノバとは?「新しい感覚」という名のブラジル音楽

ボサノバを生んだ音楽家たちのつながりを示した相関図 ボサノバ(ボサノヴァ、Bossa Nova)とは、1950年代後半にブラジル・リオデジャネイロで生まれた、サンバのリズムをゆったりと洗練させた音楽です。ポルトガル語の「bossa」は「センス」「独特の味わい」を意味する古い俗語で、「ボサノバ」は「新しい感覚」「新しい傾向」といった意味になります。

ソラ
ボサノバって、ジャズの一種なの?それともブラジルの音楽?
カイ
生まれはブラジルで、土台はサンバなんだ。そこにジャズのようなおしゃれな和音が重なっている。だからジャズの棚に並ぶことも多いけど、本来はブラジルのポピュラー音楽だよ。

ボサノバを生んだ3人

ボサノバの中心人物は、作曲家・ピアニストのアントニオ・カルロス・ジョビン(トム・ジョビン)、詩人・作詞家のヴィニシウス・ジ・モライス、そして歌手・ギタリストのジョアン・ジルベルトの3人です。ジョビンとモライスが書いた曲を、ジルベルトが独特のギターと歌で演奏したことで、ボサノバのスタイルが形づくられました。 この3人のまわりには、「イパネマの娘」の英語版で世界的に知られ、のちに「Queen of Bossa Nova」とも呼ばれた歌手のアストラッド・ジルベルト、「ボサノヴァのミューズ」と呼ばれた歌手のナラ・レオン、力強いギターでアフロ・ブラジル色の濃い名曲を生んだバーデン・パウエルなど、個性豊かな音楽家が集まっていました。ボサノバは、少人数の才能が密接につながりながら作り上げた音楽なのです。

どこで生まれた?

ボサノバは、リオデジャネイロの南部、コパカバーナやイパネマといった海辺の地区で育ちました。コパカバーナには若い音楽家が集まる小さなナイトクラブが並ぶ一角があり、そこでの演奏がボサノバの広がりを支えました。「イパネマの娘」というタイトルにも、この土地の空気が映し出されています。

ボサノバの特徴|サンバ・ジャズとの違い

ボサノバの特徴は、「ギター1本で表現するサンバのリズム」「ささやくような歌声」「ジャズを思わせる複雑な和音」の3つです。サンバとジャズの両方に似ていながら、そのどちらとも違う独自の音楽です。一言でいえば、音数を減らし、声を抑え、間(ま)を生かす「引き算の音楽」と言えるでしょう。

項目 サンバ ボサノバ ジャズ
リズム 打楽器中心でにぎやか サンバのリズムをギターで静かに表現 スウィング(跳ねるリズム)が基本
編成 大人数の打楽器・歌 ギターと歌が中心の少人数 コンボ〜ビッグバンド
歌い方 力強く張り上げる ささやくように抑えて歌う 曲によりさまざま
和音 比較的シンプル テンションを含む複雑な和音 テンションを含む複雑な和音

特徴①:ギターで刻むサンバのリズム

ジョアン・ジルベルトは、サンバで打楽器が担っていたリズムを、ナイロン弦のギター1本に置き換えました。親指で低音を弾いてスルド(大太鼓)の役割を、残りの指で和音を弾いてタンボリン(小さな打楽器)の役割を表現します。この奏法は「バチーダ」と呼ばれ、ボサノバの心臓部と言えます。にぎやかなサンバの打楽器アンサンブルを、たった1本のギターの中に凝縮したこの発明は、音楽史に残るイノベーションでした。

特徴②:ささやくような歌声

サンバの歌手が大きな声で歌い上げるのに対し、ボサノバの歌手は声を張らず、語りかけるように歌います。部屋の中で、すぐ隣にいる人に歌いかけるような親密さが、ボサノバの「心地よさ」の正体です。大きな音で盛り上げるのではなく、小さな音で心の距離を縮める──この美学があるからこそ、ボサノバは半世紀以上も「夜の音楽」「くつろぎの音楽」として愛され続けています。

特徴③:ジャズと似た和音、でも「スウィング」しない

ボサノバでは、テンションを含んだ複雑な和音や転調がよく使われます。この点はジャズと似ていますが、リズムはジャズのように跳ねる「スウィング」ではありません。ボサノバの作曲家カルロス・リラは、サンバは「左右に」、ジャズは「前後に」動く音楽だと表現しています。ボサノバは、ジャズの和声感覚をサンバの揺れに乗せた音楽だと言えるでしょう。コードの基礎はピアノコードの基本を解説した記事で確認できます。

ボサノバの歴史|リオからニューヨーク、そして世界へ

ボサノバの誕生から世界的ブーム・1970年代までを示した年表 ボサノバは1950年代末にブラジルで生まれ、1962年頃からアメリカで大ブームとなり、世界中に広がりました。名盤が生まれた順に歴史をたどると、アルバムの聴こえ方も変わってきます。

1958〜1959年:ブラジルでの誕生

1958年、歌手エリゼッチ・カルドーゾのアルバム『Canção do Amor Demais』に、ジョビンとモライスの曲が収められ、ジョアン・ジルベルトがギターで参加しました。これがボサノバの最初の姿とされることが多い録音です。翌1959年にはジルベルトの『Chega de Saudade』が発売され、ボサノバの誕生を決定づけました。同じ1959年には、ジョビンとルイス・ボンファの音楽を使った映画『黒いオルフェ』が公開され、ブラジル音楽が世界の注目を集めます。

1962年:カーネギー・ホールとアメリカのブーム

1962年、スタン・ゲッツとチャーリー・バードの『Jazz Samba』がアメリカでヒットし、同じ年の11月21日にはニューヨークのカーネギー・ホールでボサノバのコンサートが開かれました。同年12月にはクインシー・ジョーンズの『Big Band Bossa Nova』(マーキュリー)が発表されるなど、ジャズ界はこぞってボサノバを取り入れていきます。

1964年以降:世界的なスタンダードへ

1964年に発売された『Getz/Gilberto』はグラミー賞を席巻し、「イパネマの娘」は世界的なヒット曲になりました。1967年にはフランク・シナトラとジョビンが共演アルバムを録音するなど、ボサノバの曲はジャズやポップスのスタンダードとして定着しました。

1970年代:円熟、そしてMPBへ

ブームが落ち着いた1970年代にも、ボサノバは深化を続けました。1973年にはジョアン・ジルベルトが、ギターと声だけに限りなく近い音像の『João Gilberto』(通称「白いアルバム」)を発表。1974年には『Elis & Tom』が録音され、1977年にはジョアンとクラウス・オガーマンによる『Amoroso』が生まれます。一方、本国ブラジルではボサノバを土台に、エリス・レジーナやナラ・レオンらが活躍するMPB(ブラジルのポピュラー音楽)と呼ばれる豊かな流れが育っていきました。ボサノバは一時のブームで終わらず、ブラジル音楽全体の土壌になったのです。

【一次情報を追加:ボサノバの歴史の中で執筆者が特に心ひかれたエピソードや、ボサノバとの個人的な出会いを1〜3文】

ボサノバとラテンジャズ・ジャズの関係

ラテンジャズの中でのボサノバの位置づけを示した相関図 ボサノバは、ラテンジャズの「ブラジル系」の流れを代表する音楽です。ラテンジャズにはキューバ音楽を土台にしたアフロキューバン・ジャズと、ブラジル音楽を土台にしたブラジリアン・ジャズの2つの大きな流れがあり、ボサノバは後者の中心にあります。

ラテンジャズの中のボサノバ

アフロキューバン・ジャズが打楽器の熱いリズムを前面に出すのに対し、ボサノバは静かで内省的な響きが特徴です。同じ「ラテン」でも、聴いたときの印象は大きく異なります。ラテンジャズ全体の流れや名盤については、ラテンジャズの起源・名曲・名盤を紹介した記事で詳しく解説しています。

ジャズの名曲に残るボサノバの影響

ボサノバのリズムは、アメリカのジャズ・ミュージシャンにも大きな影響を与えました。たとえばピアニストのホレス・シルヴァーの名曲「Song for My Father」は、ブラジル旅行で触れたボサノバのリズムをもとに作られた曲です。また、トランペッターのケニー・ドーハムが作曲した「Blue Bossa」は、ボサノバのリズムを取り入れたジャズの定番曲として、今もセッションで盛んに演奏されています。ジャズのセッションでも「ボサノバで」という指定はおなじみで、ジャズピアノを弾く人にとってもボサノバのリズムは必修科目と言えます。

気分・シーン別|ボサノバのおすすめ名盤の選び方

ボサノバの名盤を「明るい・しっとり」×「歌もの・インスト」で配置したマトリックス図 ボサノバのおすすめ名盤は、「歌ものか、インストか」「しっとりか、明るいか」で選ぶと失敗しません。上のマップで自分の気分に近い場所から、聴く1枚を選んでみてください。

朝・昼・夜で選ぶなら

朝や休日のカフェタイムには、明るく軽やかな『Herb Alpert Presents Sergio Mendes & Brasil ’66』や『Jazz Samba』がよく合います。昼下がりのリラックスタイムには、ピアノとストリングスが上品な『The Composer of Desafinado, Plays』を。そして夜、静かに1日を締めくくりたいときには『Wave』や『Chega de Saudade』がぴったりです。ボサノバの多くは、人の心拍に近い穏やかなテンポで、音量の起伏も小さい音楽です。この「安定した穏やかさ」こそが、ボサノバが夜の音楽として愛される理由と言えます。

もっと聴きたい方へ|「次の1枚」におすすめの名盤

10枚を聴き終えて、もっとボサノバの世界に踏み込みたくなった方には、次のアルバムをおすすめします。

  • 『João Gilberto』(1973年・通称「白いアルバム」):ギターと声だけに限りなく近い、極限まで削ぎ落とされた音像。深夜にひとりで向き合いたい、ボサノバの本質を突き詰めた1枚です。
  • 『Amoroso』(1977年):ジョアン・ジルベルトの歌とギターに、クラウス・オガーマンのストリングスが溶け合う名盤。「Estate」「’S Wonderful」などボサノバの枠を超えた選曲も魅力です。
  • 『The Astrud Gilberto Album』(1965年):「イパネマの娘」で知られるアストラッド・ジルベルトの初リーダー作。ジョビンもギターで参加し、飾らない無垢な歌声がボサノバの「ささやき」の魅力を体現しています。
  • 『Francis Albert Sinatra & Antônio Carlos Jobim』(1967年):アメリカの大歌手フランク・シナトラが、ジョビンと組んで声量を抑えて歌った異色作。ジャズとボサノバの橋渡しに最適です。
  • 小野リサのアルバム:日本を代表するボサノバ歌手・小野リサのジョビン作品集や代表作は、日本語の解説とともに聴ける安心の入口です。ボサノバを「自分の日常の音楽」にしたい方へ。

【一次情報を追加:執筆者がボサノバをよく聴く場面と、その場面でのお気に入りアルバムを1〜3文】

ボサノバの定番曲|名盤とあわせて知りたい名曲

ボサノバの定番曲を知っておくと、名盤選びがもっと楽しくなります。同じ曲を複数のアルバムで聴き比べるのも、ボサノバの醍醐味です。多くの曲には英語のタイトルも付いているので、あわせて覚えておくと配信サービスで探しやすくなります。

曲名 英語タイトル 作曲・作詞 聴けるアルバムの例
イパネマの娘(Garota de Ipanema) The Girl from Ipanema 作曲:ジョビン/作詞:モライス 『Getz/Gilberto』『The Composer of Desafinado, Plays』
デサフィナード(Desafinado) Desafinado 作曲:ジョビン/作詞:ニュートン・メンドンサ 『Chega de Saudade』『Jazz Samba』『Getz/Gilberto』
シェガ・ジ・サウダージ(Chega de Saudade) No More Blues 作曲:ジョビン/作詞:モライス 『Chega de Saudade』
コルコヴァード(Corcovado) Quiet Nights of Quiet Stars ジョビン 『Getz/Gilberto』
三月の水(Águas de Março) Waters of March ジョビン 『Elis & Tom』
マシュ・ケ・ナダ(Mas Que Nada) Mas Que Nada ジョルジ・ベン 『Herb Alpert Presents Sergio Mendes & Brasil ’66』

まずは「イパネマの娘」を聴き比べる

「イパネマの娘」は、歌もの(『Getz/Gilberto』)とピアノ中心(『The Composer of Desafinado, Plays』)で聴き比べると、同じ曲の印象がまったく変わることに驚くはずです。ジャズの定番曲として、多くのジャズピアニストもこの曲を録音しています。ジャズピアノの名曲に興味がある方はジャズピアノの名曲・有名な曲15選もあわせてご覧ください。

「デサフィナード」は「音痴」という意味

ボサノバの定番曲「Desafinado(デサフィナード)」は、ポルトガル語で「音程が外れた」「調子っぱずれ」を意味します。ボサノバが登場したころ、ささやくような歌い方に対して「歌えない歌手のための音楽だ」という批判がありました。トム・ジョビン作曲、ニュートン・メンドンサ作詞のこの曲は、そうした批判へのユーモアあふれる返答として書かれたものです。実際のメロディは、半音の動きや意外な転調を含む、歌いこなすのがとても難しい旋律になっています。タイトルの意味を知ってから聴くと、作り手のちょっとした皮肉と遊び心が感じられるのではないでしょうか。 また、クインシー・ジョーンズの『Big Band Bossa Nova』の冒頭を飾る「Soul Bossa Nova」は、ボサノバのリズムをビッグバンドで華やかに鳴らした曲で、のちに映画やテレビでも繰り返し使われてきました。ブラジル生まれのボサノバが、アメリカのジャズの中でどう変化したかを感じられる1曲です。

まとめ|ボサノバの名盤で「新しい感覚」を味わおう

  • 最初の1枚は?:定番曲がそろう『Getz/Gilberto』。原点を知りたいなら『Chega de Saudade』へ。『Wave』『Elis & Tom』まで進めば、全体像がつかめます。
  • ボサノバとは?:1950年代後半のリオで生まれた、サンバのリズムをギターと抑えた歌で洗練させ、ジャズ的な和音を重ねた「引き算の音楽」です。
  • 気分別に選ぶなら?:明るく聴くならブラジル’66、夜に静かに聴くならジョビンの『Wave』、ピアノ好きならジョビンのピアノ作品、深夜の1枚なら「白いアルバム」がおすすめです。

【一次情報を追加:執筆者から読者へ、ボサノバの名盤でいちばん推したい1枚とその理由を1〜3文】

ボサノバの名盤は、何十年たっても色あせない「心地よさ」を届けてくれます。この記事で紹介したおすすめのアルバムを参考に、まずは1枚、ゆったりした時間に流してみてください。ボサノバと同じラテンの流れを知りたい方はラテンジャズの記事、ジャズの全体像は入門ジャズの歴史の記事もどうぞ。

弾いてみたい方へ

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