40代・50代からピアノを始める|仕事と両立できる練習時間と1年で弾ける曲

50代からピアノを始めるのは、まったく遅くありません。平日20分と休日1時間の練習を続ければ、半年で両手の短い曲が弾けるようになり、練習量しだいで1〜3年後には「エリーゼのために」のような憧れの曲が視野に入ってきます。ただし、それは「順調に続いた場合」の話です。実際に差がつくのは才能ではなく、忙しい毎日の中で練習を途切れさせない設計です。

子どもの手が離れ、ふと「今から始めてもいいのかな」と思った方も多いのではないでしょうか。一方で、仕事があり、家事があり、親のことも気になる。60代、70代のように時間がたっぷりあるわけではないのが、40代・50代の現実です。

  • 40代・50代の初心者でも、本当に弾けるようになる?
  • 仕事と両立しながら、1日どれくらい練習すればいい?
  • 「エリーゼのために」は何年で弾ける? 教室と独学のどちらがいい?

この記事は、ピアノ未経験、または経験がほとんどない40代・50代の方に向けて書いています。公的な団体のアンケート、音楽教室の解説、同じ年代で始めた方の相談を読み比べ、情報どうしが食い違う部分は編集部がその理由まで整理しました。子どもの頃に習っていた方は大人のピアノ再開ガイド、60代以降の方は70代からのピアノもあわせてご覧ください。

※本記事は一部PRを含みます

目次

50代からピアノを始めるのは遅い?結論は「遅くないが、設計が要る」

50代からピアノを始めるのが遅くない理由は、同じように始めている大人が実際にたくさんいるからです。全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)が公開した2024年度のピアノ教室紹介の利用データによると、30歳以上の申込みは900人を超え、30代・40代・50代がほぼ同じ人数でした(有効回答908名)。最高齢は83歳です。

さらに、「初めてピアノを習う」方と「ブランクがあって再開する」方がほぼ同じ割合でした(有効回答867名。先生の変更などが23%)。大人の申込みのおよそ3人に1人は、あなたと同じ初心者ということになります。

40代・50代と60代以降の違いは時間の質

40代・50代の最大の特徴は、まとまった時間より、細切れの時間で続けることになる点です。定年後の世代とは、次のように条件が違います。

比べるポイント 40代・50代 60代以降
使える時間 平日は短く、休日に偏る 平日も確保しやすい
強み 体力と目が比較的保たれている 毎日の習慣を作りやすい
壁 仕事の繁忙期、家庭の予定 老眼、指の可動域、体力
合う通い方 振替しやすい教室、オンライン 平日昼の通学

編集部としては、40代・50代は「時間がないから無理」ではなく、時間が取れない週を前提に計画するのが正解だと考えています。

大人が子どもに勝てること・勝てないこと

大人の初心者は、指の動きの速さと暗譜(あんぷ。楽譜を見ずに弾けるよう覚えること)では子どもにかないません。ここは正直にお伝えしておきます。Yahoo!知恵袋には、50代後半で習い始めて3年たつ方が、自分の腕前は小学校低学年の子と変わらないくらいだと率直に書いている回答があります。25年ぶりに40代で再開した方も、高校生の頃より1曲を仕上げるのに時間がかかり、暗譜もなかなかできないと答えていました。

その代わり、大人には曲の仕組みを理解して練習できる力があります。「なぜこの指使いなのか」「この和音はどういう並びなのか」を頭で理解し、自分で練習の順番を組み立てられるのは、感覚で覚える子どもにはない強みです。草加市のピアノ教室の解説でも、子どもの頃に始めた人と同じ上達の線を描こうとしないことが大切だと書かれています。

項目 子ども 40代・50代の大人
指の速さ・柔らかさ 有利 不利。ゆっくりの練習で補う
暗譜 自然に覚える 時間がかかる。曲の構造で覚える
理解力 感覚で覚える 有利。理屈で整理できる
練習の組み立て 先生や親が決める 有利。自分で弱点を選べる
弾きたい曲 まだ少ない 有利。聴いてきた音楽の蓄積がある

踏み出せない人が先に決めるのは「弾きたい1曲」

「上達しないまま挫折するくらいなら、習い事のお金は家族のために使ったほうがいいのでは」。知恵袋には、40代で踏み出せずにいる方のこんな相談がありました。回答で繰り返し出てきたのは、年齢の話ではなく目標の話です。

先ほどの50代後半で始めた方は、子どもたちに追い越されても続けられる理由として、弾きたい曲があること、いつか人前で弾き語りをしたいことを挙げていました。別の回答では、教員や保育士を目指してピアノを始める学生がそれなりに弾けるようになるのは、はっきりした目的があるからだ、という指摘もあります。

編集部の考えも同じです。50代からピアノを始めるなら、教本や楽器を選ぶ前に、「この曲が弾けたら満足」という1曲を決めてください。目標が決まると、必要な期間も、通う教室も、買う楽譜も自然に決まります。

ソラ
50代で始めて、周りの人に「今さら」って思われないかな。
カイ
大人のピアノは誰かと競うものじゃないよ。比べる相手は先週の自分で十分だね。

仕事と両立できるピアノの練習時間|平日20分・休日1時間のモデル

40代・50代のピアノの練習時間は、平日20分と休日1時間の組み合わせを基本にすると無理なく続けられます。平日3日と休日2日で、週の合計は180分(3時間)です。週末に3時間まとめるより、短くても毎日に近い頻度で鍵盤に触るほうがよい、と複数の教室が案内しています。

40代・50代のピアノ練習モデル。平日20分を3日、休日60分を2日で週180分とし、平日20分は指ならし3分・部分練習12分・好きな曲5分に分ける図

曜日 時間 やること
月 休み 練習しない日を先に決める
火 20分 前回の復習と、片手の練習
水 20分 難しい2小節だけ
木 20分 両手でゆっくり
金 休み 飲み会や残業の日に充てる
土 60分 通して弾く、新しい部分を読む
日 60分 好きな曲を楽しむ

表は編集部のモデルで、週5日を想定しています。「週3日しかできない週があっても失敗ではない」と最初から決めておくと、気持ちが楽になります。

1日15分・30分・60分で上達はどう変わる?

1日の練習時間ごとの違いは、大人向け音楽教室の解説をもとにまとめると次のとおりです。平日20分は、「習慣づくり」と「上達を実感」のちょうど間に入ります。

1日の練習時間 期待できること 向いている人
15分 習慣がつく。上達はゆるやか 始めて3か月まで、繁忙期
30分 上達を実感しやすくなる 平日に時間を作れる人
60分以上 上達のスピードが大きく上がる 休日、目標の本番が近い時期

草加市のピアノ教室も、慣れない指や手首を痛めないために、最初は15分程度から始めるよう勧めています。40代・50代は、最初の3か月は15〜20分、慣れたら休日だけ伸ばすという順番が安全です。

20分の中身を決めておく

20分の練習は、ピアノの前で何をするか悩むと終わってしまいます。指ならし3分、今の曲の部分練習12分、好きな曲を弾く5分のように、配分を固定してしまいましょう。

特に大切なのが、真ん中の部分練習(弾けない1〜2小節だけを取り出して繰り返す練習)です。曲の最初から最後まで通して弾く練習ばかりだと、弾ける部分だけが上手になり、弾けない部分はいつまでも残ります。弾けない小節は、間違えずに弾ける速さまでメトロノームのテンポを落とし、弾けたら少しだけ上げる。これを数日かけて繰り返すのが、遠回りに見えて一番の近道です。

練習時間は「作る」より生活に「組み込む」

練習時間は、空いた時間を探すより、毎日すでにやっていることの前後に固定するほうが続きます。ピティナのアンケートでも、続けている大人の工夫として、帰宅してすぐと時間を決めている50代の方、10分ほどの短時間でも毎日続けている40代の方、常に小さな目標を持つという30代の方の声が紹介されていました。

生活の場面 組み込む練習 時間
朝食のあと 昨日の2小節をゆっくり1回 5分
出勤前 右手だけ1フレーズ 3分
帰宅して鞄を置く前 その日の部分練習 12〜20分
お風呂上がり 好きな曲を1回 5分

忙しい週は「ふたを開けるだけ」でよい

繁忙期や介護、家族の用事で時間が取れない週もあるはずです。そんなときは、1日3分、1曲だけ弾くで十分です。練習の質より、「やめていない」状態を守ることが最優先です。

教室に通っている方は、練習できなかった週こそレッスンを休まないでください。大人向け音楽教室の解説では、手ぶらで行って先生と一緒に譜読みをするだけでも立派な練習になるとされています。ピティナのアンケートにも、練習していなくてもレッスンには行く、という60代の方の工夫がありました。

夜に弾くなら電子ピアノとヘッドホン

夜しか時間がない方は、電子ピアノとヘッドホンがあると家族に気兼ねせず練習できます。選ぶときは、88鍵あること、ハンマーアクション(本物のピアノに近い重さを再現する鍵盤の仕組み)が付いていることの2点を確認してください。鍵盤が軽すぎるキーボードだと、教室のピアノに座ったときの差に戸惑います。

価格は、入門機なら数万円台から、木製鍵盤の中級機は15万〜30万円程度と案内する教室もあります。迷ったら楽器店で実際に触り、弾き心地で決めましょう。

  • 打鍵音への対策:ヘッドホンでも鍵盤をたたく振動は床に伝わります。厚手の防振マットを敷き、楽器を壁から数センチ離します
  • 時間帯のルール:夜21時以降はヘッドホンに切り替える、など家族と先に決めておきます

50代から1年・3年で弾ける曲の目安|「エリーゼのために」は1年?3年?

50代からピアノを始めた場合、「エリーゼのために」に届くまでの目安は、自宅練習が週90〜120分なら約3年、週210分なら1年前後です。調べてみると「1年で弾ける」と「3年かかる」の両方の情報が見つかりますが、食い違いの大部分は練習量の前提の違いで説明できます。

50代からピアノを始めた場合の到達目安。自宅練習が週90〜120分ならエリーゼのためにへの挑戦は3年、週210分なら1年前後という2つのペースを比べた図

「1年」と「3年」が食い違う理由は週の練習量

情報源 前提にしている練習 自宅練習の週合計 エリーゼのために
草加市の個人ピアノ教室 週1回のレッスン+自宅で週3〜4回・1回30分 90〜120分 3年後に挑戦も視野
大人向け音楽教室 毎日30分 210分 1年前後が現実的
この記事のモデル 平日20分×3日+休日60分×2日 180分 1年半〜3年(編集部の見立て)

2つの教室の前提を週の合計に直すと、およそ2倍の差があります。加えて、前者は「ものすごく順調に進んだ場合」と断ったうえで「挑戦できる」時期を、後者は標準的な目安として「弾けるようになる」時期を書いています。どちらかが間違っているのではなく、同じものを違う練習量で測っていると読むのが正確です。

この記事の週180分モデルは2つの間に入るため、編集部では1年半〜3年を見ておくのが現実的だと考えています。あくまで見立てであり、練習量が半分なら、かかる時間は倍近くになると考えてください。

3か月・半年・1年・2年・3年でできること

ゆっくりペース(自宅練習が週90〜120分)で進んだ場合の、時期ごとの到達目安です。教本の進度は「バイエル」(初心者向けの定番教本)で表しています。

時期 教本の進度 できること 弾ける曲の例
3か月 バイエル前半 片手なら簡単な曲をスムーズに弾ける きらきら星、童謡の簡単アレンジ
半年 バイエル前半〜中盤 両手で1曲を止まらず最後まで弾ける やさしいアレンジの好きな曲
1年 バイエル中盤〜後半 強弱やテンポの揺れを意識できる 短い曲をていねいに仕上げる
2年 バイエル後半 聞いたことのある有名曲に入る ペツォールトのメヌエット
3年 バイエル後半〜終了 ペダルを使い始める エリーゼのために(挑戦)

毎日30分以上を続けられる方は、もっと速く進みます。大人向け音楽教室の解説では、「ブルグミュラー25の練習曲」が弾けてソナチネに挑戦できる中級まで1〜3年、ショパンの「ノクターン第2番」やドビュッシーの「月の光」は2〜3年が目安とされています。

一方で、知恵袋には、40歳で始めてレッスン歴が12年を超え、8年目からは毎年アマチュアコンクールに出ているという方の回答もありました。その方も、上達を自分で実感できるまでにはもう少し年月がかかる、と相談者に伝えています。50代からのピアノは、年単位で楽しむ前提で計画するのが、結局は一番の近道です。

憧れの曲を「簡単アレンジ」で先に弾く

原曲が弾けるようになる日を待たずに、憧れの曲のやさしい編曲を先に弾いてしまいましょう。大人の初心者にとって、好きな曲が自分の指から鳴る喜びは、どんな教本よりやる気を支えてくれます。音楽教室が50代の初心者向けに挙げている曲を、弾きやすい理由と一緒に整理しました。

曲名 作曲者・出典 初心者が弾きやすい理由
カノン パッヘルベル 左手の伴奏パターンが一定で、両手の感覚をつかみやすい
ムーン・リバー ヘンリー・マンシーニ/映画「ティファニーで朝食を」 ゆったりした3拍子で、多少のミスでも音楽が崩れにくい
やさしさに包まれたなら 荒井由実(松任谷由実) 聴き慣れた明るいメロディで、指を1本ずつ動かす練習になる
少年時代 井上陽水 テンポがゆっくりで、左手の動きが少ない
海の見える街 久石譲/映画「魔女の宅急便」 シンプルなアレンジが多く、人前でも弾きやすい
星に願いを 映画「ピノキオ」 初心者向けから上級者向けまで編曲がそろい、段階的に挑戦できる

表で紹介した6曲を、初級向けアレンジの演奏で聴いてみましょう。楽譜を買う前に、「この響きが好き」「これなら弾けそう」と感じる1曲を耳で選ぶのがおすすめです。

1. カノン(パッヘルベル)|ぷりんと楽譜(ヤマハ)公式・初級アレンジ

2. ムーン・リバー(ヘンリー・マンシーニ)|「美しく響くピアノソロ」の初級アレンジ

3. やさしさに包まれたなら(荒井由実)|ぷりんと楽譜(ヤマハ)公式・初級アレンジ

4. 少年時代(井上陽水)|ぷりんと楽譜(ヤマハ)公式・初級アレンジ

5. 海の見える街(久石譲)|ぷりんと楽譜(ヤマハ)公式・初級アレンジ

6. 星に願いを(映画「ピノキオ」)|「美しく響くピアノソロ」の初級アレンジ

自分に合う楽譜を見分ける3つの基準

背伸びした楽譜を選ぶと、数か月たっても1ページ目から進めなくなります。楽譜を買う前に、次の3点を確かめてください。大人向け音楽教室が挙げている基準を、編集部で言い換えたものです。

  1. 片手だけなら、初めて見ても止まらずに弾ける
  2. 複雑な和音や、速く細かい音の連続が多すぎない
  3. 曲の長さが、今の自分にとって無理なく仕上げられる範囲に収まっている

表紙に「初級」「やさしく弾ける」と書かれたアレンジ譜から始め、1曲を最後まで仕上げる経験を早めに積みましょう。今の自分がどの段階にいるのかは、ピアノは何年で弾ける?到達目安一覧で確認できます。

50代のピアノで「上達しない」と感じたら|ノーミスで弾けない悩みの抜け方

50代でピアノを始めた方が「上達しない」と感じる一番の原因は、腕前ではなく、ノーミスで弾けることを合格の基準にしている点にあります。知恵袋には、50代後半で教室に1年半通い、大人向け教本の3巻まで進んだのに、どの曲も最後まで間違えずに弾けたことがない、才能がないのだろうか、という相談がありました。回答者たちの答えは、驚くほど一致しています。

ソラ
1年半も習っているのに、間違えずに最後まで弾けたことが一度もないんだ。才能がないのかな…。
カイ
レッスン歴12年を超える人でも、ノーミスは一度もないと答えていたよ。止まらずに最後まで弾けたら、もう合格でいいんだ。

ノーミスを合格の基準にしない

ノーミスは、大人のピアノの合格基準にしないでください。相談への回答では、1年半でノーミスを求めるのは早すぎるという意見が複数ありました。40歳で始めてレッスン歴12年を超える方は、どれだけ練習しても間違えずに弾けたことは一度もない、と書いています。

草加市のピアノ教室も、始めて半年の目標を「テンポが遅くても、間違える箇所があっても、止まらずに最後まで弾けること」と説明しています。編集部のおすすめの基準は、「止まらずに最後まで」「昨日より1か所よくなった」の2つです。

難しい1曲と、やさしい1曲を並行する

上達を実感できないときは、練習する曲を2本立てにしてみましょう。相談のベストアンサーで勧められていたのが、少し難しい目標の曲を時間をかけて練習しながら、難易度を下げた曲を短い期間で仕上げていく進め方です。

  • 背伸びの1曲:憧れの曲。数か月かけて少しずつ進める
  • やさしい1曲:今の実力より少し下の曲。2〜3週間で仕上げて達成感を作る

難しい曲だけを続けていると、「弾けた」という経験が何か月も得られません。やさしい曲で小さな完成を積み重ねることが、背伸びの曲を続ける燃料になります。

停滞期は月1回の録画で確かめる

練習しているのに進んでいない気がする時期は、月に1回、スマートフォンで演奏を録画して見比べてください。練習しても上達を感じられない時期はプラトー(停滞期)と呼ばれ、頭の中で情報を整理している期間だと、大人向け音楽教室の解説では説明されています。

毎日聴いている自分の音の変化には、自分では気づけません。3か月前の録画と並べると、テンポの安定や音のつながりが変わっていることがはっきり分かります。録画は、独学の方にとっては先生の代わり、教室に通う方にとっては成長の記録になります。

最初の3か月がいちばんやめやすい

大人向け音楽教室の解説によると、大人がピアノをやめてしまう時期は最初の3か月に集中します。思い描いていた姿と現実の差に驚き、「向いていない」と結論を出してしまうからです。最初の3か月は、片手で弾けただけでも前進と数えてください。上達はなだらかな坂ではなく、ある日ふっと弾けるようになる階段のような形で訪れます。

苦しくなったら休む、誰かに聴いてもらう

練習が義務のように感じてきたら、数日ピアノから離れてもかまいません。知恵袋の回答にも、楽しくないと感じたら思いきって休み、新鮮な気持ちで戻ればよい、という助言がありました。そして、気持ちが戻ってきたら、家族や友人など身近な人に1曲聴いてもらいましょう。人前で弾く機会が上達を早めるという点は、教室の解説と経験者の回答で共通しています。

つまずき よくある原因 今日からできること
ノーミスで弾けない 合格の基準が高すぎる 「止まらずに最後まで」を合格にする
同じ場所で必ず間違える 通し弾きばかりしている その2小節だけをゆっくり5回弾く
上達している気がしない 変化を自分の耳で判断している 月1回録画し、3か月前と比べる
練習が苦しい 難しい曲しか弾いていない やさしい曲を1曲、並行して仕上げる
子どもや他人と比べて落ち込む 比べる相手を間違えている 先週の自分とだけ比べる

教室と独学のどちらがいい?40代・50代の分岐チャート

40代・50代の初心者には、最初の3か月から半年だけでも教室に通うことをおすすめします。指の形と座り方の癖は、自分では気づきにくく、後から直すのに時間がかかるからです。次のチャートとチェック表で判断してください。

40代・50代のピアノ初心者が通学の教室・オンラインや月2回・ハイブリッド・独学のどれを選ぶかを3つの質問で分けるフローチャート

質問 Yesが多いと Noが多いと
楽譜を読むのが苦ではない 独学も選べる 教室向き
毎週の予定が読みやすい 通学の教室 オンライン・月2回
自分の演奏の録画を見直せる 独学も選べる 教室向き
弾きたい曲がはっきりある アプリや教材も有効 教室で一緒に決める
発表会などの目標がほしい 教室向き どちらでもよい

大手・個人・オンライン・独学・ハイブリッドの比較

ピアノの学び方は、大きく5つに分けられます。それぞれの良い点と注意点を、音楽教室の解説をもとに編集部で整理しました。

学び方 良い点 注意点 向いている人
大手の音楽教室 指導法と教材が整っている。大人向けのグループレッスンもある 振替の決まりがやや厳しめ。施設費などの固定費がかかることがある 整った環境で基礎から学びたい人
個人のピアノ教室 曲選びや進度を自分に合わせてもらいやすい 先生との相性に左右される 弾きたい曲がはっきりしている人
オンラインレッスン 移動時間がかからず、不規則な仕事や介護と両立しやすい 指の形や力の抜き方を直接直してもらいにくい。音が遅れて届くことがある 近くに教室がない人、夜しか時間がない人
独学 費用が最も少なく、自分のペースで進められる 悪い癖に自分で気づけない 楽譜が読めて、録画を見直せる人
ハイブリッド ふだんは自習し、月1〜2回のレッスンで方向を直してもらう 日々の練習の管理は自分で行う 忙しいが基礎は固めたい人

編集部が40代・50代に一番合うと考えるのは、ハイブリッドです。ピティナのアンケートでも、大人のレッスン頻度は約半数が月2回でした(有効回答83件)。一方、楽器を持たずに始めた方は約6割が毎週通っていたという結果もあります。始めたばかりの数か月は毎週、慣れてきたら月2回に切り替えるのが、無理のない進め方でしょう。レッスンの回数については大人のピアノレッスンの頻度で詳しく解説しています。

忙しい人の教室の選び方|体験レッスンで確かめる5つ

忙しい方が教室を選ぶときは、月謝の安さより振替のしやすさを優先してください。仕事で休んだ分が消えてしまう教室だと、通うほど負担を感じやすくなります。体験レッスンでは、次の5つを確かめましょう。

  1. 振替と予約変更の決まり:何日前まで変更できるか、月をまたいで振り替えられるか
  2. 弾きたい曲から始められるか:教本を終えるまで好きな曲に進めない方針ではないか
  3. 年間の総額:月謝のほかに、入会金、施設費、教材費、発表会の参加費がいくらかかるか
  4. 発表会は任意か:出なくてもよいか。小さな弾き合い会など気軽な場があるか
  5. 通う動線:職場の帰りや買い物のついでに寄れるか。夜の時間帯やオンラインへの切り替えは可能か

教室の探し方は大人のピアノ教室の選び方、費用は大人のピアノ教室の料金相場で詳しくまとめています。

独学で進める場合の限界

独学で始める場合は、3か月ごとに録画を見返して、前より弾けるようになったかを確かめましょう。独学の最大の弱点は、間違った手の形や指使いがそのまま定着してしまうことです。進まなくなったサインはピアノ独学の限界で紹介しています。週ごとの練習内容を決めたい方は、大人の独学メニューが使えます。

▶仕事の後でも受けられるオンライン体験レッスンを見る(オトノミチシルベ)

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50代ならではの注意点|目と手と集中力、気持ちの守り方

50代でピアノを始めるときは、目の疲れ、手の痛み、集中力の限界、完璧主義の4つに気をつけると、長く続けられます。

老眼には楽譜を大きくする

楽譜が見えにくいと感じたら、拡大コピーやタブレットを使いましょう。楽譜を読むのがつらいと、それだけで練習が嫌になります。ピアノの譜面台までの距離に合わせたメガネを眼鏡店で相談するのも一案です。

手の痛みが出たらすぐ休む。力を抜く練習から

指や手首に痛みが出たら、その日の練習はやめてください。腱鞘炎は指の使いすぎのほか、加齢による変化やホルモンの影響も関わり、中高年の女性に多いとされています。痛みが続くときは整形外科に相談しましょう。

痛みを防ぐ鍵は脱力(だつりょく。打鍵に必要な最小限の力以外を抜くこと)です。大人は「きちんと弾こう」とするほど肩や手首に力が入ります。弾く前に手首をぶらぶらと振り、肩を落として深く息を吐き、指を1本ずつやさしく開く。この1分の準備を習慣にしてください。詳しいメニューは大人の指トレーニングの記事で紹介しています。

集中できるのは30〜40分と考える

1回の練習は、長くても30〜40分で区切りましょう。知恵袋の回答にも、年齢とともに集中力が続かなくなり、40分ほどで疲れてしまうという経験者の声がありました。休日の60分は、午前30分と夕方30分の2回に分けるほうが、手にも頭にも負担がかかりません。

完璧を目指さず、楽しみの割合を残す

40代・50代の方は、仕事で身についた「きちんとやる」姿勢が、ピアノでは裏目に出ることがあります。弾き間違えても、最後まで弾ききったら合格としましょう。練習の最後に好きな曲を1曲だけ弾く習慣を作ると、次の日もピアノの前に座りたくなります。

最初の3か月の進め方|未経験から両手で1曲弾くまで

ピアノ未経験の40代・50代の方は、最初の3か月を「両手で短い曲を1つ弾く」ことだけに使うのがおすすめです。1回15分程度の練習でも、この目標なら十分に届きます。

時期 目標 練習の内容
1か月目 鍵盤の場所と指番号を覚える ドレミファソを左右の手で弾く
2か月目 片手でメロディを弾く 童謡や簡単な好きな曲の片手
3か月目 両手で短い曲を弾く 右手メロディに左手1音を足す

片手ずつ、ゆっくり、それから両手

最初から両手で弾こうとしないでください。右手と左手をそれぞれ別に練習し、どちらもある程度弾けるようになってから合わせます。両手にすると急に弾けなくなりますが、そこでテンポを半分まで落とすのがコツです。ゆっくり正しく弾けた回数だけが、指に残ります。

楽譜は読めなくても始められる

楽譜が読めなくても、ピアノは始められます。最初の教材にはドレミのふりがなが付いたものもあります。ただし、すべての音符にドレミを書き込むと、目が文字だけを追うようになり、いつまでも音符が読めません。書き込むのは迷いやすい音だけにして、慣れてきたらドとソだけ楽譜で探すところから始めてみましょう。詳しくは楽譜が読めない大人のピアノ入門で解説しています。

教本は「大人向け」を1冊選ぶ

教本は、子ども向けより大人向けのものをおすすめします。童謡だけでなく、映画音楽やクラシックの名曲が入っているので、大人が弾いて楽しいからです。大人向け音楽教室の解説では、「大人のためのピアノ悠々塾」のように説明が丁寧な独習書が例に挙げられ、今の自分には少し簡単だと感じる本から始めることが勧められています。何冊も買わず、1冊を最後まで弾ききることを目標にしましょう。

40代から始める人と50代から始める人の違い

40代と50代では、同じ初心者でも計画の立て方が少し違います。どちらも遅くはありませんが、次の違いを知っておくと、無理のない目標が立てられます。

年代 生活の特徴 おすすめの目標
40代 子育てと仕事で最も忙しい時期のことも 数年かけて憧れの曲へ。短時間の習慣づくりを優先
50代前半 子どもの手が離れ始める 週の練習時間を増やし、教室で基礎を固める
50代後半 定年や働き方の変化が見え始める 定年後に本格化する前の土台作り

ピティナの記事では、教室の3分の1が大人の生徒だという東京都の指導者が、50代で初めて挑戦した生徒について、最初は戸惑っていたものの、レッスンを重ねるごとにできることが増えていったと紹介しています。忙しい今のうちに少しだけ始めておくことには、大きな価値があります。定年の日にゼロから始めるより、数年分の土台がある状態で時間を手にできるからです。

家族の理解を得るコツ

家族に「夜は音を出さない」「日曜の午前中だけ弾く」など、ルールを先に伝えておきましょう。音の問題が解決すると、気持ちよく練習に向かえます。マンションで弾く場合は、ヘッドホンを使えるか、打鍵の音がどれくらい響くかも確認してください。

40代・50代のピアノのよくある質問

始める前によく聞かれる疑問に答えます。

指が動かなくても大丈夫?

大丈夫です。最初から思いどおりに動く人はいません。指の動かしにくさには原因があり、年齢だけの問題ではありません。特に薬指と小指は、もともと独立して動かしにくい指です。大人の指トレーニングの1日5分メニューを試してみてください。

何歳までに始めれば間に合う?

弾きたい曲が弾けるようになるかは、年齢より「何年続けるか」で決まります。「間に合うか」を考えるより、3年続けられる形を作るほうが現実的です。ピティナのデータの最高齢は83歳でした。

楽器を買ってから教室へ行くべき?

いいえ、教室で体験してから楽器を買っても問題ありません。ピティナのアンケートでも、楽器を持たずに習い始めた方の半数以上が、始めてから3か月以内に購入していました(有効回答19件)。住まいの環境に合う楽器を、先生に相談してから選ぶのも良い方法です。

発表会には出ないといけない?

大人の教室では、発表会への参加は任意としているところが多いです。人前で弾きたくない方は、無理に出る必要はありません。ただ、本番という期限があると練習の密度が上がるのも事実です。まずは教室内の小さな弾き合い会や、家族の前で1曲弾くところから試してみてはいかがでしょうか。

子どもや若い人に追い越されて、落ち込みませんか?

落ち込む瞬間はあるはずです。だからこそ、比べる相手を先週の自分に決めておきましょう。教室で周りの目が気になる方は、大人の初心者がピアノ教室で恥ずかしくない理由も参考にしてください。

ピアノは脳に良いと聞きますが、本当ですか?

ピアノは、楽譜を目で追い、指を動かし、鳴った音を耳で確かめるという作業を同時に行います。音楽教室の解説では、大人になってからでも新しい刺激で脳の働きが変わること(神経可塑性)や、認知機能への良い影響が紹介されています。ただし効果には個人差があります。編集部としては、健康のために我慢して弾くより、楽しんで続けた結果としてついてくるものと考えるのがよいと思います。

まとめ|50代からピアノを始めるなら最初の1週間を決めよう

最初の疑問に答えます。

  • 40代・50代でも弾ける? 弾けます。ピティナのデータでも30代から50代の申込みはほぼ同数で、およそ3人に1人は初めて習う方です。
  • どのくらい練習する? 平日20分を3日と休日1時間を2日、週180分が目安です。忙しい週は1日3分で十分です。
  • 「エリーゼのために」は何年? 教室と独学は? 自宅練習が週90〜120分なら約3年、週210分なら1年前後です。最初の3〜6か月は教室で基礎を見てもらい、慣れたら月2回のレッスンと自習を組み合わせる形が、忙しい世代に合います。

50代からピアノを始める方に必要なのは、才能よりも、忙しい日々に合った小さな計画です。まずは弾きたい曲を1曲決めて、今週の練習する曜日を手帳に書き込んでみませんか。

▶ あわせて読みたい:大人の初心者がピアノ教室で恥ずかしくない理由/大人のピアノレッスンの頻度

参考にした情報