ショパン バラード難易度|1番〜4番を比較・一番弾きやすいのは?

ショパンのバラードの難易度は、4曲すべてが上級以上。その中で「取り組みやすい」と言われるのは第3番、憧れの人が多い第1番は最後のコーダ(終結部)が最大の壁、第4番は技術・音楽性ともに最高難度です。

「いつかバラードの1番を弾いてみたい」――幻想即興曲やノクターンを弾き終えたころ、そう思ったことはありませんか? ところが楽譜を開いてみると、最初の2ページは意外と弾けるのに、その先で急に手が止まってしまう。「自分が手を出していい曲なのだろうか」と不安になる方も多いのではないでしょうか。

  • ショパンのバラード4曲の中で、一番弾きやすいのはどれ?
  • 第1番は「難しい」と言われるけれど、具体的にどこが難しいの?
  • バラードに挑戦する前に、どの曲をどれくらい弾いておけばいい?

この記事は、幻想即興曲やノクターン第2番あたりを弾いた経験があり、次の目標として「バラード」を考えている方に向けて書いています。ショパンの生涯の中で20代から30代にかけて生まれた4つのバラードを、難易度の一般的な順位だけでなく「手の大きさや得意分野で順位が入れ替わる理由」まで踏み込んで比較していきます。

目次

ショパンのバラード難易度は?4曲をひと目で比較

ショパンのバラード4曲を難易度と演奏時間で配置したマトリックス図

ショパンのバラードとは、物語風の劇的な展開を持つピアノ独奏曲のジャンルで、ショパンが初めて確立したものです。もともと「バラード」は中世ヨーロッパで英雄譚や神話を語った詩の形式を指す言葉でした。ショパンは20代から30代にかけて4曲を作曲し、どの曲も美しく歌う場面と激しく感情を揺さぶる場面が次々に入れ替わる、8〜12分の濃密な物語になっています。

ショパンのバラードの難易度を一覧で比べると、一般的に「弾きやすい順」は第3番→第1番→第2番→第4番とされています。ただし、4曲とも演奏時間が7分を超え、楽譜出版社の難易度でも最上位クラスに置かれる大曲です。「バラードの中では易しい」は「ピアノ曲として易しい」ではない、という前提をまず押さえておきましょう。

曲 調・作曲年 演奏時間 全音/ヘンレ 最大の難所
第3番 Op.47 変イ長調・1840〜41年 約7〜8分 F(上級上)/8 後半のオクターブと和音の連続
第1番 Op.23 ト短調・1831〜35年 約9〜10分 F(上級上)/8 コーダ(Presto con fuoco)
第2番 Op.38 ヘ長調・1836〜39年 約7〜8分 F(上級上)/8 静と嵐の切り替え、嵐の部分の指回り
第4番 Op.52 ヘ短調・1842年 約11〜12分 全音未収録/9(最高) コーダの右手3度進行

全音・ヘンレなど楽譜出版社の難易度で見ると

楽譜出版社が公表している難易度を見ると、ショパンのバラードは4曲そろって最上位に置かれています。全音ピアノピースでは第1番・第2番・第3番がいずれもF(上級上)で、これは全音の6段階でもっとも高い等級です。第4番はそもそも全音ピアノピースに収録されていません。ドイツのヘンレ版では9段階のうち第1番〜第3番がレベル8、第4番だけが最高のレベル9です。

つまり出版社の基準では「第4番が頭ひとつ抜けて難しく、残り3曲は横並び」ということになります。あとで紹介する「3番が入門枠」という順位は、この横並びの3曲を演奏者の実感で並べ替えたものだと理解しておくと、ランキングの数字に振り回されずに済みます。

「弾きやすい順」は人によって入れ替わる

バラードの弾きやすい順は、実は手の大きさと得意な動きによって入れ替わります。第3番はオクターブ(8度の音程を同時に押さえる形)で付点リズムを軽やかに弾き続ける場面が多く、手が小さい人ほど負担が大きい曲です。一方の第2番は、穏やかな部分が曲のおよそ半分を占めるので、速い動きが得意な人には第3番より現実的に感じられることがあります。

逆に、手が大きくオクターブが苦にならない人は第3番のほうが早く形になります。「第3番が最も易しい」というのは、あくまで平均的な話。自分の手と得意分野で読み替えるのが、後悔しない選曲のコツです。

バラード第3番の難易度|「入門枠」と言われる理由と落とし穴

バラード第3番 変イ長調 Op.47は、4曲の中で唯一「幸福感」で終わる作品で、構成が見通しやすいことから入門枠と言われます。1840〜41年、ショパンがジョルジュ・サンドとの生活で比較的落ち着いていた時期に書かれ、社交界の令嬢ポーリーヌ・ド・ノアイユに献呈されました。他の3曲に漂う悲劇性がなく、ポロネーズを思わせる弾むリズムがおしゃれに続いていきます。

ソラ
第3番が一番易しいって聞いたから、まずこれから始めればいいんだよね?

カイ
順位だけ見ればそうなんだけど、「易しい」の意味は「暗譜しやすくて構成が追いやすい」であって、指の負担が軽いわけじゃないんだ。特にオクターブが多いから、手の大きさで感じ方がまったく変わるよ。

第3番が取り組みやすいと言われる3つの理由

第3番がバラード入門と言われる理由は、大きく3つあります。

  1. 構成が明快:冒頭の主題と、中間部の弾むような主題が交互に現れる形で、暗譜の見通しが立てやすい。
  2. 演奏時間が短い:約7〜8分と4曲で最短クラス。集中力と体力の面で負担が少ない。
  3. 音楽が明るい:悲劇的な緊張を10分以上維持する必要がなく、心理的なハードルが低い。

ドイツの詩に基づく「水の精(オンディーネ)」の物語と結び付けて語られることも多く、対話のように交わされる冒頭の旋律は、初めて弾いてもすぐに「歌える」場所です。

手が小さい人にとっては「最難関」になる落とし穴

ところが第3番には、手が小さい人にとって大きな落とし穴があります。冒頭から続く付点リズムのオクターブは、腕の脱力ができていないと固くなり、軽やかさが出ません。さらに後半に入ると、オクターブの行き来に和音が加わって、鍵盤上を大きく跳び回る場面が続きます。楽譜出版社の難易度では横並びでも、実際に弾いた人の中には「手が小さいので左右の手の役割を入れ替えて対応した」「終盤の音が拾いづらい」という声が少なくありません。

第3番を選ぶなら、まず後半のオクターブ+和音の部分だけを楽譜で確認し、「ゆっくりなら確実に掴める」と感じられるかを試してから決めることをおすすめします。

バラード第1番の難易度|憧れの曲が「最初の2ページだけ優しい」理由

ショパンのバラード第1番の曲の流れと難所の位置を示した図

バラード第1番 ト短調 Op.23の難易度は、「優しいのは最初の2ページだけ、あとはどこも難しい」と言われるほど、曲の後半に負荷が集中しています。1831〜35年、20代前半のショパンがパリに移ってすぐに手がけた作品でありながら、その完成度は驚くほど高く、シューマンはショパン本人から「いちばん気に入っている作品」だと聞いたと伝えられています。

映画『戦場のピアニスト』の重要な場面で演奏され、フィギュアスケートの羽生結弦選手がプログラムに使ったことでも知られる、まさに「憧れの曲」です。それだけに「弾きたい」と思う人が多く、同時に挫折する人も多い一曲です。

冒頭7小節のユニゾンが「音楽的に」いちばん難しい

第1番の冒頭は、両手のユニゾン(同じ旋律を左右で重ねる形)が7小節、ゆったりと上っていくだけで始まります。リズムも音符もまったく難しくありません。ところが、この7小節を「音楽的に」弾くことが、技術的な難所よりも先に立ちはだかります。

音が少ない分、テンポの揺らし方、音の重ね方、休符の長さまで、すべてが聴き手に丸見えになるからです。レッスンで「違う」と何度も言われるのは、たいていコーダではなくこの冒頭だ、と語る演奏者は珍しくありません。「弾ける」と「聴かせられる」の差が、最初の1ページで試される曲だと言えます。

第2主題は「息をつける場所」、そしてコーダで難易度が跳ね上がる

嵐のような第1主題の展開を抜けると、変ホ長調の穏やかな第2主題が現れます。演奏していて初めて気持ちが落ち着けるポイントで、ここを美しく歌い上げるのが第1番の醍醐味です。

問題はそのあとです。曲の最後に置かれたコーダ(Presto con fuoco=火のように速く)は、ピアノ弾きの間で「手に負えない」とまで言われる部分。左右の大きな跳躍、和音の連打、両手でずれた音階を高速で駆け下りる場面が数分間続きます。しかも本当に難しいのは指の速さより拍子感とリズム感で、アクセントの感じ方ひとつで音楽がまったく変わってしまうため、「弾けているのに音楽にならない」状態に陥りやすい場所です。

Yahoo!知恵袋などでも「月光ソナタ第3楽章がツェルニー40番程度なら、バラード第1番は50番程度」といった目安が語られており、幻想即興曲を弾けるレベルから見ても、まだ2〜3段階上の曲だという認識が一般的です。

バラード第2番の難易度|静と嵐の切り替えが最大の壁

バラード第2番 ヘ長調 Op.38は、穏やかなシチリアーノ風の主題と、突然乱入する嵐のようなパッセージの「二面性」が最大の特徴であり、最大の難所です。1836〜39年に書かれ、ショパンの才能を早くから称えたロベルト・シューマンに献呈されました。ヘ長調で始まりながらイ短調で終わるという、当時としては異例の構成を持つ作品です。

4曲の中では演奏される機会がやや少ないものの、2021年のショパン国際ピアノコンクールでは多くの入賞者がこの曲を選び、あらためて注目された一曲です。

冒頭のコラールで「指の分離」と「バランス」が試される

第2番の難しさは、テクニックの見せ場である嵐の部分より、実は最初の穏やかな部分にあります。ゆりかごに揺られているような6/8拍子の旋律を、両手のバランスを保ちながら、すべての声部(同時に鳴っている旋律の層)を聴き分けて歌わせなければなりません。

特に右手は、4の指や5の指でメロディーを歌わせながら、内側の音を目立たせずに弾く必要があります。指がしっかり分離していないと、内声がメロディーを邪魔してしまう。「ピアノで静かに弾く部分ほど、技術があるかどうかが見えてしまう」典型的な場面です。

嵐の部分は「入り方」と「戻り方」が難しい

Presto con fuoco で始まる嵐のパッセージは、指回りそのものも大変ですが、それ以上に難しいのが静けさから嵐へ、嵐から静けさへ戻る瞬間の音色の切り替えです。直前まで歌っていた手で、次の瞬間には激しい和音を叩かなければならず、逆に嵐のあとで一気に音量と体の緊張を落とす必要があります。

一方で、穏やかな部分が曲の約半分を占めるため、「難しい部分の総量」で見れば第3番より少ないという見方もあります。速い動きが得意で手が小さめの人は、第3番より第2番のほうが完成までの道のりが短いかもしれません。

バラード第4番の難易度|最高難度と言われる3つの理由

バラード第4番 ヘ短調 Op.52は、技術・構成・音楽的な深さのすべてにおいて4曲の最高峰であり、多くのピアニストが「生涯をかけて取り組む曲」と位置づける作品です。1842年、ショパン32歳のときに書かれ、ロスチャイルド男爵夫人に献呈されました。「いつか弾きたい」と憧れる人がとても多い一方、「気軽には取り組めない」と口をそろえる曲でもあります。

ハ長調の静かな導入から始まり、主題が変奏を重ねながら姿を変え、対位法(複数の旋律を同時に絡ませる書法)まで織り込まれてクライマックスへ向かう構成は、ショパンが自分の人生を回想しているかのようだと語られます。12分近い長さなのに、何度聴いても飽きないのはそのためでしょう。

理由①:ピアニッシモのまま進む左手のオクターブ

第4番の最初の難所は、曲が始まって2分ほどのところ、ピアニッシモ(とても弱く)のまま左手がオクターブで進行する場面です。派手さはまったくありませんが、弱音でオクターブを均一に、しかも旋律的に鳴らし続けるのは、神経をすり減らす作業です。「静かな部分ほど難しい」というバラードの共通点が、第4番では特に強く表れます。

理由②:長いフェルマータの前後、天国のような数小節との落差

後半、高速の和音が次々に移り変わる場面のあと、長いフェルマータ(音を延ばして止まる記号)が置かれます。その直後、フォルテ3つの激しさから一転してピアニッシモの静かな和音が数小節、まるで天に召されたように続き、そこからコーダに突入します。この落差を作るためには、フェルマータまでの和音を確実に掴む技術と、一瞬で体の緊張を抜く切り替えの両方が必要です。

理由③:コーダの右手3度進行は「この曲で身につける」のは無理

最後のコーダ、クライマックスで現れる右手の3度進行(3度の音程を重ねたまま高速で動く形)は、第4番を弾く人が最後まで苦しむ場所です。これは「この曲を練習しているうちに弾けるようになる」種類の技術ではなく、エチュード作品25-6などで3度の技術をあらかじめ身につけていることが大前提になります。

さらに第4番はショパン晩年の作品で、彼の人生を知っているかどうかで音楽の重みがまったく変わります。技術的に弾けるだけでは足りない、という意味でも「簡単には扱えない」一曲です。

バラードに挑戦する前に弾いておきたい曲と目安期間

ショパンのバラードに挑戦するまでのステップを示したロードマップ図

ショパンのバラードに挑戦する前に、「歌わせる技術」と「個別の技巧」をそれぞれ別の曲で固めておくと、長い物語を最後まで語り切る力になります。バラードは1曲の中に、ノクターンのような歌う場面と、エチュードのような技巧の場面が交互に登場するからです。いきなりバラードで両方を同時に身につけようとすると、どちらも中途半端になりがちです。

ノクターン・幻想即興曲の次に何を弾くか

目安となるステップを整理すると、次のようになります。

  1. ノクターン第2番(Op.9-2)・第20番(遺作):旋律を歌わせ、内声とのバランスをとる練習。ショパンのノクターン難易度一覧で自分に合う曲を選べます。
  2. 幻想即興曲(Op.66):左右のリズムのずれと速いパッセージへの入口。多くの人がここで「上級の入口」を実感します。
  3. エチュード(革命 Op.10-12・別れの曲 Op.10-3 など):跳躍・和音・3度といった個別の技巧を切り出して鍛える。
  4. スケルツォ第2番(Op.31):10分前後の大曲を「構成を設計しながら」弾く経験を積む。
  5. バラード第3番 → 第1番 → 第2番 → 第4番:ここでようやくバラードの順番に入ります。

とくにバラード第1番のコーダは、「バラードの練習」だけで克服するのが難しい場所です。跳躍と和音連打はエチュードで、拍子感はスケルツォで、あらかじめ部品として仕上げておくと、バラードに入ったときの進み方がまったく違います。

大人の再開組がバラードにかける現実的な期間

バラードにかかる期間は、半年で発表会に乗せた人から、数年単位でじっくり向き合う人まで幅があります。42歳でピアノを再開した方が半年の練習で第1番を発表会で弾いた例がある一方、「まだ手を出せない」とプロを目指す人でも言う曲です。大切なのは期間の長短より、「冒頭を音楽的に弾く」「コーダをゆっくり確実に掴む」といった目標を小分けにして、毎日少しずつ積み上げることです。

忙しい大人がどう練習時間を作るかについては、大人がピアノを「難しい」と感じる本当の理由でも詳しく触れています。手の大きさで悩んでいる方は、ラフマニノフが難しい理由と手が小さくても弾けるかの記事も参考になるはずです。

ショパンのバラード難易度に関するよくある質問

Q. ショパンのバラードで一番弾きやすいのはどれですか?

A. 一般には第3番 変イ長調 Op.47とされます。明るく構成も見通しやすいため、バラード入門として選ばれることが多い作品です。ただしオクターブが多いので、手が小さい人は第2番のほうが現実的な場合もあります。

Q. バラード1番のコーダはどのくらい難しいですか?

A. 曲全体は上級ですが、終結部(コーダ)だけは超上級と言われるほど難易度が跳ね上がります。高速の跳躍と和音連打に加えて拍子感が問われるため、コーダを見据えた体力配分と重点練習が必須です。

Q. バラードとノクターンはどちらが難しいですか?

A. 総じてバラードの方が難しいです。ノクターンは中級から挑戦できる曲がありますが、バラードは4曲すべてが上級以上で、演奏時間も長く構成力・持久力が求められます。

Q. 手が小さくてもバラードは弾けますか?

A. 弾けます。ただし選曲が重要です。オクターブが多い第3番より、穏やかな部分が半分を占める第2番のほうが負担は少なめです。難所は左右の手の役割を入れ替えるなどの工夫で対応している演奏者も多くいます。

Q. 発表会で弾くならどのバラードがおすすめですか?

A. 演奏効果と完成のしやすさのバランスでは第3番、聴衆の反応を優先するなら第1番です。第1番を選ぶ場合は、コーダを本番テンポで安定して弾ける状態になってから曲全体を仕上げる順番をおすすめします。

まとめ:ショパン バラードの難易度と最初の一曲の選び方

この記事で取り上げた3つの疑問への答えをまとめます。

  • 一番弾きやすいのは?:一般には第3番。ただし手が小さい人・速い動きが得意な人は第2番が現実的なこともある。
  • 第1番はどこが難しい?:冒頭7小節の「音楽的な難しさ」と、最後のコーダの跳躍・和音連打・拍子感。優しいのは最初の2ページだけ。
  • 挑戦前に何を弾く?:ノクターン→幻想即興曲→エチュード→スケルツォ第2番の順で、歌う技術と個別の技巧を先に固める。

バラードは「弾けたら一人前」と言われるショパンの到達点です。楽譜出版社の難易度では4曲とも最上位ですが、順位の数字よりも、自分の手と得意分野に合った一曲を選ぶことのほうが、完成までの道のりを大きく左右します。ショパンのバラードの難易度を正しく知ったうえで、第3番→第1番→第2番→第4番の順を目安に、数年単位の計画でじっくり向き合ってみてください。