ショパンの難易度一覧を探している方の多くは、「いつか弾きたい曲」と「今の自分で弾ける曲」の距離を知りたいのではないでしょうか。ショパンのピアノ曲は200曲以上あり、ワルツの遺作とバラード第4番では別の楽器かと思うほど難しさが違います。
ところが、ネット上の難易度情報は記事ごとに基準がバラバラです。「子犬のワルツは初級」と書く記事もあれば「中級の壁」と書く記事もあり、華麗なる大円舞曲にいたっては★2から★4まで評価が割れています。そこでこの記事では、ヘンレ版(G. Henle Verlag)の9段階レベル、全音ピアノピースのA〜F、ピティナ・ピアノステップという公開されている3つの指標をひとつの表にそろえ、主要25曲を5段階でランキング化しました。さらに今回は、エチュード全24曲のヘンレ版レベル一覧と、ネットのランキングが食い違う理由を新たに加えています。
- ショパンの主要曲は、やさしい順に並べるとどうなる?エチュードはどれから?
- 「ノクターンは弾けたのにワルツは弾けない」のはなぜ?難易度は何で決まる?
- 大人からピアノを始めた人は、最初のショパンに何を選べばいい?
この記事は、ピアノを始めて1〜3年の大人の方、ブランクから再開した方、「次の1曲」を探している中級者の方に向けて書いています。各曲の攻略法は個別記事に譲り、ここでは全体の地図を示します。まずは結論の一覧表からどうぞ。
※本記事は一部PRを含みます
- 1 【結論】ショパン主要曲の難易度一覧表・ランキング(25曲)
- 2 ネットの難易度ランキングはなぜ食い違う?5つの記事を並べて分かったこと
- 3 ショパンの難易度はどう決まる?4つの要素で分解する
- 4 初級で弾けるショパン|入門〜初級(★1〜★2)の7曲
- 5 中級で弾けるショパン|子犬のワルツ・ノクターン2番・幻想即興曲(★3〜★4)
- 6 上級で弾けるショパン|バラード・スケルツォ・英雄ポロネーズ(★4〜★5)
- 7 ショパン エチュード全24曲の難易度ランキング|ヘンレ版と「現場の声」のズレ
- 8 大人から始めた人の「最初のショパン」の選び方|3つの判断基準
- 9 まとめ:ショパンの難易度一覧を地図にして、最初の1曲を決めよう
【結論】ショパン主要曲の難易度一覧表・ランキング(25曲)

ショパンの難易度ランキングを、やさしい順に25曲並べたのが下の表です。数字はヘンレ版が公式サイトで公開している1〜9のレベル(1〜3=やさしい、4〜6=中くらい、7〜9=難しい)を主軸に、全音ピアノピースのA〜F、ピティナ・ピアノステップを確認できた曲には併記しました。5段階の★は編集部がそろえ直したものです。
| 順位 | 曲名 | ジャンル | 5段階 | ヘンレ | 全音・PTNA | 経験年数の目安 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ワルツ第19番 イ短調(遺作) | ワルツ | ★1 入門 | 3 | 全音C | 1〜2年 | ワルツ難易度一覧 |
| 2 | 前奏曲第7番 イ長調 Op.28-7 | 前奏曲 | ★1 入門 | 4 | ― | 1〜2年 | ― |
| 3 | 前奏曲第4番 ホ短調 Op.28-4 | 前奏曲 | ★1 入門 | 4 | ― | 1〜2年 | ― |
| 4 | マズルカ ヘ長調 Op.68-3 | マズルカ | ★1 入門 | 4 | ― | 1〜2年 | ― |
| 5 | ワルツ第10番 ロ短調 Op.69-2 | ワルツ | ★1 入門 | 4 | ― | 2年前後 | ワルツ難易度一覧 |
| 6 | ノクターン第20番 嬰ハ短調(遺作) | ノクターン | ★2 初級 | 5 | ― | 2〜3年 | ノクターン難易度一覧 |
| 7 | ワルツ第9番 変イ長調 Op.69-1「別れのワルツ」 | ワルツ | ★2 初級 | 5 | ― | 2〜3年 | ワルツ難易度一覧 |
| 8 | マズルカ 変ロ長調 Op.7-1 | マズルカ | ★2 初級 | 5 | ― | 2〜3年 | ― |
| 9 | 前奏曲第15番「雨だれ」Op.28-15 | 前奏曲 | ★2 初級 | 5 | 全音E | 2〜3年 | ― |
| 10 | ポロネーズ第3番「軍隊」Op.40-1 | ポロネーズ | ★2 初級 | 5 | 全音E/PTNA発展4〜5 | 3年前後 | 英雄ポロネーズの難易度内で比較 |
| 11 | ノクターン第2番 変ホ長調 Op.9-2 | ノクターン | ★3 中級 | 6 | 全音D/PTNA発展1〜4 | 3〜4年 | ノクターン難易度一覧 |
| 12 | ワルツ第6番「子犬のワルツ」Op.64-1 | ワルツ | ★3 中級 | 6 | PTNA発展1〜2 | 3〜4年 | ワルツ難易度一覧 |
| 13 | ワルツ第7番 嬰ハ短調 Op.64-2 | ワルツ | ★3 中級 | 6 | 全音D | 3〜4年 | ワルツ難易度一覧 |
| 14 | ワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」Op.18 | ワルツ | ★3 中級 | 6 | 全音D | 4年前後 | ワルツ難易度一覧 |
| 15 | エチュード Op.25-1「エオリアンハープ」 | エチュード | ★3 中級 | 6 | ― | 4〜5年 | 本記事エチュード章 |
| 16 | 幻想即興曲 Op.66 | 即興曲 | ★4 上級 | 7 | 全音E/PTNA発展5 | 4〜6年 | 幻想即興曲の難易度 |
| 17 | ノクターン第13番 ハ短調 Op.48-1 | ノクターン | ★4 上級 | 7 | ― | 5年〜 | ノクターン難易度一覧 |
| 18 | エチュード Op.10-3「別れの曲」 | エチュード | ★4 上級 | 7 | 全音F | 5年〜 | 別れの曲の難易度 |
| 19 | スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31 | スケルツォ | ★4 上級 | 7 | ― | 6年〜 | ― |
| 20 | 子守歌 変ニ長調 Op.57 | 子守歌 | ★4 上級 | 7 | ― | 6年〜 | ― |
| 21 | エチュード Op.10-12「革命」 | エチュード | ★5 最上級 | 8 | 全音F | 7年〜 | 革命のエチュードの難易度 |
| 22 | ポロネーズ第6番「英雄」Op.53 | ポロネーズ | ★5 最上級 | 8 | 全音F | 8年〜 | 英雄ポロネーズの難易度 |
| 23 | バラード第1番 ト短調 Op.23 | バラード | ★5 最上級 | 8 | 全音F | 8年〜 | バラード難易度比較 |
| 24 | 舟歌 嬰ヘ長調 Op.60 | 舟歌 | ★5 最上級 | 8 | 全音F | 10年〜 | ― |
| 25 | ピアノソナタ第2番「葬送」Op.35(全楽章) | ソナタ | ★5 最上級 | 9 | ― | 10年〜 | ― |
出典:ヘンレ版レベルはG. Henle Verlag公式サイトの各作品ページ、全音の記号は全音楽譜出版社「全音ピアノピース」の難易度表記、PTNAはピティナ・ピアノ曲事典の「23ステップ」欄(いずれも確認日 2026年10月)。「経験年数の目安」は、週3〜4回・1回30分程度の練習を続けた大人を想定した編集部の推定で、個人差が大きい前提の数字です。
一覧表の見方|ヘンレ版・全音・PTNAは測っているものが違う
ショパンの難易度を示す3つの指標は、測っているものが少しずつ違います。ヘンレ版は楽譜出版社が「譜面どおりに弾き切る技術」を1〜9で示したもので、曲単位で公開されているためジャンルをまたいで比べやすい指標です。全音ピアノピースのA〜Fは、A・B=初級、C・D=中級、E=上級、F=上級上という区分。PTNAの「基礎・応用・発展・展開」は、ピティナ・ピアノステップで実際にその曲を弾く人のレベルなので、「発表会で弾くならこのくらい」という体感に近い指標です。
たとえば雨だれ前奏曲はヘンレ5・全音Eと評価が割れます。ヘンレ版は「音数が少なく技術は中くらい」、全音は「5分の曲を歌わせる表現力」まで含めて上級、と読めます。評価が割れる曲は「弾けるけれど聴かせるのは難しい曲」です。なお表に入れなかったエチュード Op.10-1、Op.25-6、Op.25-10、Op.25-11「木枯らし」、バラード第4番はいずれもヘンレ9で、最上級の中にもさらに段差があります(エチュードは後半の章で24曲すべてを並べます)。
「弾けるまでの年数×曲の長さ」マトリクス|発表会で選ぶならどこか

難易度に曲の長さを掛け合わせると、選曲のヒントがはっきり見えます。編集部は25曲を4つのゾーンに分けました(演奏時間はピティナ・ピアノ曲事典の総演奏時間欄を参考)。
- A:短くてやさしい(ヘンレ3〜5・3分以内):前奏曲第7番(約1分)、前奏曲第4番、マズルカ Op.68-3、ワルツ遺作イ短調。譜読みが2〜3週間で終わるので、「最初のショパン」はここから選ぶのが編集部のおすすめです。
- B:長くてやさしい(ヘンレ5〜6・4分以上):雨だれ前奏曲(約5分)、軍隊ポロネーズ、華麗なる大円舞曲。技術より集中力と暗譜の体力が問われる、大人の発表会向きのゾーンです。
- C:短くて難しい(ヘンレ6〜9・4分以内):子犬のワルツ(約2分)、革命、別れの曲、木枯らし。短いぶん1か所のミスが目立ちます。
- D:長くて難しい(ヘンレ8〜9・6分以上):英雄ポロネーズ(約7分30秒)、バラード第1番、舟歌、ソナタ第2番。年単位の計画が必要です。
ネットの難易度ランキングはなぜ食い違う?5つの記事を並べて分かったこと

ショパンの難易度ランキングを検索すると、同じ曲なのに記事によって初級だったり上級だったりします。編集部が今回、ピアノ教室・楽譜サイト・個人ブログなど5つのランキング記事を並べて確認したところ、評価が割れるのは「速い曲」と「長い曲」、割れないのは「短くて静かな曲」と「最難関の曲」という傾向がはっきり出ました。記事ごとに何を測っているかが違うだけで、どの記事も間違っているわけではありません。
評価が割れる曲・割れない曲の一覧表
下の表は、各記事の段階表記(★や☆、初級/中級/上級)をそのまま並べたものです。表記は記事ごとに異なるため、横に並べて「どれくらいばらつくか」を見るための表として読んでください。
| 曲名 | ヘンレ版 | ピアノ教室系A(5段階) | 楽譜サイトB(☆5段階) | VRピアノ系C(順位) | 本記事(★5段階) | 割れ方 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ワルツ第19番 イ短調(遺作) | 3 | ―(記載なし) | ☆1 | 初心者ランキング1位 | ★1 | 割れない |
| 前奏曲第7番 | 4 | ★1 | ― | 初心者ランキング4位 | ★1 | 割れない |
| ノクターン第20番(遺作) | 5 | ★1 | ― | 初心者ランキング7位 | ★2 | ほぼ一致 |
| ノクターン第2番 Op.9-2 | 6 | ★1 | ― | ― | ★3 | 大きく割れる |
| 子犬のワルツ Op.64-1 | 6 | ★2 | ☆2 | 初心者ランキング8位 | ★3 | 割れる |
| 華麗なる大円舞曲 Op.18 | 6 | ★2 | ☆4 | 初心者ランキング10位 | ★3 | 大きく割れる |
| 雨だれ前奏曲 | 5 | ★1 | ― | 上級ランキング9位 | ★2 | 大きく割れる |
| 別れの曲 Op.10-3 | 7 | ★3 | ― | ― | ★4 | 割れる |
| 革命 Op.10-12 | 8 | ★3 | ― | 上級ランキング5位 | ★5 | 割れる |
| 幻想即興曲 | 7 | ★3 | ― | 上級ランキング10位 | ★4 | ほぼ一致 |
| 英雄ポロネーズ | 8 | ★5 | ― | 上級ランキング8位 | ★5 | 割れない |
| バラード第4番 | 9 | ― | ☆5(バラード内最難) | 上級ランキング2位 | 表外(最上級) | 割れない |
参照した記事:ピアノ教室系A=pia-note「ショパンピアノ曲の難易度一覧表」、楽譜サイトB=shirokuroneko(ワルツ全19曲/バラード4曲の記事)、VRピアノ系C=vrpiano「ショパン難易度ランキング」。いずれも執筆者が「独断」「体感」と断っている主観的な目安で、本記事もそれを尊重して並べています(確認日 2026年10月)。
割れる理由①:「弾ける」と「仕上がる」のどちらを測っているか
ノクターン第2番が★1〜★3まで割れる最大の理由は、「音が並ぶ」ことを弾けたと見なすか、「ノクターンらしく歌える」ことを弾けたと見なすかの違いです。ノクターン第2番は左手の伴奏が規則的で、右手のメロディも最初はゆっくり。ここだけ見れば初級です。ところが、くり返しのたびに増えていく装飾音(メロディを飾る細かい音)を拍の中に収め、ルバート(テンポを揺らす表現)で歌おうとすると、途端に中級後半の課題になります。ピティナ・ピアノステップの「発展1〜4」という幅広い記載が、まさにこの二面性を表しています。
同じことが雨だれ前奏曲にも言えます。ヘンレ5で「初級」と書く記事と、「上級ランキング9位」に入れる記事があるのは、左手の同じ音の連打を5分間単調にしないという「表現の難しさ」を数えるかどうかの違いです。
割れる理由②:テンポをどこまで求めるか
子犬のワルツと華麗なる大円舞曲は、「テンポを落とせば初級、本来の速さなら中級〜上級」という曲です。VRピアノ系の記事でも、子犬のワルツは「テンポを落とせば初心者でも可能」としたうえで初心者ランキングの後半に置いています。一方で、ワルツ全19曲を自分で弾いて並べた楽譜サイトの筆者は、華麗なる大円舞曲を「最後までテンポを保って弾き切るのが大変だった」として☆4に置いています。5分間、同音連打を含む速いワルツを一定のテンポで走り切る体力まで数えると、華麗なる大円舞曲は中級の上に来るのです。
割れない曲は「数字と体感が一致している」曲
逆に、ワルツ第19番イ短調(遺作)、前奏曲第7番、英雄ポロネーズ、バラード第4番はどの記事でも位置が変わりません。短くて静かな曲は「弾ける=仕上がる」の差が小さく、最難関の曲は誰が測っても最難関だからです。ランキングを見るときは、「割れない曲」を基準点にして、自分の位置を測るのが一番確実です。ワルツ遺作が弾けて、英雄ポロネーズはまだ遠い。その間のどこに自分がいるかを、次の章の「4つの要素」で測ってみてください。
ショパンの難易度はどう決まる?4つの要素で分解する

ショパンの難易度は、テンポ(速さ)、跳躍、左手のアルペジオ、表現という4つの要素の足し算で決まります。ヘンレ版も全音も最終的な数字しか示さないので、「自分はどの要素が苦手か」を知っておくと、同じ★3でも弾ける曲と弾けない曲を見分けられます。前の章でランキングが割れた曲は、どれもこの4要素のうち「どれを重く数えるか」で位置が動く曲でした。
テンポと跳躍|子犬のワルツとエチュードが難しい理由
テンポの速さは、難易度を最も分かりやすく押し上げる要素です。子犬のワルツは約2分の曲ですが、右手が16分音符で回り続け、1音抜けると「犬が転んだ」ように聞こえます。革命のエチュードは左手が最初から最後まで速いパッセージ(音の連なり)を走り続けます。速い曲の難しさは「弾けるテンポ」と「曲として成立するテンポ」の差にあるので、本来の速さで弾き切れる見込みがあるかで判断してください。
跳躍(手を大きく移動させること)は、楽譜を見ただけでは伝わりにくい要素です。ワルツの左手は「ブン・チャッ・チャッ」の3拍子で、1拍目の低音から2・3拍目の和音へ手を飛ばし続けます。ノクターン第2番は弾けたのにワルツ Op.64-2 が弾けない人は、速さではなく跳躍の精度でつまずいている可能性が高いです。
左手アルペジオと表現|数字に出ない難しさ
左手のアルペジオ(和音の音を1つずつ順番に弾く伴奏)はノクターンの難しさの中心で、広い音域を上下しながらペダルで濁らせない繊細さが要ります。表現、つまりテンポを揺らすルバートや、1本の右手でメロディと内声(内側のパート)を弾き分ける技術は、ヘンレ版の数字に最も反映されにくい要素です。ノクターン第20番はヘンレ5ですが、音を並べただけでは驚くほど退屈に聞こえます。編集部は、表現の難しさは「弾けるようになってから長く付き合えるか」の指標だと考えています。ショパンの作風や生涯を知ると表現の手がかりが増えますので、ショパンの生涯と代表曲もあわせてどうぞ。
ジャンル別「難しさの質」比較表
4要素のどこに負荷がかかるかはジャンルごとに違います(◎=主な難しさ、○=ある程度、△=比較的軽い)。
| ジャンル | テンポ | 跳躍 | 左手アルペジオ | 表現 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|
| ワルツ | ○ | ◎ | △ | ○ | リズムに乗るのが好き・手を飛ばすのが苦でない人 |
| ノクターン | △ | ○ | ◎ | ◎ | 歌うように弾きたい・ペダルを丁寧に使える人 |
| マズルカ | △ | ○ | △ | ◎ | 3拍子の訛り(アクセントのずれ)を楽しめる人 |
| 前奏曲 | 曲による | 曲による | ○ | ○ | 短い曲で完成度を上げたい人 |
| エチュード | ◎ | ◎ | ○ | ○ | 基礎練習の延長で名曲を弾きたい人 |
| ポロネーズ | ○ | ◎ | △ | ○ | 和音・オクターブに力負けしない人 |
| バラード・スケルツォ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 10分前後の大曲を年単位で育てられる人 |
「速いのは苦手だけれど歌うのは好き」という人なら、同じ★3でも子犬のワルツよりノクターン第2番のほうが早く形になります。ジャンル選びは、曲の人気より自分の得意な要素から決めるのが近道です。
初級で弾けるショパン|入門〜初級(★1〜★2)の7曲

初級で弾けるショパンは、ワルツ第19番イ短調(遺作)、前奏曲第7番・第4番、マズルカ Op.68-3、ワルツ Op.69-2、ノクターン第20番(遺作)、別れのワルツ Op.69-1の7曲です。ヘンレ版で3〜5、ブルグミュラー25の練習曲の後半からソナチネアルバム程度の人が取り組めます。「ショパンは上級者の作曲家」というイメージがある方ほど、この7曲を知っていただきたいです。ショパン以外も含めて弾きやすい曲を探している方は、ピアノ簡単な曲まとめもあわせてどうぞ。なお、この7曲は前の章の比較表で「割れない曲」に入るものがほとんどで、どの記事でも初級に置かれている安心感があります。
ワルツ第19番イ短調(遺作)|ショパンで最初に弾く1曲
ワルツ第19番イ短調は、ショパン全作品の中でヘンレ版レベルが「3」と最も低く、編集部が最初のショパンとして最も強くおすすめする曲です。今回比較した5つの記事のうち、ワルツを扱う3記事すべてがこの曲を最もやさしい位置に置いていました。死後に発見された2分ほどの小品で、左手は基本的なワルツの伴奏形、右手のメロディも1オクターブ程度に収まります。短調の静かな曲ですが中間部に明るいハ長調の部分があり、「同じ曲の中で表情が変わる」ショパンらしさを初級のうちに体験できます。つまずきどころは右手が駆け上がるアルペジオ1小節だけ。他の遺作ワルツとの比較はショパン ワルツ難易度一覧【全19曲】で入門〜上級に分けて解説しています。
▶ 演奏を聴く:ワルツ第19番 イ短調(遺作)
前奏曲第7番・第4番とマズルカ Op.68-3|1ページで終わる名曲
前奏曲第7番イ長調は、太田胃散のCMで知られる約1分の曲で、ヘンレ版「4」。わずか16小節で譜読みは1週間で終わりますが、和音をそろえて鳴らす、フレーズの終わりを柔らかく収めるという基礎が丸見えになります。最後に出てくる広い音域の和音は、手が小さい人はアルペジオ(分散)にして弾いても構いません。前奏曲第4番ホ短調も「4」で、右手はほとんど2つの音を行き来し、左手の和音が少しずつずれていく構造。ショパン自身の葬儀でも演奏されたと伝えられています。マズルカ Op.68-3 ヘ長調は、2拍目や3拍目にアクセントが来るポーランド舞曲の独特のリズムを体で覚えられる「4」の曲で、付点のリズムと6度の重音(2つの音を同時に弾くこと)をなめらかに弾けるかがポイントです。3曲とも「短くてやさしい」ゾーンの代表で、発表会の持ち時間が短い大人の方にぴったりです。
▶ 演奏を聴く:前奏曲第7番 イ長調 Op.28-7
▶ 演奏を聴く:前奏曲第4番 ホ短調 Op.28-4
▶ 演奏を聴く:マズルカ ヘ長調 Op.68-3
ノクターン第20番(遺作)と別れのワルツ|初級の卒業試験
ノクターン第20番嬰ハ短調(遺作)はヘンレ版「5」、映画『戦場のピアニスト』で広く知られる曲です。メロディ自体は弾きやすく左手も規則的ですが、後半の細かい装飾音と、3連符と8分音符を合わせる場面で一気に難しくなります。「弾ける」と「聴かせられる」の差が最も大きい初級曲で、編集部は初級の卒業試験と位置づけています。ワルツ第9番 Op.69-1「別れのワルツ」も「5」で、同じメロディが装飾を変えて戻ってくるたびに表情を変えられるかが問われます。ノクターン全21曲の中での位置づけはショパン ノクターン難易度一覧で確認してみてください。
▶ 演奏を聴く:ノクターン第20番 嬰ハ短調(遺作)
▶ 演奏を聴く:ワルツ第9番「別れのワルツ」Op.69-1
▶ 演奏を聴く:ワルツ第10番 ロ短調 Op.69-2
▶ 演奏を聴く:マズルカ 変ロ長調 Op.7-1
▶ 演奏を聴く:前奏曲第15番「雨だれ」Op.28-15
中級で弾けるショパン|子犬のワルツ・ノクターン2番・幻想即興曲(★3〜★4)

中級で弾けるショパンの代表は、ノクターン第2番、子犬のワルツ、ワルツ Op.64-2、華麗なる大円舞曲、エチュード Op.25-1、そして上級の入口にあたる幻想即興曲です。ヘンレ版で6〜7、ソナタアルバムやツェルニー40番の後半で取り組む人が多い層で、「ショパンといえばこの曲」という人気曲が集中しています。同時に、ネットのランキングで最も評価が割れる曲が集中している層でもあります。
子犬のワルツ Op.64-1|難しさの正体は「速さ」より「軽さ」
子犬のワルツの難易度は、ヘンレ版「6」、ピティナ・ピアノステップ「発展1〜2」です。ジョルジュ・サンドの飼い犬がしっぽを追いかけて回る様子を描いたとされ、「1分間のワルツ(Minute Waltz)」の愛称は「小さな」の意味だと言われています。止まってしまう人の多くは、テンポを上げる段階で右手が「重く」なり、音が団子状になります。編集部の判断基準は、「速さより軽さ」を優先できる人は中級前半でも手を出してよい、「速さ」を追いかけてしまう人はノクターン第2番を先に、というものです。
▶ 演奏を聴く:ワルツ第6番「子犬のワルツ」Op.64-1
▶ 演奏を聴く:ワルツ第7番 嬰ハ短調 Op.64-2
ノクターン第2番 Op.9-2|装飾音とルバートを学ぶ定番
ノクターン第2番の難易度は、全音「D(中級後半)」、ヘンレ版「6」、ピティナ・ピアノステップ「発展1〜4」。左手のアルペジオに乗って右手が歌い、繰り返されるたびに装飾音が増えていきます。子犬のワルツと同じ★3でも難しさの質はまったく違い、速さの代わりに、左手の跳躍を濁らせないこと、装飾音を拍に収めること、ルバートで歌うことが求められます。「ゆっくりな曲だから簡単」と始めると、音は並んでいるのにノクターンに聞こえない壁にぶつかります。攻略ポイントはノクターン第2番の難易度と練習ポイントに。
▶ 演奏を聴く:ノクターン第2番 変ホ長調 Op.9-2
幻想即興曲・華麗なる大円舞曲・エオリアンハープ|中級から上級への橋
幻想即興曲 Op.66 の難易度は、全音「E」、ヘンレ版「7」、ピティナ・ピアノステップ「発展5」で、編集部の5段階では中級と上級の境目の★4です。右手4音・左手3音を同じ時間で弾く「4対3」が最初の壁ですが、本当に難しいのは速いテンポで最後まで崩れない持久力です。必要な練習期間は幻想即興曲の難易度と年数の目安でスタートレベル別に整理しています。
華麗なる大円舞曲 Op.18 はヘンレ「6」・全音「D」で、5分前後の長さと同音連打が難所。前の章で触れたとおり、ネット上では★2〜☆4まで評価が割れる曲で、編集部は「発表会で本来のテンポで弾き切る」前提で★3(中級の上)に置いています。エチュード Op.25-1「エオリアンハープ」はヘンレ「6」で、エチュード27曲の中で最も取り組みやすく、右手の広いアルペジオからメロディを浮かび上がらせる練習になるため、将来バラードを弾きたい人の準備曲として編集部はおすすめしています。
▶ 演奏を聴く:幻想即興曲 Op.66
▶ 演奏を聴く:ワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」Op.18
▶ 演奏を聴く:エチュード Op.25-1「エオリアンハープ」
▶ 演奏を聴く:ノクターン第13番 ハ短調 Op.48-1
▶ 演奏を聴く:子守歌 変ニ長調 Op.57
\「弾きたい1曲」を最短で仕上げたい方へ/
上級で弾けるショパン|バラード・スケルツォ・英雄ポロネーズ(★4〜★5)

上級で弾けるショパンは、バラード第1番、スケルツォ第2番、英雄ポロネーズ、舟歌、ピアノソナタ第2番など、ヘンレ版7〜9の曲です。ここから先は「弾ける人の数」が一気に減ります。エチュードはこの次の章で24曲まとめて扱うため、この章では大曲(8分以上の曲)を中心に、取り組む順番を解説します。
バラード・スケルツォ|10分の物語を支える体力と「弾く順番」
バラードは第1〜3番がヘンレ「8」、第4番が「9」。スケルツォは第2番が「7」、第1・3・4番が「8」です。どちらも8〜12分の大曲で、静かな場面と嵐の場面が切り替わりながら、最後のコーダ(終結部)に向かって難しさが積み上がります。バラード第1番は冒頭2ページが比較的やさしいため「弾けそう」と感じる人が多いのですが、コーダは別次元です。
バラード4曲の「弾く順番」については、面白いことにヘンレ版と演奏者の体感が少しずれます。ヘンレ版は第1〜3番を同じ「8」と評価しますが、4曲すべてを自分で弾いた楽譜サイトの筆者は、第2番(☆1)→第3番(☆2)→第1番(☆3)→第4番(☆5)の順に並べています。第2番は静かな前半が長く、難所が「Presto con fuoco」の嵐の部分に集中しているため、最初の1曲として勧められていました。第4番だけはどの資料でも別格で、「ツェルニー50番レベル、少なくとも40番の終盤が必要」「大部分の人は小学生のうちには弾けない」という位置づけです。取り組みやすい順はショパン バラード難易度|1番〜4番を比較で解説しています。大曲デビューなら、バラード第1番より一段やさしいスケルツォ第2番から入ることを編集部はおすすめします。
▶ 演奏を聴く:バラード第1番 ト短調 Op.23
▶ 演奏を聴く:スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
英雄ポロネーズ・舟歌・ソナタ|ショパンの頂点
英雄ポロネーズ Op.53 は全音「F」・ヘンレ「8」・約7分30秒。オクターブ(8度離れた2音を同時に弾く)の連続と、中間部で左手が16分音符のオクターブを刻み続ける場面が最大の難所です。英雄ポロネーズの難易度と練習ステップでは軍隊ポロネーズ(ヘンレ5)からの「ポロネーズの階段」を紹介しています。舟歌 Op.60 はヘンレ「8」・全音「F」で、12/8拍子の揺れる伴奏の上に複数の声部が重なる晩年の書法が詰まった曲。ピアノソナタ第2番「葬送」Op.35 は全楽章でヘンレ「9」、第3楽章の葬送行進曲だけなら中級でも手が届きますが、通して弾くのは音大レベルです。
もうひとつ、ネットの上級ランキングで英雄ポロネーズやバラード第4番より上に置かれることがあるのが「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22」です。15分近い大型作品で、技巧に加えて構成の理解と体力が必要とされます。リストのラ・カンパネラの難易度と比べられる領域ですが、ショパンの最上級曲は指の速さより「構成を保つ集中力」で勝負が決まります。
▶ 演奏を聴く:ポロネーズ第6番「英雄」Op.53
▶ 演奏を聴く:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
▶ 演奏を聴く:ピアノソナタ第2番「葬送」Op.35(全楽章)
▶ 演奏を聴く:ポロネーズ第3番「軍隊」Op.40-1
ショパン エチュード全24曲の難易度ランキング|ヘンレ版と「現場の声」のズレ

ショパンのエチュード(練習曲集 Op.10・Op.25の全24曲)の難易度は、ヘンレ版で最も低い曲が「6」(Op.10-9、Op.25-1)、最も高い曲が「9」(Op.10-1、Op.25-6、Op.25-10、Op.25-11「木枯らし」)です。つまり一番やさしいエチュードでも子犬のワルツと同じレベルで、24曲のうち12曲がヘンレ8以上。「ショパンのエチュードに簡単な曲はない」と言われる理由がここにあります。
ただし、この章で強調したいのは、ヘンレ版の数字と「実際に弾いた人の体感」が、エチュードではかなりずれるということです。編集部は今回、Yahoo!知恵袋で24曲を段階分けしたベストアンサー、現役ピアノ講師がYouTubeで公開した24曲の格付け、2025年のショパンコンクール予備予選の課題曲をもとにした難曲5選という3つの「現場の声」を、ヘンレ版の数字と並べてみました。
エチュード24曲の難易度一覧表(ヘンレ版×現場の声)
| 曲 | 通称 | ヘンレ | 何のエチュードか | 知恵袋BA | 講師の格付け | 本記事の位置づけ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Op.25-1 | エオリアンハープ | 6 | 右手の広いアルペジオ | 上級下 | 初級(22位) | 最初のエチュード候補① |
| Op.10-9 | ― | 6 | 左手の広い伴奏形 | 上級中 | 初級(23位) | 最初のエチュード候補② |
| Op.25-2 | ― | 7 | 右手3連符の流れ | 上級下 | 初級(24位) | 最初のエチュード候補③ |
| Op.10-6 | ― | 7 | ゆっくり・内声の歌い分け | 中級上(壁) | 初級(19位) | 大人の狙い目(調号が多い) |
| Op.25-7 | ― | 7 | 左手のチェロのような旋律 | 中級上(壁) | 初級(20位) | ノクターン好き向け |
| Op.10-3 | 別れの曲 | 7 | 旋律+中間部の重音 | 上級中 | 中級(13位) | 中間部で判断 |
| Op.10-5 | 黒鍵 | 7 | 黒鍵上の速いパッセージ | 上級中 | 中級(14位) | 速さ以外は意外と素直 |
| Op.10-7 | ― | 7 | 右手の連打・重音 | 上級中 | 初級(17位) | 連打が得意なら |
| Op.10-11 | ― | 7 | 両手の広いアルペジオ和音 | 上級中 | 中級(16位) | 手の大きさで体感が変わる |
| Op.25-3 | ― | 7 | 両手のリズムの組み合わせ | 上級中 | 初級(21位) | ― |
| Op.25-9 | 蝶々 | 7 | オクターブ・軽い跳躍 | 上級中 | 中級(7位) | 最短のエチュード |
| Op.25-12 | 大洋 | 8 | 両手の大きなアルペジオ | 上級中 | 初級(18位) | Op.10-1より弾きやすいとの声 |
| Op.10-4 | ― | 8 | 高速の両手パッセージ | 上級の上 | 中級(15位) | 速さが全て |
| Op.10-8 | ― | 8 | 右手の広い分散和音 | 上級の上 | 中級(12位) | 音域移動が激しい |
| Op.10-12 | 革命 | 8 | 左手の速いパッセージ | 上級中 | 中級(11位) | 左手のエチュード |
| Op.25-4 | ― | 8 | 左手の跳躍スタッカート | 上級中 | 中級(8位) | 跳躍が苦手なら後回し |
| Op.25-5 | ― | 8 | 装飾音・手の開き | 上級中 | 中級(10位) | ― |
| Op.25-8 | ― | 8 | 6度の重音 | 上級の上 | 上級(4位) | 手首の柔らかさ |
| Op.10-10 | ― | 7 | 6度の分散+アーティキュレーション | 上級の上 | 上級(5位) | 予備予選「難曲5選」5位 |
| Op.10-2 | ― | 8 | 3・4・5指の半音階 | 最難関 | 最上級(2位) | 数字以上に難しい |
| Op.10-1 | ― | 9 | 右手の広いアルペジオ | 上級中 | 中級(9位) | 数字より弾きやすいとの声 |
| Op.25-10 | オクターブ | 9 | 全編オクターブ | 上級の上 | 上級(6位) | 体力勝負 |
| Op.25-11 | 木枯らし | 9 | 右手の高速パッセージ | 最難関 | 最上級(3位) | 予備予選「難曲5選」3位 |
| Op.25-6 | 三度 | 9 | 3度の重音の速い音階 | 最難関 | 最上級(1位) | 全資料で最難関 |
※「知恵袋BA」はYahoo!知恵袋の質問「ショパンのエチュード全24曲を難易度順に」へのベストアンサーの段階分け(最難関/上級の上/上級中/上級下/中級上)。「講師の格付け」はピアノ講師ドレミさんがYouTubeで公開した24曲の格付けランキングの順位(1位が最難)で、ご本人も「得意不得意が関与している」と断っています。いずれも主観的な目安として併記しています(確認日 2026年10月)。
数字と体感がずれる3曲|Op.10-2・Op.10-1・Op.25-12
エチュードの難易度で最も意見が割れるのが、Op.10-2 イ短調です。ヘンレ版は「8」で最上級ではありませんが、知恵袋のベストアンサーは「最難関」、講師の格付けは「2位」、ショパンコンクール予備予選の難曲5選でも「隠れ最難関」として2位に挙げられています。右手の3・4・5指(弱い指)だけで黒鍵の上を速い半音階で滑らせながら、同じ手の1・2指で和音を打つという、他のどの曲にもない指づかいのせいです。ピティナの調査でも、Op.10の12曲の中で「最も難しい」と答えた人が最多だったと紹介されています。2025年のショパンコンクールの予備予選では、日本人出場者23名のうちこの曲を選んだのは亀井聖矢さん1人だけでした。「地味に聞こえるのに、弾ける人がほとんどいない曲」の代表です。
逆に、ヘンレ「9」のOp.10-1 ハ長調は、現場の声では意外に「弾きやすい」側に置かれます。講師の格付けでは24曲中9位(中級)、知恵袋でも「上級中」。右手の広いアルペジオが4分間続く曲で、手が大きくアルペジオが得意な人には型がはまりやすく、アルペジオが苦手な人には地獄、と体感が二極化する曲です。Op.25-12「大洋」も同じタイプで、「Op.10-1よりは弾きやすい」という意見が目立ちます。
もうひとつ押さえておきたいのが、Op.10-3「別れの曲」です。全音「F」・ヘンレ「7」ですが、知恵袋では「上級中」、講師の格付けでは13位と中位です。冒頭の有名なメロディだけなら中級でも弾けるため、「意外と弾ける」と「中間部が無理」の両方の声があります。編集部は「別れの曲は冒頭で判断せず、中間部の重音(2つ以上の音を同時に弾く)の連続を先に見てから決める」ことをおすすめします。詳しくは別れの曲の難易度は全音Fを。左手が主役の革命のエチュードの難易度はヘンレ「8」で、跳躍が少ないぶん持久力で勝負できるタイプです。
▶ 演奏を聴く:エチュード Op.10-3「別れの曲」
▶ 演奏を聴く:エチュード Op.10-12「革命」
全資料が一致する最難関|Op.25-6「三度」とOp.25-11「木枯らし」
Op.25-6 嬰ト短調は、ヘンレ9・知恵袋「最難関」・講師の格付け1位・予備予選の難曲5選でも1位と、今回確認したすべての資料で最難関でした。3度の重音(ドとミのように3度離れた2音を同時に弾く)の速い音階が休みなく続き、しかも3・4・5指を酷使します。講師の方は「一生ちゃんと弾ける気がしない」「学生時代は課題に出ないよう祈っていた」と語っており、予備予選の記事では「大半の人は最初の1小節すら弾けない」という見方が紹介されていました。
Op.25-11「木枯らし」も、ヘンレ9・知恵袋「最難関」・格付け3位・難曲5選3位と、評価がそろっています。右手が嵐のような高速パッセージを4分間走り続け、しかも旋律は左手にあるため、速い右手の中で左手を歌わせる技術が要ります。2025年の予備予選では日本人出場者8名が選んだ曲で、「弾けると目立つ曲」でもあります。Op.25-10「オクターブ」はヘンレ9ですが、知恵袋では「上級の上」、格付けでは6位と、最難関の一歩手前。全編フォルテッシモのオクターブ連打で、「コンサートピアニストでも敬遠する体力勝負」と言われる曲です。
最初のエチュードはどれ?|編集部のおすすめ3曲と順番
最初のショパンのエチュードには、Op.25-1「エオリアンハープ」→Op.10-9→Op.25-2の順をおすすめします。3曲ともヘンレ6〜7で、講師の格付けでも最もやさしい側の3曲、知恵袋でも「上級下」に置かれていて、資料間のズレが小さいからです。エオリアンハープは右手の広いアルペジオからメロディを浮かび上がらせる曲で、将来バラードを弾くための準備になります。Op.10-9は左手の広い伴奏形を身につける曲で、ノクターンの左手が苦手な人の特効薬。Op.25-2は右手の3連符を流れるように弾く曲で、「ひたすら右手のリズム練習」で形になります。
ゆっくりの曲から入りたい人には、Op.10-6(変ホ短調)とOp.25-7(嬰ハ短調)があります。どちらもヘンレ7ですが、速さの要素がないため、ノクターンが得意な人にはエオリアンハープより早く仕上がることがあります。ただし、Op.10-6は調号(♭6つ)が多く譜読みに時間がかかり、Op.25-7は左手の長い旋律を歌わせる「ノクターンのようなエチュード」で、表現の難しさが乗ります。知恵袋のベストアンサーがこの2曲を「上級の壁(中級上)」と、やさしいけれど油断できない位置に置いているのはそのためです。
大人から始めた人の「最初のショパン」の選び方|3つの判断基準

大人からピアノを始めた人の最初のショパンは、「今弾いている教材」「苦手な要素」「仕上げまでの期限」の3つで決めるのが編集部の結論です。人気や憧れだけで選ぶと、譜読みはできても仕上がらない期間が長くなり、そこで止まってしまいます。
判断基準①:今の教材を「ヘンレ版レベル+1」に対応させる
目安として、ブルグミュラー25の練習曲の後半なら「3〜4」、ソナチネアルバムなら「4〜5」、ソナタアルバムやツェルニー40番の後半なら「6」、ショパンのエチュードを1曲仕上げた人なら「7」以上に手が届きます。大切なのは目標曲を「今のレベル+1」までに抑えることです。ソナチネを弾いている人が子犬のワルツ(6)を選ぶのは「+2」で、譜読みに半年以上かかる可能性があります。まずワルツ遺作イ短調(3)や前奏曲第7番(4)を1か月で仕上げて「ショパンを1曲弾いた」実績を作るほうが、結果的に早く子犬のワルツにたどり着けます。今の自分がソナチネのどのあたりにいるかはソナチネ難易度順で確認できます。
| 今の教材 | ヘンレ版の目安 | 「+1」で選べるショパン |
|---|---|---|
| ブルグミュラー25 後半 | 3〜4 | ワルツ第19番遺作、前奏曲第7番・第4番、マズルカ Op.68-3 |
| ソナチネアルバム | 4〜5 | ノクターン第20番遺作、別れのワルツ、雨だれ、軍隊ポロネーズ |
| ソナタアルバム/ツェルニー40番 後半 | 6 | ノクターン第2番、子犬のワルツ、Op.64-2、エオリアンハープ |
| ショパンのエチュード1曲仕上げ済み | 7〜 | 幻想即興曲、別れの曲、黒鍵、スケルツォ第2番 |
判断基準②:4要素のうち苦手なものを避ける
速い曲で指がもつれやすい人は、同じ★3でも子犬のワルツではなくノクターン第2番を。手が小さく跳躍が苦手な人は、ワルツより前奏曲やマズルカのほうが早く仕上がります。編集部のおすすめは、同じ難易度帯でジャンルの違う2曲を候補に出し、楽譜の最初の1ページを弾き比べてから決める方法です。エチュードを選ぶときも同じで、アルペジオが得意ならエオリアンハープ、ゆっくり歌うのが得意ならOp.25-7、と「自分の得意な要素のエチュード」から入ると挫折しにくくなります。「どこが苦手かも分からない」という方は、大人のピアノ独学は何から始める?60日で1曲弾ける練習の順番で、曲に入る前の練習の順番を確認してみてください。
判断基準③:期限から逆算する|年数別ロードマップ
編集部が想定する大人のロードマップは次のとおりです(週3〜4回・1回30分程度の練習を続けた場合の目安)。
- 1〜2年目(ヘンレ3〜4):ワルツ遺作イ短調、前奏曲第7番・第4番、マズルカ Op.68-3 のうち2曲
- 2〜3年目(ヘンレ5):ノクターン第20番(遺作)、別れのワルツ、雨だれ前奏曲、軍隊ポロネーズのうち1〜2曲
- 3〜4年目(ヘンレ6):ノクターン第2番 → 子犬のワルツ(または Op.64-2)→ エオリアンハープ
- 4〜6年目(ヘンレ7):幻想即興曲、別れの曲、黒鍵、スケルツォ第2番
- 6年目以降(ヘンレ8):革命、バラード第3番 → 英雄ポロネーズ、バラード第1番
- 10年目以降(ヘンレ9):Op.10-1、木枯らし、バラード第4番、ソナタ第2番
ブランクがある再開組の方は、子どものころ到達したレベルの1〜2段下から始めると、半年ほどで元の位置まで戻れることが多いです。ブランク別の戻し方は大人のピアノ再開 ブランク別ガイドにまとめています。
独学で止まりやすい場所と、教室に切り替える目安
ショパンを独学で進めると、止まりやすいのは「譜読みは終わったのに仕上がらない」段階です。装飾音、ルバート、ペダルの踏み替えは楽譜に書かれていない情報が多く、自分の演奏を客観的に聴くのが難しいからです。前の章で見たとおり、ネットのランキングが割れる曲(ノクターン第2番・雨だれ・華麗なる大円舞曲)は、まさにこの「仕上げ」の難しさで評価が動く曲なので、独学で止まりやすい曲でもあります。同じ曲を3か月以上「あと少し」のまま弾き続けているなら、それが教室に切り替える目安だと編集部は考えています。伸び悩みのサインはピアノ独学の限界はどこ?伸び悩む7つのサインで解説しています。月2回のレッスンで「この曲のこの小節」だけを見てもらう使い方でも、担当制のマンツーマンなら「仕上げ」に集中できます。
\最初のショパンを先生と一緒に選びたい方へ/
まとめ:ショパンの難易度一覧を地図にして、最初の1曲を決めよう
この記事では、ショパンの主要25曲をヘンレ版・全音・PTNAの3つの指標でそろえ、5段階のランキングと「難易度×曲の長さ」のマトリクスで整理しました。さらに、ネットのランキングが食い違う理由と、エチュード全24曲のヘンレ版レベルを「現場の声」と並べて解説しました。冒頭の3つの疑問への答えは次のとおりです。
- やさしい順は?:ワルツ遺作イ短調(ヘンレ3)→前奏曲第7番・第4番(4)→ノクターン遺作・雨だれ(5)→ノクターン第2番・子犬のワルツ(6)→幻想即興曲・別れの曲(7)→革命・英雄・バラード第1番(8)→ソナタ第2番(9)。エチュードはエオリアンハープ・Op.10-9(6)から入り、Op.25-6「三度」が全資料で最難関
- 難易度は何で決まる?:テンポ・跳躍・左手アルペジオ・表現の4要素の足し算。ネットのランキングが割れるのは「表現」と「テンポ」をどこまで数えるかの違いで、割れない曲(ワルツ遺作・前奏曲第7番・英雄ポロネーズ・バラード第4番)を基準点にすると自分の位置が測れる
- 最初のショパンの選び方は?:「今の教材+1」のレベル、苦手な要素を避ける、期限から逆算する、の3基準。候補はワルツ遺作イ短調・前奏曲第7番・第4番・マズルカ Op.68-3
ショパンの難易度一覧は、憧れの曲までの距離を測る地図です。この記事の一覧表とロードマップを参考に、まずは1〜2か月で仕上がる「最初のショパン」を1曲決めてみてください。
各ジャンルの全曲比較は、ショパン ワルツ難易度一覧【全19曲】とショパン ノクターン難易度一覧で続きをどうぞ。大人になってからピアノが「難しい」と感じる理由を知りたい方は、大人がピアノを「難しい」と感じる本当の理由6つもあわせてご覧ください。