サティのジムノペディの難易度は、全音ピアノピースの評価で「C(中級)」です。ただし「音が少なくてゆっくりだから、大人の初心者でもすぐ弾けそう」と思って楽譜を開き、左手の跳躍やペダルの多さに戸惑った方も多いのではないでしょうか。
ジムノペディ第1番は、カフェやCMで流れるあの静かな響きを、自分の部屋で鳴らしてみたいと思わせる曲です。忙しい一日の終わりに、1音ずつゆっくり鳴らす時間を持ちたい。そんな気持ちで検索した方にこそ、「どこが難しく、どこなら今すぐ弾けるのか」を先に知っておいてほしい曲でもあります。
- ジムノペディ第1番の難易度は、全音や他のサイトの評価で見るとどのくらい?
- ピアノを始めて何年目、どの教本の段階なら弾ける?大人の初心者でも弾ける?
- 左手・ペダル・弱音で挫折しないためには、どんな順番で練習すればいい?
この記事は、ピアノを始めたばかり、または長いブランクのある大人の方に向けて書いています。全音ピアノピースの評価に加えて、楽譜サイトやQ&Aサイトで語られている「実際に弾いた人の声」も整理しながら、ジムノペディ第1番の難易度の根拠と、最後まで弾ききるための現実的な道筋をお伝えします。
ジムノペディの難易度は全音ピアノピースで「C(中級)」

ジムノペディの難易度は、全音ピアノピースの基準で「C(中級)」です。全音ピアノピースでは「No.471 3つのジムノペディ」(高橋アキ校訂・秋山邦晴解説)として第1番〜第3番がまとめて1冊になっていて、A〜Fの6段階のうち真ん中にあたるランクに分類されています。ここで押さえておきたいのは、このランクが第1番だけでなく3曲セットに付けられたものだという点です。
全音ピアノピースの6段階で見るジムノペディの位置
| ランク | レベル | 同じランクの主な曲(全音ピアノピース) |
|---|---|---|
| A | 初級 | モーツァルト「メヌエット」など |
| B | 初級上 | モーツァルト「トルコマーチ」(No.004) |
| C | 中級 | サティ「3つのジムノペディ」(No.471)、バダジェフスカ「乙女の祈り」、パッヘルベルのカノン |
| D | 中級上 | シューマン「トロイメライ」 |
| E | 上級 | ベートーヴェン「月光の曲」、ショパン「幻想即興曲」 |
| F | 上級上 | ショパン「革命のエチュード」など |
※全音ピアノピース公式サイトの「難易度から探す」の分類にもとづく(2026年10月時点)。
全音の難易度は、楽譜に書かれた技術の量から付けられた出版社の目安です。同じCの中にも、速い指の動きが中心の曲と、ジムノペディのように響きのコントロールが中心の曲が混ざっています。ランクは「どれくらいの段階の人が挑戦する曲か」の物差しとして使い、自分に合うかどうかは、このあと紹介する難所と練習法で判断するのがおすすめです。
サイトによって「初級」「中級」が食い違う理由
ジムノペディの難易度を調べると、「初級上」「2(初級)」「ブルグミュラー後半程度」「中級」と、サイトによって評価がばらばらなことに気づくはずです。食い違う理由は、評価の物差しが「指の技術」なのか「大人か子どもか」なのかで変わるからです。
たとえば楽譜サイトのPiaDOORは、大人には「2(初級上)」、子どもには「3〜4」と、同じ曲に2つの評価を付けています。テンポがゆっくりなので大人なら跳躍があっても取り組めるけれど、子どもには音域の広さとつかみにくい和音が壁になる、という考え方です。ヘンレ社の基準を参考にした楽譜サイトでは3曲とも「2(初級)」、ピアノ講師のブログでは「ブルグミュラー後半程度」とされています。
当サイトでは、全音のC(中級)を公式の目安としつつ、「第1番だけ・大人の学習者なら初級上〜中級の入り口」と捉えています。評価が割れる曲ほど、自分の弱点(速い指が苦手か、音を聴き分けるのが苦手か)で体感の難しさが変わる、と覚えておいてください。

「音が少ない=簡単」ではない
ジムノペディ第1番の楽譜は、音符の数だけ見ればたしかに少なく、譜読みで苦労する曲ではありません。それでも「簡単」と言い切れないのは、音の少なさとは別の種類の難しさがあるからです。左手が低い音から和音へ大きく跳ぶこと、ペダルを踏みかえるタイミング、そして長く伸ばす音の間にテンポを保つこと。どれも「指が速く動くかどうか」とは関係がなく、だからこそ大人の初心者でも、練習の仕方しだいで届く難しさだといえます。
Yahoo!知恵袋には、10年ぶりにピアノを再開した方が「この曲だけ弾ければいい」と質問した投稿があります。回答者のひとりは、楽譜では音が少なく簡単そうに見えたのに伴奏の音取りで苦労したと振り返り、別の回答者は、メロディ・ベース・中間の和音が大きく離れているため、聴こえるより構造が複雑で、いちばんの課題は運指(指番号)を決めることだと指摘していました。「簡単そうに聴こえるが、実際は手が忙しい」という感想は、この曲を弾いた人にかなり共通しています。
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ジムノペディ第1番はどんな曲?難易度に関わる3つの特徴

ジムノペディ第1番の難易度を決めているのは、曲の作りそのものです。エリック・サティが1888年に書いた「3つのジムノペディ」の第1曲で、楽譜の冒頭には「Lent et douloureux(ゆっくりと、痛ましく)」と書かれています。調はニ長調、演奏時間は3分半ほど。ここでは、弾き手から見た3つの特徴を整理します。
特徴1:ゆっくりした3拍子が最後まで続く
ジムノペディ第1番は4分の3拍子で、ゆっくりしたテンポが曲の最後まで変わりません。しかも全曲が4分音符以上の長さの音符だけで書かれています。テンポの変化がないのは弾きやすさにつながる一方で、ゆっくりの中で拍を数え続ける集中力が必要です。長く伸ばす音で拍を数えそこねると、音楽が急に前のめりになったり、止まってしまったりします。
特徴2:左手は「低音→和音」の繰り返し、しかも後半は前半の繰り返し
左手は、1拍目で低い音を鳴らし、2・3拍目で少し高い位置の和音を押さえる、という形がずっと続きます。曲の冒頭はG(ソ)とD(レ)を土台にした2つの和音が交互に現れ、このシーソーのように揺れる響きがジムノペディらしさを生んでいます。毎小節、左手が低音から和音へ跳ぶので、鍵盤を見ずに跳べるかどうかが最初の関門です。
もうひとつ、初心者にとってうれしい特徴があります。曲の後半は、前半とほぼ同じ内容の繰り返しなのです。変わるのは主に最後の数小節だけなので、前半を弾けるようになれば、曲の大部分は手の中に入ったことになります。「3分半の曲」と聞くと長く感じますが、覚える量は見た目の半分と考えてかまいません。
特徴3:「Gymnopédie」という名前の由来
ジムノペディという曲名は、古代ギリシャで若者が踊ったとされる祭典「ギュムノパイディア」のフランス語形に由来します。ピティナの曲事典では、サティは祭典の激しい様子ではなく、壺絵に描かれた静かな姿から着想を得たとされ、だからこそ曲は終始遅く穏やかだと解説されています。古代の儀式のような、ゆったりとした厳かな足取りをイメージしながら弾くと、テンポを急ぎすぎずに済みます。
作曲者エリック・サティと、ジムノペディが広まった経緯
エリック・サティ(1866〜1925)は、パリ音楽院を中退したあと、モンマルトルの酒場でピアノを弾きながら曲を書いた作曲家です。ジムノペディは22歳のときの作品で、当時はほとんど注目されませんでした。この曲を世に広めたのは、友人だったドビュッシーです。1897年に第1番と第3番をオーケストラ用に編曲し、演奏会で取り上げたことで、サティの名前が知られるようになりました。
ピアノで弾くと素朴なのに、オーケストラで聴くと柔らかく広がる。この二面性を知っておくと、ピアノでも「音と音の間の響き」を大切にしたくなるはずです。同じように「ゆっくりで静かな曲ほど難しい」タイプの名曲には、ドビュッシーの月の光もあります。ジムノペディの次の目標として、あわせて読んでみてください。
ジムノペディが難しいと感じるポイント4つと、その対処法

ジムノペディ第1番の難しさは、左手の跳躍・ペダル・テンポの維持・弱音のコントロールの4つに集約されます。どれも速く弾く技術ではないため、初心者がつまずいても、原因がわかれば練習で確実に改善できます。ここでは、楽譜サイトやピアノ講師が紹介している対処法もあわせて整理しました。
1. 左手の跳躍で音が途切れる
左手が低音から和音へ跳ぶとき、手を離すのが早すぎると低音が途切れ、遅すぎると和音が遅れます。基本の考え方は、ダンパーペダル(右のペダル)で低音を残しておくことです。左手だけで、低音→和音→次の低音、の流れを、鍵盤を見ずに跳べるまで繰り返しましょう。
跳躍そのものには、2つのコツがあります。ひとつは座る位置を普段より少し後ろにして、肘が体より前に出るようにすること。腕全体で動けるので、低音と和音の距離が近く感じられます。もうひとつは跳ぶ動きは素早く、鍵盤の上で一度止まってから静かに押すこと。跳んだ勢いのまま弾くと和音が大きくなってしまい、曲の静けさが壊れます。
さらに、右手のメロディが休んでいる場所では、左手の和音の一番上の音を右手の親指に手伝ってもらう方法もあります。冒頭の4小節は右手が休みなので、ここを両手で弾くだけでも、左手の負担がぐっと減ります。
2. ペダルの踏みかえで響きが濁る
ジムノペディはペダルを多用する曲ですが、踏みっぱなしにすると前の和音と次の和音が混ざって響きが濁ります。和音が変わるところで、音を鳴らした直後にペダルを上げてすぐ踏み直す「後踏み(レガートペダル)」を使うのが一般的です。最初は左手だけでペダルの練習をする時間を取ると、両手を合わせたときに混乱しにくくなります。
楽譜にはタイ(同じ音をつなぐ記号)で長く伸ばす音がたくさん出てきます。指だけで押さえ続けられない箇所は、ペダルで響きを残せば十分です。「指で全部つなげなければ」と気負わなくてよいのが、ペダルを使う曲の考え方です。

3. 長い音のあいだにテンポを保つ
右手の旋律には、付点2分音符のように長く伸ばす音がたくさんあります。音が少ないぶん、拍の数え間違いがそのまま演奏の乱れとして目立ちます。メトロノームを遅めに設定し、伸ばしている間も心の中で「1・2・3」と数え続ける練習が効果的です。「ゆっくりと、痛ましく」という指示に感情を込めすぎて、テンポが揺れてしまうのも初心者によくある落とし穴です。ゆっくりした曲ほど、テンポを保つ難しさは大きくなります。
4. 弱い音で旋律を歌わせる
ジムノペディ第1番は、全体を通してピアニッシモからメゾピアノくらいの弱い音で弾く曲です。弱い音は強い音よりコントロールが難しく、鍵盤をそっと押しすぎて音が鳴らない「音抜け」が起こりやすくなります。特に右手の旋律は、左手の和音よりわずかに大きく鳴らして、旋律が和音に埋もれないようにする必要があります。
おすすめの練習は2つです。ひとつは、右手のメロディを歌いながら弾くこと。音名で歌えなければハミングでかまいません。歌うと自然に「どこで息をつぐか」「どこへ向かって膨らむか」が決まり、強弱の付け方で迷わなくなります。もうひとつは、音が鳴るぎりぎりの弱さを探る練習です。鍵盤に指を置いたまま、ゆっくり押し込んで音が出る瞬間を確かめる。最後の2小節の和音は、この練習の成果がいちばん出る場所です。
反対に、クレッシェンドとデクレッシェンドの記号を見るたびに大きく反応すると、曲が躍動的になりすぎて雰囲気が壊れます。強弱は「やりすぎない」「何もしないくらいでちょうどいい」と考えておくと、この曲の静けさが保てます。
ジムノペディはピアノ何年目で弾ける?教本の進度で見る目安

ジムノペディ第1番を弾けるようになる時期は、「ピアノ何年目」という年数より、教本の進度とペダル経験で考えるほうが正確です。ゆっくりした曲なので、速い曲を弾ける段階まで待つ必要はありません。一方で、ペダルをまったく使ったことがない段階では、両手が弾けても仕上がりで苦労します。
教本の進度とジムノペディ第1番の目安表
| 教本の段階 | ジムノペディ第1番の目安 | この段階で身につく技術 |
|---|---|---|
| バイエル前半〜中盤 | 簡単版(左手を単音・近い和音にした版)から | 両手で別の動きをする、拍を数える |
| バイエル後半〜ブルグミュラー前半 | 原曲を片手ずつ・ペダルなしで | 左手の跳躍に慣れる、和音を押さえる |
| ブルグミュラー後半 | 原曲の第1番(全音No.471) | ペダルの踏みかえを身につける |
| ソナチネ以降 | 第1番を表現まで仕上げ、第2番・第3番へ | 音色と弱音のコントロール |
この表は、各教本で身につく技術とジムノペディで求められる技術を照らし合わせた当サイトの目安です。ピアノ講師のブログでも「ブルグミュラー後半程度」とされているように、ブルグミュラー25の練習曲に取り組んでいる段階なら、原曲の第1番は十分に現実的な目標になります。
ブランクが10年あっても弾ける?
結論から言うと、子どもの頃に習っていた方なら、10年以上のブランクがあっても十分に狙える曲です。先ほどのYahoo!知恵袋の質問には、10年ぶりにピアノを再開した方が「再開したとき、この曲は初見で最後まで通せた」と答えていました。もちろん「通せる」と「仕上がる」は別ですが、ゆっくりした曲なので、一度身についた読譜と両手の感覚が残っていれば、入り口の敷居は低い曲だといえます。
楽譜が読めない方には、音符にドレミを書き込む「かな振り」で、まず両手で音を並べられる状態を作る方法が勧められていました。「かな振りは邪道」と思うかもしれませんが、1曲だけ弾きたい大人の方には、途中で挫折するより、ずっと合理的な選択です。
子どもが発表会で弾く場合の目安
ジムノペディ第1番は、子どもの発表会で選ばれることもある曲です。子どもの場合に確認したいのは、ペダルに足が届くかと、左手で低音から和音へ跳ぶ距離を手が覚えられるかの2点です。足が届かない場合は補助ペダルを使う方法もあるので、先生と相談しながら決めるとよいでしょう。
知っておきたいのは、ゆったりした曲は発表会向きではないと考える先生もいることです。速い曲が並ぶプログラムの中で静かな曲は印象に残りやすい反面、「見せ場が少ない」と難色を示されることもあります。その場合は、ハイドンの「アレグロ」やギロックの「雨の日のふんすい」のような軽快な小品と組み合わせて、2曲で演奏する選曲が現実的です。
トルコ行進曲(全音B)より後に弾くべき?
全音のランクでは、ジムノペディ(C)はモーツァルトのトルコ行進曲(B)より一段上です。ただし、トルコ行進曲が指の速さと粒のそろい方を問う曲なのに対し、ジムノペディはペダルと響きのコントロールを問う曲です。速い曲が苦手な大人の方は、ランクの順番にこだわらず、ジムノペディ第1番を先に目標にしてもかまいません。
大人の初心者でもジムノペディは弾ける?挫折しないための考え方

結論から言うと、ジムノペディ第1番は大人の初心者でも弾ける可能性が高い曲です。速く指を動かす必要がなく、楽譜の音の数も多くないため、毎日少しずつでも確実に前へ進めます。挫折しないためのポイントは、最初から「原曲を通して完璧に」と考えないことです。
大人の初心者に向いている3つの理由
- テンポがゆっくり:指の速さより、1音ずつ確かめながら進められる
- 同じ形の繰り返しが多い:左手の「低音→和音」のパターンを覚えれば曲の大部分に応用でき、後半は前半の繰り返し
- 短い:演奏時間は3分半ほど。1日10〜15分の練習でも少しずつ進められる
大人の再開・初心者の方がピアノと長く付き合うための考え方は、大人がピアノを難しいと感じる理由と学び方の記事でも詳しく解説しています。60代以降で始める方はシニアからピアノを始める方向けの記事もあわせてどうぞ。
手が小さい人は和音に注意
大人の方から意外とよく出るのが「手が小さくて和音が届かない」という悩みです。ジムノペディ第1番には、中盤に左手を大きく広げて押さえる和音や、1オクターブを超える箇所があります。手の小さい方は、ここで止まってしまいがちです。
対処法は2つあります。ひとつは、先ほど紹介したように、和音の一番上の音を右手に渡すこと。もうひとつは、届かない音を思い切って省いたり、オクターブ下に置きかえたりすることです。この曲は響きの曲なので、1音減らしてもペダルで響きが補われ、聴いている人にはほとんど気づかれません。「楽譜どおり全部押さえる」より「濁らず静かに鳴る」を優先してください。
電子ピアノでも練習できる?
電子ピアノでも、ジムノペディの練習は十分にできます。ただし、この曲の肝である弱音とペダルの響きは、アコースティックピアノと感触が違います。電子ピアノで練習する場合は、本体の音量を少し上げて、そのうえで小さな音で弾くのがおすすめです。音量を上げておくと、弱く弾いたときの音抜けに気づきやすく、鍵盤のタッチのコントロールが身につきます。ペダルは、本体付属のスイッチ式ではなく、踏み込みの深さが反映されるタイプのペダルがあると、踏みかえの練習がしやすくなります。
独学で行き詰まりやすいのは「ペダル」と「運指」
ジムノペディを独学で練習する場合、最も行き詰まりやすいのがペダルと運指(指番号)です。ペダルは、自分では響きが濁っていることに気づきにくく、録音して初めてわかることも少なくありません。練習の様子をスマホで録音して聴き返すだけでも、改善点が見つかりやすくなります。
運指については、知恵袋の回答者が「この曲のいちばんの課題は指番号を決めること」と述べていたとおり、指番号の書かれていない楽譜で始めると、跳躍と和音のたびに迷います。指番号付きの楽譜を選ぶか、演奏動画で手元を確認しておくと、独学でも迷う時間が減ります。それでも不安な場合は、体験レッスンなどで一度先生に見てもらうのも有効な方法です。
\弾きたい曲を1曲ずつ完成させる/
ジムノペディ第1番の練習ステップと楽譜・簡単版の選び方

ジムノペディ第1番を最後まで弾ききるには、左手とペダルを先に固め、右手の旋律はあとから乗せる順番がおすすめです。また、どの楽譜を使うか、簡単版を使うかどうかも、ここで整理しておきましょう。
5ステップで仕上げる練習の順番
- 左手の跳躍:低音→和音を、鍵盤を見ずに跳べるまで片手で練習。冒頭4小節は右手で和音の上の音を手伝う
- 左手+ペダル:和音が変わるたびにペダルを踏みかえる(後踏み)練習
- 右手の旋律:メトロノームを遅めにして、伸ばす音の拍を数える。歌いながら弾く
- 両手(ペダルなし):まずは音とリズムを合わせることに集中。前半が弾ければ後半はほぼ同じ
- 両手+ペダル:数段ずつ区切って、最後に通し練習。録音して響きの濁りを確認
ペダルを最後の最後に足そうとすると、両手で覚えた動きにペダルが入らず、混乱しがちです。STEP2の段階でペダルを体に入れておくのが、遠回りに見えて近道です。
1日15分でできる練習メニューの例
まとまった時間が取れない大人の方は、1回の練習を短く区切るのがおすすめです。たとえば1日15分なら、最初の5分で左手の跳躍とペダル、次の5分で右手の旋律、最後の5分で両手の数小節という配分にすると、毎日すべての要素に触れられます。1週間ごとに「今週はここまで」と小節数で区切っておくと、進み具合が目に見えて続けやすくなります。後半が前半の繰り返しであることを踏まえると、前半の4段を覚えた時点で、曲の7〜8割は終わっていると考えてよいでしょう。
暗譜するなら「指の記憶」だけに頼らない
発表会や人前で弾くなら、暗譜(楽譜を見ずに弾くこと)が必要になることもあります。ジムノペディで注意したいのは、同じようなフレーズの繰り返しが多いため、「体が勝手に動く」感覚だけで覚えると、途中でどこを弾いているかわからなくなることです。複雑な和音の箇所は「ここはソ・レ・ファ♯」のように音名で覚えておくと、本番で止まったときに戻る手がかりになります。
原曲の楽譜はどれを選ぶ?無料楽譜との違い
ジムノペディは作曲から100年以上たっているため、著作権は切れており、IMSLPなどで1892年出版の楽譜を無料で入手できます。ただし無料楽譜は、指番号やペダル記号がない、楽譜の見た目が読みにくい、といった点で初心者には不便です。
初心者が最初の1冊にするなら、指番号と解説のついた国内版がおすすめです。全音ピアノピースNo.471「3つのジムノペディ」は3曲で600円・12ページと手に取りやすく、高橋アキさんの校訂に秋山邦晴さんの解説が付いています。ヘンレ社やペータース社の海外版は原典に忠実ですが、指番号や解説は少なめで、どちらかといえば中級者以上向けです。
簡単版を選ぶときのチェックポイント
ジムノペディは人気曲なので、「初級編」「やさしいアレンジ版付き」といった簡単版も多く出版・配信されています。同じ「ジムノペディ」でも版によって難易度は大きく異なり、全音のCという評価は原曲(ピアノピースNo.471)に対するものです。簡単版を選ぶときは、次の点を確認しましょう。
- 左手の跳躍が、近い位置の和音や単音に置き換えられているか
- ペダルの指示が書かれているか(書かれていない版は響きが変わる)
- 原曲の調のままか、弾きやすい調に移調されているか
- 指番号が書かれているか(独学なら必須)
原曲の雰囲気を大切にしたい方は、簡単版で全体をつかんだあと、早めに原曲へ移るのがおすすめです。ジムノペディ第1番は原曲でも音が少ないので、簡単版と原曲の距離はそれほど遠くありません。
ジムノペディ第2番・第3番、グノシエンヌとの難易度比較と次に弾きたい曲

ジムノペディを弾けた人が次に迷うのが、「第2番・第3番は難しい?」「グノシエンヌとどっちが簡単?」という問いです。結論から言うと、難易度の順番は、ジムノペディ第1番 → 第3番・第2番 → グノシエンヌと考えておくと、選曲で失敗しにくくなります。
第2番・第3番は第1番と何が違う?
| 曲 | 調 | 冒頭の指示 | 演奏時間 | 第1番との違い |
|---|---|---|---|---|
| 第1番 | ニ長調 | Lent et douloureux(ゆっくりと、痛ましく) | 約3分30秒 | 最も有名。左手のシーソー型伴奏 |
| 第2番 | ハ長調 | Lent et triste(ゆっくりと、悲しく) | 約3分 | 和音の響きがやや複雑で、知名度は低い |
| 第3番 | イ短調 | Lent et grave(ゆっくりと、荘重に) | 約3分 | 最も暗く重い。ドビュッシー編曲版もある |
3曲とも4分の3拍子で、ゆっくりした速度と「低音→和音」の伴奏型は共通しています。全音のランクもまとめてCなので、第1番が弾けたら第2番・第3番へ進むのは自然な流れです。違いは主に響きの色合いにあり、3曲を弾き比べると、同じ素材から違う表情を引き出す練習になります。3曲続けて弾いても10分ほどなので、発表会で「3つのジムノペディ」として通して演奏する選択肢もあります。
ジムノペディとグノシエンヌ、どちらが簡単?
同じサティの「グノシエンヌ第1番」は、ジムノペディと並んでよく検索される曲ですが、初心者には、ジムノペディ第1番のほうが取り組みやすいと考えてください。グノシエンヌも音の数は少なくテンポも遅いのですが、楽譜に小節線と拍子記号がなく、「舌の上で」「思考の先端で」といったサティ独特の指示が書かれています(第3番には「注意深く あなた自身に助言して」という指示まで登場します)。拍の区切りがない中で自分でリズムを決めて弾く必要があり、解釈の面で一段難しくなります。左手の和音の押さえ方に苦労する人が多いのもグノシエンヌの特徴です。
海外のピアノ学習者の掲示板でも、ジムノペディとグノシエンヌの難易度順はたびたび話題になりますが、「まずジムノペディ第1番から」という点では意見がほぼそろっています。グノシエンヌは、ジムノペディでペダルと弱音の感覚をつかんだあとの「2曲目のサティ」として、ちょうどよい位置にある曲です。
ジムノペディの次に挑戦したい曲
ジムノペディで「響きを聴きながら弾く」感覚がつかめたら、同じ全音C(中級)のバダジェフスカ「乙女の祈り」や、全音D(中級上)のシューマン「トロイメライ」が次の目標になります。乙女の祈りは右手のアルペジオ(和音の音を1つずつ順番に弾く弾き方)、トロイメライは内声の歌わせ方と、それぞれ新しい課題が加わります。サティの曲でもう1曲なら、明るく感傷的なワルツ「ジュ・トゥ・ヴ(あなたが欲しい)」がジムノペディより少し動きのある初中級の曲です。ほかにもショパンのノクターンのように、ゆっくり歌う曲は大人のピアノと相性のよいジャンルです。
まとめ|ジムノペディの難易度は「指」より「響き」で決まる
この記事では、サティのジムノペディ第1番の難易度と、何年目で弾けるかの目安、大人の初心者が挫折せずに弾くための練習法を解説しました。
- ジムノペディの難易度:全音ピアノピースNo.471「3つのジムノペディ」で「C(中級)」。サイトによって初級〜中級と評価が割れるのは、「指の技術」と「響きのコントロール」のどちらを物差しにするかが違うため。第1番だけ・大人の学習者なら初級上〜中級の入り口
- 何年目で弾ける?:年数より教本の進度とペダル経験で判断。ブルグミュラー後半の段階なら原曲に十分届く。10年のブランクがあっても、子どもの頃の経験があれば狙える
- 挫折しない練習の順番:左手の跳躍→左手+ペダル→右手→両手→両手+ペダル。後半は前半の繰り返しなので、前半を覚えれば7〜8割は完成。手が小さければ和音は右手に手伝わせる
ジムノペディ第1番は、速く弾けることよりも、1音1音の響きに耳を澄ませることが求められる曲です。ジムノペディの難易度を正しく知ったうえで、ゆっくりと自分のペースで、あの静かな響きを自分の指で鳴らしてみてください。
ピアノの基礎から確認したい方はピアノの基礎練習の記事を、独学で進めたい方は大人のピアノ独学の方法もあわせてご覧ください。
\ジムノペディを「通せる」から「聴かせられる」へ/