ジャズピアノ初心者におすすめの曲10選|最初の1曲の選び方と弾く順番


ジャズピアノを弾いてみたいと思って、初心者向けの曲を探し始めたものの、「枯葉」「いつか王子様が」「Misty」「Take Five」…と候補が多すぎて、どれから手をつければいいのか迷っていませんか?

ジャズピアノの初心者がつまずきやすいのは、実は練習方法よりも最初の1曲の選び方です。憧れのバラードから入ってコードの多さに手が止まったり、テンポの速い曲を選んでリズムが崩れたり、「有名だから」という理由だけで5拍子の曲に挑んで拍を見失ったり。せっかくのやる気が、曲選びのミスで消えてしまうのはもったいないですよね。

  • ジャズピアノの初心者は、どんな基準で曲を選べばいい?
  • 簡単に弾けるジャズの曲は、具体的にどれ?どの順番で弾けばいい?
  • 独学で弾くとき、どんな楽譜やお手本を用意すればいい?

この記事は、クラシックやポップスでピアノに少し触れたことがあり、これからジャズピアノを弾いてみたい大人の初心者に向けて書いています。ジャズの歴史や理論の網羅ではなく、「最初に弾く曲をどう選ぶか」に絞って、おすすめの10曲を難易度の目安つきで紹介します。あわせて、「有名だけど初心者には手ごわい曲」もはっきり名前を挙げてお伝えしますので、読み終えるころには、あなたが最初に弾く1曲と、その次に進む曲まで決まっているはずです。

目次

ジャズピアノ初心者の曲選びは「3つの基準」で決まる

ジャズピアノ初心者の曲選びの3つの基準(コードの数と型・テンポとリズム・メロディを知っている)を示した図
ジャズピアノの初心者が曲を選ぶときは、「コードの数と進行の型」「テンポとリズム」「メロディを知っているか」の3つの基準で考えると失敗しません。ジャズの曲の難しさは、楽譜の音符の多さよりも、この3つで決まるからです。そしてもう1つ、見落とされがちな前提として、「聴いて好きな曲」と「最初に弾く曲」は分けて考える必要があります。

基準1:コードの数が少なく、進行に「型」がある

ジャズピアノでは、楽譜に書かれた音符だけでなく「Cm7」「F7」といったコードネーム(和音の名前)を見て左手を弾くのが基本です。そのため、1曲の中に出てくるコードの種類が少ない曲ほど、初心者には弾きやすくなります。「ジャズの初心者向け曲集を買ってみたものの、1小節に2つも3つもコードが詰まっていて挫折した」という話はよく聞きますが、それは曲が難しいというより、アレンジが凝っている楽譜を選んでしまったケースがほとんどです。

もう1つ大切なのが、コードの並び方に「型」があるかどうかです。ジャズには「ブルース(12小節で1周する決まった進行)」や「ツーファイブワン(ii-V-I:ジャズで最もよく出てくる3つのコードの流れ)」といった定番の型があります。型のある曲で練習すると、次の曲でも同じ型が出てきたときに「これ知ってる」と思えるので、1曲の練習が次の曲の貯金になるのです。コードの基礎があいまいな方は、先にピアノコード一覧表と覚え方で基本の形を確認しておくと安心です。

基準2:テンポがゆっくり〜中くらいで、リズムが単純

ジャズらしさの中心にあるのが「スウィング」という跳ねるリズムです。速いテンポのスウィングは、プロでも気を抜くと崩れるほど難しいもの。初心者のうちは、ゆっくり〜中くらいのテンポで弾ける曲か、ボサノバのように拍がはっきりした曲を選ぶと、リズムに振り回されずに済みます。

一方で、「ゆっくり=簡単」とは限らない点にも注意してください。ジャズのバラード(スローテンポの曲)は、1小節ごとにコードが変わったり、和音の響きが複雑だったりすることが多く、見た目以上に手ごわいジャンルです。また、「Take Five」のように5拍子で進む曲や、「A列車で行こう」のように速いスウィングの曲は、有名であっても最初の1曲には向きません。

基準3:メロディを知っている・口ずさめる

3つ目の基準は、その曲のメロディを歌えるかどうかです。ジャズでは楽譜どおりのリズムでメロディを弾くことは少なく、少し遅らせたり、跳ねさせたりして「崩して」弾きます。メロディが頭に入っていない曲だと、崩した結果が正しいのかどうか、自分で判断できません。

何度も聴いて口ずさめるようになった曲なら、多少リズムを崩しても「元の形」に戻ってこられます。CMやアニメ、映画などで耳にしたことがある曲は、それだけで大きなアドバンテージになります。逆に言えば、「C Jam Blues」のように弾くのはとても簡単なのに、ジャズを聴き始める前の人にはほとんど知られていない曲もあります。簡単さと有名さは別の軸なので、次の見出しで両方を1枚の図にまとめました。

「聴いて好きな曲」と「最初に弾く曲」は分けて考える

ジャズピアノに興味を持ったきっかけが、ビル・エヴァンスの「Waltz for Debby」やデイヴ・ブルーベックの「Take Five」だった方も多いのではないでしょうか。憧れのピアニストを探すなら、有名ジャズピアニスト一覧20人で時代別に紹介しています。名盤を聴くことと、最初の1曲を選ぶことは、別々の作業として切り分けるのがおすすめです。「Waltz for Debby」は音数だけ見れば弾けそうに思えますが、エヴァンス特有の和音の響きとワルツの揺れを再現するのは、初心者にはかなり難しい部類に入ります。

おすすめなのは、「聴く曲リスト」と「弾く曲リスト」を分けて持つことです。聴く曲は好きなだけ名盤から選び、弾く曲はこの記事の3つの基準で選ぶ。こうすると、憧れの曲に手が届かないことで落ち込まずに済み、憧れはモチベーションとして残し続けられます。名盤選びにはジャズピアノの名曲・有名な曲15選をどうぞ。

ソラ
ゆっくりのバラードのほうが簡単そうだと思ってた…。テンポだけじゃ決まらないんだね。
カイ
そうなんだ。バラードは「1音ずつの響き」をごまかせないからね。最初はコードが少なくて、型がはっきりした曲から始めるのが近道だよ。

【早見図】有名さ×難易度で見る、ジャズピアノ初心者の曲マップ

ジャズピアノ初心者向けの曲を知名度と難易度の2軸で4つのエリアに分けたマトリックス図
ジャズピアノの初心者向けの曲を、縦軸「難易度」×横軸「一般的な知名度」の4つのエリアに分けて並べたのが上の図です。難易度はこの記事独自の目安で、「コードの種類の少なさ」「テンポの弾きやすさ」「進行の型のわかりやすさ」から判断しています。

4つのエリアの読み方は次のとおりです。

  • 右下(有名で簡単):Fly Me to the Moon、枯葉、Summertime、いつか王子様が。最初の1曲の本命ゾーンです。知っているメロディを、少ないコードで弾けます。
  • 左下(簡単だが知名度が低い):C Jam Blues、Bags’ Groove、Blue Monk、Blue Bossa、Satin Doll。ジャズの「型」を覚えるのに最適で、準備運動ゾーンです。知らない曲なら、まず何度か聴いて口ずさめるようにしてから取り組みましょう。
  • 右上(有名だが手ごわい):Take Five、A列車で行こう、Waltz for Debby、My Favorite Things、Misty。憧れの曲が集まるゾーンですが、2〜3曲仕上げたあとの目標にするのがおすすめです。
  • 左上(知名度も難易度も高い):Stella by Starlight、All the Things You Areなど。セッションの定番ですが、コードが多く転調も複雑なので、この記事では扱いません。

ジャズピアノの初心者におすすめなのは、右下の「有名で簡単」ゾーンから1曲、または左下の「準備運動」ゾーンでブルースを1曲弾いてから右下に進む、という順番です。次の一覧表では、この図から10曲を選び、弾く順番に並べています。

【一覧表】ジャズピアノ初心者におすすめの曲10選と難易度の目安

ジャズピアノ初心者におすすめの曲10選をステップ1〜3の弾く順番に並べた図
ジャズピアノ初心者におすすめの曲を、先ほどの3つの基準をもとに10曲選びました。難易度の★は、出版社などの公式ランクではなく、「コードの種類の少なさ」「テンポの弾きやすさ」「進行の型のわかりやすさ」から付けたこの記事独自の目安です。上から順に弾いていくと、ジャズの基本の型を無理なく積み上げられます。

曲名 作曲者 型・スタイル 難易度の目安 知名度 おすすめの理由
C Jam Blues デューク・エリントン 12小節ブルース ★ 低 メロディがほぼ2つの音だけ
Bags’ Groove ミルト・ジャクソン Fのブルース ★ 低 セッションでも定番のFブルース
Cantaloupe Island ハービー・ハンコック ジャズ・ファンク ★ 中 同じコードが長く続き、左手のリフが中心
Blue Bossa ケニー・ドーハム ボサノバ(マイナー) ★★ 低 拍がはっきりしてリズムが取りやすい
枯葉(Autumn Leaves) ジョゼフ・コズマ ii-V-Iの連続 ★★ 高 ジャズの基本進行がまとめて学べる
Fly Me to the Moon バート・ハワード スタンダード ★★ 高 メロディを知っている人が多い
Summertime ジョージ・ガーシュウィン マイナーのスタンダード ★★ 高 ゆったりしたテンポで弾ける
Satin Doll デューク・エリントン/ビリー・ストレイホーン ii-Vが続くスウィング ★★ 中 ii-Vの「移動」に慣れられる
いつか王子様が(Someday My Prince Will Come) フランク・チャーチル ジャズワルツ(3拍子) ★★〜★★★ 高 3拍子のジャズを体験できる
Misty エロール・ガーナー バラード ★★★ 高 コードが多く響きが繊細。目標の1曲に

表の★1の3曲は、どれもコードの種類が少なく、同じパターンを繰り返す曲です。ジャズピアノの左手と右手の役割分担に慣れる「準備運動」として、まずはこのグループから1曲選んでみてください。「知らない曲から始めるのは気が進まない」という方は、★2の枯葉かFly Me to the Moonから入っても大丈夫です。曲の背景やジャズの時代の流れを知りたい方は、入門ジャズの歴史と有名なアーティストもあわせて読むと、曲への愛着がぐっと増します。

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ステップ1:ブルースで弾く|ジャズピアノの簡単な曲3選

Cの12小節ブルースのコード進行(C7・F7・G7)を4小節×3段で示した図
ジャズピアノの簡単な曲を探しているなら、最初の1曲はブルースがおすすめです。ブルースとは、12小節で1周するコード進行を繰り返す曲の形式で、使うコードの種類が少なく、1周覚えればあとは同じことの繰り返しになります。上の図のように、Cのブルースなら使うコードはC7・F7・G7の3種類だけ。ジャズのセッションでも頻繁に演奏されるので、覚えておいて損はありません。

C Jam Blues|メロディがほぼ「2つの音」だけ

C Jam Bluesは、デューク・エリントンの名前で知られる12小節のブルースで、1942年の短編映画『Jam Session』でも演奏されています。この曲の最大の特徴は、テーマのメロディがほぼGとCの2つの音だけでできていることです。右手のメロディで迷うことがほとんどないので、左手のコードとスウィングのリズムに集中できます。「ジャズ史上もっとも簡単なテーマ」と呼ぶピアノ講師もいるほどで、楽譜を見なくても、鍵盤の位置を2つ覚えれば今日から弾き始められます。

メロディが単純なぶん、「同じ2音をどんなリズムで弾くか」でジャズらしさが大きく変わる曲でもあります。オスカー・ピーターソンのアルバム『Night Train』や、レッド・ガーランドの『Groovy』などのお手本を聴き、短い音・長い音・休符の置き方をまねしてみてください。音が少ない曲だからこそ、リズムの感覚がいちばん鍛えられるのがC Jam Bluesの良さです。弱点は「ジャズを聴き始める前の人にはほぼ知られていない」こと。家族に披露しても反応が薄いかもしれませんが、その分、次の曲への「型の貯金」は確実に残ります。

▶ 聴いてみる|オスカー・ピーターソン・トリオ「C Jam Blues」(『Night Train』)

Bags’ Groove|セッション定番の「Fのブルース」

Bags’ Grooveは、ヴィブラフォン奏者のミルト・ジャクソンが作曲したFのブルースです。マイルス・デイヴィスの1954年の演奏(アルバム『Bags’ Groove』)でも知られ、ジャズのセッションで「Fブルース」と言えば候補に挙がる定番曲の1つです。

C Jam Bluesで12小節の流れに慣れたら、同じブルースの型でキー(調)だけを変えた曲に挑戦すると、型が頭に定着します。ジャズの現場ではFやB♭のブルースが多く使われるので、Fのブルースを1曲持っておくと、将来セッションに参加するときにも役立ちます。同じ12小節ブルースの仲間として、セロニアス・モンクの「Blue Monk」(1954年)も候補に入ります。モンクらしい半音で上がっていくメロディが少し癖になりますが、コードは基本のブルースそのものです。

▶ 聴いてみる|マイルス・デイヴィス「Bags’ Groove(Take 1)」

Cantaloupe Island|左手のリフが主役のジャズ・ファンク

Cantaloupe Islandは、ハービー・ハンコックが1964年のアルバム『Empyrean Isles』で発表した曲です。のちにUS3が1993年に「Cantaloop (Flip Fantasia)」でサンプリングしたことでも知られ、ジャズに詳しくない人でも聴き覚えがあるかもしれません。

この曲は同じコードが何小節も続き、左手(ピアノのリフ)の繰り返しが曲の土台になっています。スウィングではなく、まっすぐな8ビート寄りのノリなので、ポップスやロックを弾いてきた人には特に入りやすい1曲です。厳密なブルースではありませんが、「少ないコードで長く遊ぶ」という意味で、ブルースと同じステップに入れました。

 

▶ 聴いてみる|ハービー・ハンコック「Cantaloupe Island」(『Empyrean Isles』)

ステップ2:ii-V-Iを覚える|初心者におすすめの定番スタンダード

ツーファイブワン(Dm7→G7→CM7)のコードの流れと、左手ルート・右手2音の押さえ方を示した図
ブルースに慣れたら、次はii-V-I(ツーファイブワン)を覚えられるジャズの定番スタンダードに進みましょう。ii-V-Iとは、たとえばハ長調ならDm7→G7→CM7のように、「不安定な響きから落ち着く響きへ」向かうコードの流れのことです。ジャズのスタンダードの多くはこの流れの組み合わせでできているので、ここで覚えた型はこの先どの曲にも使えます。

上の図のとおり、左手はルート(コードの土台の音)を1音ずつ、右手はコードの性格を決める2音(3度と7度)だけを押さえれば、ii-V-Iの響きは十分に伝わります。4つの音をすべて押さえなくても、まずはこの「3音バージョン」で流れを体に入れてください。

枯葉(Autumn Leaves)|ii-V-Iの教科書のような1曲

枯葉は、1945年にジョゼフ・コズマが作曲した曲で、もとはフランスのシャンソン「Les Feuilles mortes」として知られました。のちに英語の歌詞がつき、ジャズのスタンダードの代表格になっています。キャノンボール・アダレイの『Somethin’ Else』や、ビル・エヴァンスの『Portrait in Jazz』に収録された演奏は、ジャズファンなら一度は耳にする名演です。「ジャズピアノを弾くなら避けては通れない曲」と言われるほどで、ほとんどのジャズピアニストが暗譜しています。

枯葉が初心者におすすめされる理由は、長調のii-V-Iと短調のii-V-Iが、曲の中に何度も順番に出てくるからです。1曲弾けるようになると、ジャズで最もよく使う進行を両方とも体で覚えられます。難しい曲ではないぶん、弾く人の個性がそのまま出る曲でもあるので、お手本を2〜3人分聴き比べてから、自分の好きな崩し方を選ぶのがおすすめです。左手の押さえ方や練習のステップは、枯葉だけを詳しく扱った記事で解説する予定です。

▶ 聴いてみる|ビル・エヴァンス・トリオ「Autumn Leaves」(『Portrait in Jazz』)

Fly Me to the Moon|「知っている曲」から入りたい人に

Fly Me to the Moonは、バート・ハワードが1954年に「In Other Words」というタイトルで書いた曲です。1964年のフランク・シナトラとカウント・ベイシー楽団の録音で広く知られ、日本ではアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のエンディングで使われたカバーで覚えている方も多いのではないでしょうか。

この曲は、コードがii-V-Iを含む流れで次々と移っていく一方、メロディを知っている人が多いのが強みです。先ほどの基準3「メロディを口ずさめる」を満たしやすいので、ジャズらしくメロディを崩す練習にぴったりです。セブンスコード(4つの音でできた和音)のおしゃれな響きが曲全体に続くので、「ジャズっぽい音が鳴った!」という手ごたえもいちばん早く得られます。原曲のキーのままでも、弾きやすいキーに移調された初心者向けアレンジでもかまいません。

▶ 聴いてみる|フランク・シナトラ&カウント・ベイシー楽団「Fly Me to the Moon」

Summertime・Satin Doll|短調とii-Vの移動に慣れる

Summertimeは、ジョージ・ガーシュウィンが1935年のオペラ『ポーギーとベス』のために書いた子守歌です。短調でゆったりしたテンポなので、焦らずにコードの響きを確かめながら弾けます。マイナーの暗く美しい響きは、明るい曲とは違うジャズの表情を教えてくれるでしょう。歌ものとしても有名で、ビリー・ホリデイやエラ・フィッツジェラルドの歌で覚えている方も多いはずです。

Satin Dollは、デューク・エリントンとビリー・ストレイホーンによる1953年の曲です。曲の冒頭からii-Vが少しずつ場所を変えながら続いていくのが特徴で、枯葉で覚えたii-V-Iを「どのキーでも弾ける形」に広げる練習になります。エリントン楽団が活躍したスウィングの時代の空気を知りたい方は、スウィング・ジャズの特徴と歴史も参考になります。

▶ 聴いてみる|エラ・フィッツジェラルド&ルイ・アームストロング「Summertime」

▶ 聴いてみる|デューク・エリントン「Satin Doll」

ステップ3:雰囲気で選ぶ|ボサノバ・ワルツ・バラードの曲

ボサノバ・ジャズワルツ・バラードの1小節のリズムと拍の違いを並べた図
ブルースとii-V-Iの定番に慣れたら、ボサノバ・ジャズワルツ・バラードといった雰囲気の違う曲に広げてみましょう。ジャズピアノの「好きな音」がはっきりしてくるのはこの段階です。ここでは難易度だけでなく、「どんな気分で弾きたいか」で選んでかまいません。上の図は、3つのスタイルのリズムの違いを1小節ずつ並べたものです。

Blue Bossa|スウィングが苦手な人の救世主

Blue Bossaは、トランペット奏者のケニー・ドーハムが作曲し、ジョー・ヘンダーソンの1963年のアルバム『Page One』で初めて録音された曲です。ボサノバのリズムで演奏されることが多く、拍がはっきりしているので、スウィングの跳ねるリズムがまだ苦手な人でも弾きやすいのが特徴です。

短調(Cマイナー)の曲で、途中で一時的にD♭メジャーへ転調する部分がありますが、そこもii-V-Iの型でできています。ステップ2で覚えた進行を「別のリズムの曲」で使う練習として最適です。ボサノバの曲としては「イパネマの娘」(アントニオ・カルロス・ジョビン作曲、1964年のゲッツ/ジルベルト盤がグラミー賞を受賞)も有名ですが、サビで転調を繰り返すため、Blue Bossaのほうが先に弾きやすいでしょう。ラテンのリズムとジャズの関係が気になる方は、ラテンジャズの起源と名曲も読んでみてください。

ボサノバの名盤をまとめて聴きたい方は、ボサノバの名盤おすすめ10選で定番曲とあわせて紹介しています。

▶ 聴いてみる|ジョー・ヘンダーソン「Blue Bossa」(『Page One』)

いつか王子様が|3拍子のジャズワルツを体験

いつか王子様が(Someday My Prince Will Come)は、フランク・チャーチルが1937年のディズニー映画『白雪姫』のために作曲した曲です。マイルス・デイヴィスが1961年に同名のアルバムで取り上げ、ビル・エヴァンスも好んで演奏したことで、ジャズの定番になりました。

ジャズというと4拍子のイメージが強いかもしれませんが、この曲は3拍子のジャズワルツです。ディズニー映画で親しまれたメロディなので口ずさみやすい反面、3拍子でスウィングさせる感覚には少し慣れが必要なため、★★〜★★★としました。「1・2・3」の1拍目だけを少し重く、2・3拍目を軽く弾くと、ワルツらしい揺れが出てきます。

エヴァンスの演奏を聴き比べたい方は、ビル・エヴァンスの名盤おすすめ10選も参考にしてください。

▶ 聴いてみる|ビル・エヴァンス・トリオ「Some Day My Prince Will Come」(『Portrait in Jazz』)

Misty|「いつか弾きたい」目標の1曲に

Mistyは、ピアニストのエロール・ガーナーが1954年に作曲したバラードです。甘く美しいメロディで、「ジャズピアノを始めたらいつか弾きたい」と憧れる方も多い1曲ではないでしょうか。

ただしMistyは、1小節の中でコードが2つ変わる箇所が多く、響きも繊細なため、この記事では★★★としています。最初の1曲にするより、ブルースと定番スタンダードを数曲弾いたあとに「目標の1曲」として取っておくのがおすすめです。同じ理由で、テンポの速いTake the A Trainのようなスウィングの名曲も、少し後回しにしたほうが挫折しにくいでしょう。

▶ 聴いてみる|エロール・ガーナー「Misty」

10選に入れなかった「有名だけど初心者には手ごわい曲」と次の候補

有名だが初心者には手ごわいジャズの曲と、10曲のあとに弾く次の候補曲を左右に並べた図
ジャズピアノ初心者向けの記事で名前がよく挙がるのに、この記事の10選に入れなかった曲があります。「有名だから簡単だろう」と思って選ぶと遠回りになりやすい曲なので、理由をはっきり書いておきます。あわせて、10曲を弾き終えたあとの「次の候補」も紹介します。

有名だけど最初の1曲には向かない曲

曲名 作曲者 手ごわい理由 取り組む目安
Take Five ポール・デスモンド 5拍子。4拍子で拍を見失わなくなってからでないと数えられない 10選を3曲以上仕上げたあと
A列車で行こう(Take the “A” Train) ビリー・ストレイホーン テンポの速いスウィング。イントロは有名だが、原曲のテンポで両手を合わせるのが難しい スウィングに慣れたあと
Waltz for Debby ビル・エヴァンス 音数は多くないが、エヴァンス特有の和音の響きとワルツの揺れを再現するのが難しい 「聴く曲」として楽しみつつ、中級の目標に
My Favorite Things リチャード・ロジャース CMで有名だが、ジャズ版(コルトレーン)は長いモード演奏。ジャズらしく弾くなら中級向け 脱初心者のころ
Stella by Starlight ヴィクター・ヤング コードが多く、転調が複雑。セッション定番だが初心者には進行が追えない 中級以降

特に多いのが、「Take Five」を最初の1曲に選んでしまうケースです。メロディはシンプルで聴きやすいのですが、5拍子を「1・2・3・1・2」と数えながら両手を保つのは、4拍子のスウィングに慣れる前に取り組むと混乱のもとになります。聴く曲としては最高の入門曲なので、まずはたくさん聴いて、弾くのは少し先に取っておきましょう。

10曲を弾いたあとの「次の候補」

10選の曲でブルース・ii-V-I・ボサノバ・ワルツの型が身についたら、次は以下の曲に広げてみてください。どれも型の応用で弾けるので、2曲目以降の伸びを実感しやすい曲です。

  • Blue Monk(セロニアス・モンク):12小節ブルースの仲間。半音で上がるメロディでモンクらしさを味わえる。
  • All Blues(マイルス・デイヴィス):『Kind of Blue』収録。6拍子のブルースで、コードがゆっくりしか変わらないので響きに集中できる。
  • St. Thomas(ソニー・ロリンズ):カリプソのリズムで、拍がはっきりしている。明るい曲を弾きたい人に。
  • 茶色の小瓶(Little Brown Jug):もとは19世紀のアメリカの歌で、グレン・ミラー楽団のスウィングアレンジ(1939年)で定番になった。メロディが単純で、コードも少ない。
  • It Don’t Mean a Thing(デューク・エリントン):「スウィングしなけりゃ意味がない」の邦題で有名。テーマのメロディは3〜4つの鍵盤で弾けるが、左手のスウィングは本格的。
  • All of Me:歌もので有名。コードの流れは枯葉より多いが、どれも定番の型でできている。

ジャズピアノ初心者が曲を増やすときのコツは、「同じ型の曲」を続けて弾くことです。ブルースを3曲、ii-V-Iの曲を3曲と固めて進むと、1曲ごとの練習時間がどんどん短くなっていくのを実感できます。

ジャズピアノの簡単な曲を独学で弾くときの楽譜とお手本の選び方

音符がすべて書かれたピアノ譜と、メロディとコードネームだけのリードシートを並べて比較した図
ジャズピアノの曲を独学で弾くときは、曲そのものと同じくらい「どの楽譜で弾くか」「誰の演奏をお手本にするか」が大切です。同じ枯葉でも、楽譜の種類によって難しさがまったく変わります。

「ピアノ譜」と「リードシート」の違い

ジャズの楽譜には、大きく分けて2つの種類があります。上の図のように、ピアノ譜は右手も左手もすべて音符で書かれているのに対し、リードシートはメロディの1段とコードネームだけです。

楽譜の種類 書かれている内容 メリット 向いている段階
ピアノ譜(初心者向けアレンジ) 右手・左手の音がすべて音符で書かれている クラシックと同じように読める 最初の1〜2曲
リードシート メロディとコードネームだけ 自分でアレンジでき、ジャズらしい練習になる コードの押さえ方に慣れてから

クラシックから来た方は、最初の1〜2曲は初心者向けアレンジのピアノ譜で弾き、ジャズの響きに耳を慣らすのがおすすめです。慣れてきたら、同じ曲をリードシートで弾き直し、左手のコードを自分で考えてみましょう。「同じ曲を2種類の楽譜で弾く」ことで、楽譜に頼る弾き方から、コードを見て弾く方法へ自然に移行できます。

楽譜を買うときの注意点は、「初級編」と書いてあっても、1小節あたりのコード数が多いアレンジは避けることです。店頭やサンプルページで、枯葉やFly Me to the Moonのページを開き、1小節にコードが1〜2個で収まっている楽譜を選んでください。

お手本の演奏は「ピアニスト」と「歌もの」の両方を聴く

お手本の音源は、ピアニストの演奏だけでなく、歌手が歌っているバージョンも聴くのがおすすめです。ジャズのピアニストはテーマのメロディを大胆に崩して弾くことが多いため、初心者が聴くと元のメロディがわからなくなりがちです。歌ものは歌詞があるぶんメロディの形がはっきりしているので、まず歌で曲を覚え、次にピアニストの崩し方を聴く、という順番にすると理解が早まります。

たとえばFly Me to the Moonならフランク・シナトラの歌→ピアノトリオの演奏、Summertimeならエラ・フィッツジェラルドの歌→ピアノの演奏、という順番です。英語の歌詞を口ずさんでみると、ジャズ特有の「拍の裏にアクセントが来るリズム」も自然に体に入ります。

初心者がやりがちな曲選びの失敗

  • 好きなピアニストの完コピ譜から始める:名演の採譜は音数が多く、テンポも速いものがほとんどです。
  • バラードなら簡単だと思って選ぶ:前述のとおり、バラードはコードが多く響きが繊細です。
  • 有名だからという理由だけで選ぶ:Take FiveやA列車で行こうは、有名でも最初の1曲には向きません。
  • 一度に何曲も並行して練習する:型が身につく前に気が散ってしまいます。最初は1曲ずつ仕上げましょう。

大人の初心者がジャズの1曲目を仕上げるまでの進め方

聴く・メロディ・左手・両手の4ステップでジャズの1曲目を仕上げる流れを示した図
弾く曲が決まったら、あとはその1曲を最後まで仕上げることに集中しましょう。ジャズピアノの初心者が1曲目を仕上げるときは、「聴く→メロディ→左手→両手」の4段階で進めると、途中で迷子になりません。

段階 やること できたかの目安
1. 聴く お手本の音源を繰り返し聴く(歌もの→ピアノの順) メロディを口ずさめる
2. メロディ 右手だけでテーマを弾く 止まらずに1コーラス弾ける
3. 左手 コードを1小節に1回、全音符で押さえる コードネームを見て押さえられる
4. 両手 ゆっくりのテンポで合わせる 録音して聴き、リズムが崩れていない

特に3の左手は、最初から凝ったリズムで弾こうとせず、1小節に1回、コードを置くだけで十分です。両手で弾けるようになってから、左手のリズムを少しずつジャズらしく変えていきましょう。

1日20分でも進む練習メニューの例

仕事や家事のあとに毎日1時間は取れない、という方も多いのではないでしょうか。ジャズピアノの1曲目なら、1日20分でも次の配分で続ければ着実に進みます。大事なのは分数より、「今日はどの段階を練習するか」を1つに絞ることです。

時間 内容 ポイント
3分 お手本を聴く 今日練習する部分だけを繰り返し聴く
5分 右手のメロディ ゆっくり、止まらずに通す
5分 左手のコード コードネームを声に出しながら押さえる
5分 両手で合わせる 8小節だけでもいいので、メトロノームと合わせる
2分 録音して聴く 「止まった場所」を1か所メモして翌日の課題に

録音は、独学の「代わりの先生」になります。弾いている最中は気づかないリズムのずれや、左手の音の大きさは、録音を聴くといちばん先にわかります。

1曲目は「完璧」より「最後まで」を優先する

ジャズピアノの1曲目で目指したいのは、プロのような演奏ではなく、テーマを1コーラス、止まらずに最後まで弾き切ることです。最後まで弾ければ、ジャズの曲がどんな形でできているのかが体でわかります。その経験が、2曲目、3曲目を選ぶときの判断材料になります。

独学でつまずきやすいのは、リズムの崩し方やコードの押さえ方が「これで合っているのか」わからない点です。自分の演奏を録音して聴き返すのに加えて、ときどきプロに聴いてもらうと、遠回りせずに済みます。オトノミチシルベはオンラインで受けられるピアノレッスンで、公式サイトでは体験レッスンが1コース2,500円、入会金は無料と案内されています(2026年10月時点)。詳しくはオトノミチシルベの評判・口コミの記事で紹介しています。

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ジャズピアノ初心者の曲選びでよくある質問

ジャズピアノの初心者から曲選びについてよく聞かれる質問に、結論から短く答えます。

楽譜が読めなくてもジャズピアノの曲は弾けますか?

C Jam Bluesのようにメロディが2〜3音の曲なら、楽譜が読めなくても鍵盤の位置を覚えるだけで弾き始められます。ただし、コードネーム(C7、Dm7など)の読み方は早めに覚えておくと、楽譜や動画の情報を使えるようになり、上達が一気に速くなります。

クラシック経験者がジャズピアノで最初に弾く曲は?

クラシック経験者には、枯葉かFly Me to the Moonの初心者向けピアノ譜がおすすめです。譜読みの力が活きるので音を出すまでは早く、そのあと「書かれていない左手をコードから自分で作る」というジャズ特有の練習に移れます。

ジャズピアノの1曲目はどのくらいで弾けるようになりますか?

ピアノ経験と練習時間によって差が大きいため一概には言えませんが、C Jam Bluesやブルースであれば、1日20分の練習でテーマを両手で1周弾くところまでは数週間が目安です。枯葉のような8小節×4の曲は、もう少し時間がかかると考えてください。日数より「止まらずに1コーラス弾けたか」で区切るのがおすすめです。

ジャズピアノの初心者は、簡単な曲と有名な曲のどちらから始めるべき?

挫折しないことを優先するなら「簡単な曲(C Jam Bluesなどのブルース)」、モチベーションを優先するなら「有名な曲(枯葉・Fly Me to the Moon)」です。迷ったら、ブルースを1曲だけ短期間で仕上げてから有名な曲へ進むと、型が身についているぶん2曲目が楽になります。

ジャズの楽譜は「初級編」と書いてあれば初心者向けですか?

必ずしもそうとは限りません。「初級」でも1小節に2〜3個のコードが入るアレンジは、初心者には負担が大きいです。購入前にサンプルページで、1小節にコードが1〜2個で収まっているかを確認してください。

まとめ|ジャズピアノ初心者の曲は「型のある1曲」から選ぼう

この記事では、ジャズピアノの初心者が最初に弾く曲の選び方と、おすすめの10曲、そして「有名だけど手ごわい曲」を紹介しました。冒頭の3つの疑問への答えをまとめます。

  • 曲選びの基準:「コードの数が少なく型がある」「テンポがゆっくり〜中くらい」「メロディを口ずさめる」の3つで選ぶ。「聴く曲」と「弾く曲」は分けて考える。
  • おすすめの曲と順番:C Jam Blues・Bags’ Groove・Cantaloupe Islandなどのブルース系から始め、枯葉・Fly Me to the Moonなどのii-V-I定番へ、そのあとBlue Bossa・いつか王子様が・Mistyへ広げる。Take Five・A列車で行こう・Waltz for Debbyは2〜3曲仕上げたあとの目標に。
  • 楽譜とお手本:最初は初心者向けアレンジのピアノ譜、慣れたらリードシート。お手本は歌もので曲を覚えてからピアニストの演奏を聴く。

ジャズピアノは、1曲弾けるようになるたびに「型」が増え、次の曲がどんどん楽になっていく音楽です。この記事で紹介したジャズピアノ初心者向けの曲から、まずは気になる1曲を選び、最後まで弾き切る体験をしてみてください。

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