ショパン スケルツォの難易度|2番は全音F・4曲比較と挑戦の目安

ショパンのスケルツォの難易度が気になって検索したあなたは、きっと第2番の「ささやくような三連符」と「轟く和音」の掛け合いに心をつかまれた方ではないでしょうか。

憧れの曲ほど、「自分には何年かかるのか」「1番から4番のどれが入口になるのか」が分からず、楽譜を買う手前で止まってしまいがちです。しかも調べてみると、ヘンレは第2番を「一番やさしい」と言い、ピティナは第2番を「一番難しい」と言う。個人ブログや海外の掲示板でも順位はバラバラで、調べるほど迷ってしまいます。

  • ショパンのスケルツォ4曲は、それぞれどのくらいの難易度なの?
  • スケルツォ第2番の難易度は?どこが一番難しいの?
  • スケルツォに挑戦するまでに、どんな曲を弾いておけばいい?

この記事は、ショパンのワルツやノクターン、幻想即興曲あたりまで進んだ中級〜上級手前の方、そして「いつかスケルツォ第2番を」と目標にしている大人の学習者に向けて書いています。全音ピアノピース・ヘンレ社・ピティナの3つの公式指標に、実際に弾いた学習者の体感ランキングを突き合わせ、指標によって答えが違う理由まで含めて上の3つの疑問にお答えします。

目次

ショパンのスケルツォの難易度は?4曲をひと目で比較

ショパンのスケルツォ4曲について、ヘンレ・ピティナ・学習者サイト6つの指標ごとの難易度順位を線で結んだ比較図

ショパンのスケルツォは4曲すべてが上級レベルです。ドイツの楽譜出版社ヘンレ社は9段階評価で第1番・第3番・第4番を「8」、第2番を「7」としており、全音ピアノピースでは第2番が最上位ランクのF(上級上)に分類されています。つまり、どの曲を選んでも「ショパンの大曲」の領域に入ると考えてください。

スケルツォ1番〜4番の難易度比較表

まずは4曲の基本データと難易度を一覧にしました。演奏時間はピティナ・ピアノ曲事典の表記、全音ピアノピースのランクは全音楽譜出版社の公式サイト「難易度から探す」で確認したものです(2026年10月時点)。

曲名 調性・作品番号 出版年 演奏時間の目安 ヘンレ(9段階) 全音ピアノピース
スケルツォ第1番 ロ短調 Op.20 1835年 約10分 8 (ピース単独での収録なし)
スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31 1837年 約9分30秒 7 F(上級上)No.535
スケルツォ第3番 嬰ハ短調 Op.39 1840年 約8分 8 (ピース単独での収録なし)
スケルツォ第4番 ホ長調 Op.54 1843年 約11分 8 (ピース単独での収録なし)

全音ピアノピースでは、スケルツォの中で第2番だけがピース(1曲ずつの薄い楽譜)として出ており、同じFランクには革命のエチュード、英雄ポロネーズ、バラード第1番などが並んでいます。スケルツォ第2番は「革命」や「英雄」と同じ棚にある曲とイメージすると、レベル感がつかみやすいでしょう。

学習者・ピアノ系サイトの「体感ランキング」を並べてみると

公式の数字だけでは見えてこないのが、実際に弾いた人の体感です。ピアノ系の個人サイトやQ&Aサイトで公開されている難易度順を、やさしい順に並べて比べてみました。

評価の出どころ やさしい → 難しい 評価のポイント
ヘンレ社(9段階) 2番(7) < 1番・3番・4番(8) 曲全体を見渡した総合評価
ピティナ演奏ヒント 1番・3番 < 2番 技術に自信がない人には1番か3番を勧める
ショパン専門サイトA 2番 < 3番 < 1番 < 4番 4番は10点満点の10、コンクール課題曲にもなる
ショパン専門サイトB(10段階) 2番(7) < 3番(8) < 1番・4番(9) 2番は苦手になりやすい3度・6度がほぼ無い
ピアノ解説ブログ(技術面) 2番 < 1番 < 3番 < 4番 表現面では 1番 < 3番 < 2番 < 4番 と逆転
Q&Aサイトの回答者(先生の指示順) 1番 → 3番 → 2番 別の回答者は「3番が一番やさしい」

表を眺めると、2つの傾向が見えてきます。ひとつは、第4番を最難関に置く意見が圧倒的に多いこと。もうひとつは、第2番を「入口」に置く意見と「一番難しい」に置く意見が真っ二つに割れていることです。海外の掲示板Redditでも「スケルツォ1番は2番・3番より難しい」というタイトルの議論が立つほどで、この割れ方は日本だけの話ではありません。なぜそうなるのかは、次の章で解きほぐします。

\憧れのショパンを1曲ずつ完成させる/

▶スケルツォ第2番を目標に、1曲ずつ仕上げる力をつけるならマナビーノ

ピティナでは「展開」レベル、演奏時間はどれも8〜11分

ピティナ・ピアノステップでは、スケルツォ第2番・第3番・第4番がいずれも「展開1〜3」という上位の区分に置かれています。ここで見落としがちなのが演奏時間です。4曲とも8〜11分ほどあり、ショパンのワルツやノクターン(多くは数分)と比べると2〜3倍の長さになります。

指が回るかどうかだけでなく、10分前後の音楽を最後まで緊張を切らさずに運ぶ集中力と体力も、スケルツォの難易度の一部です。42歳でピアノを再開してスケルツォ第2番に取り組んだ学習者のブログでも、難しさの項目に「10分以上の長さに耐える体力と集中力」が真っ先に挙げられていました。

指標によって「一番難しいスケルツォ」が変わる理由

ショパンのスケルツォで「どれが一番難しいか」は、見る指標によって答えが変わります。ヘンレ社の評価では第2番が4曲の中で唯一「7」と最も低い一方、ピティナ・ピアノ曲事典の演奏ヒントでは第2番が4曲の中で技術的に最も難しいと書かれ、技術に自信のない人には第1番か第3番を勧めています。

ソラ
え、ヘンレだと2番がいちばんやさしくて、ピティナだと2番がいちばん難しいの?どっちを信じればいいの?
カイ
どちらも間違いじゃないんだ。曲全体を「平均」で見るか、「一番きつい箇所」で見るかの違いだと考えると分かりやすいよ。自分がどこでつまずくタイプかで選ぶのが正解なんだ。

ヘンレの数字は「曲全体の平均点」に近い

ヘンレの9段階評価は、1曲全体を見渡したときのおおよその難しさを示す数字です。スケルツォ第2番は旋律的で歌える部分が多く、手の形もショパンらしく鍵盤に沿った書き方がされています。ピアノ系サイトの分析でも「速く動くパッセージが少ない」「苦手な人が多い3度・6度がほとんど出てこない」と、技術面では4曲中もっとも取り組みやすいとされることが多い曲です。

そのため、オクターヴの連続が主題そのものになっている第3番や、終始軽さを保たなければならない第4番に比べると、全体としては一段階低く見積もられていると考えられます。ただし「7」でも、ヘンレの区分では「難しい(7〜9)」のグループに入ります。第2番がやさしいという意味ではない点は押さえておきましょう。

ピティナの「最難」は具体的な難所に注目した見方

ピティナの演奏ヒントでは、スケルツォ第2番の難所として、オクターヴを超える跳躍が続く118〜130小節、右手の同音連打を埋もれさせずに聴かせる492小節以降、そして曲中でも特に難しいとされる544小節以降が挙げられています。つまり、「部分的に非常に高いハードルがある曲」という見方です。

私たち学習者にとっては、平均点より「自分が越えられない一点」があるかどうかのほうが切実です。跳躍が苦手な人にとって第2番はヘンレの数字以上に難しく感じられ、オクターヴが得意な人にとっては第3番が意外に早く形になる、ということも起こりえます。

「技術」と「表現」で順位が逆転する

もうひとつ、順位を割れさせている要因が「技術」と「表現」の切り分けです。あるピアノ解説ブログでは、技術面の難しさを「2番 < 1番 < 3番 < 4番」、表現面の難しさを「1番 < 3番 < 2番 < 4番」と、第2番の位置をまったく逆に置いています。

第2番は指の負担こそ少なめですが、左手のアルペジオ(和音の音を1つずつ順番に弾く伴奏)の上で右手を歌わせる場面が多く、音を並べるだけでは「のっぺり」した演奏になりがちです。弾ける=聴かせられる、ではないのがスケルツォ第2番の正体で、「音は出せるのに先生のOKが出ない」という段階で足踏みする人が多い曲でもあります。

スケルツォ第2番の難易度|4つの難所と練習のポイント

ショパンのスケルツォ第2番の曲の流れを小節番号で示し、4つの難所の位置を赤でマークした図

スケルツォ第2番の難易度を押し上げているのは、①冒頭の弱音のコントロール、②中盤の大きな跳躍、③中間部の長い展開、④コーダの持久力、の4つです。どれも「指が速く回れば解決する」種類の難しさではないのが、スケルツォ第2番の手強いところです。

まずは演奏を聴いて、4つの難所がどこに来るのかを耳で確かめてみてください。YouTubeで192万人が登録するピアニスト・CANACANAさんの演奏です(0:00〜冒頭の問いかけ、中間部の静かなイ長調、終盤のコーダへと進みます)。

出典:CANACANA family「【感謝!100万人】スケルツォ第2番 Op.31 – ショパン」(YouTube)

難所1:冒頭の「問いかけ」をどこまで小さく弾けるか

スケルツォ第2番は、変ロ短調の低音で始まるソット・ヴォーチェ(ささやくように)の三連符の動機と、それに答えるフォルティッシモの和音で幕を開けます。ショパンは弟子のヴィルヘルム・フォン・レンツに、冒頭の動機は「問い」であり、次のフレーズはその「答え」だと説明し、冒頭はどれほど弱く弾いても弱すぎることはない、と語ったと伝えられています。

ピティナの演奏ヒントでも、冒頭3小節ははっきりした音ではなく、ぼやけた音色で弾くことが求められています。大きな音より小さな音のほうが難しいというピアノの基本が、いきなり試される冒頭です。ちなみにこの三連符、聴こえ方が「ところてん」みたいだと表現したピアノブログもあります。ぷるんと滑り出して、ぴたっと止まる。そのイメージは案外、弾くときのヒントになります。

難所2:118〜130小節の跳躍は「中間の音」を目印に

ピティナの演奏ヒントで特に困難とされているのが、118〜130小節のオクターヴを超える跳躍です。練習法として、跳躍の途中にある中間の音(118小節では変ニ音)を右手の2の指で固定して目印にする方法が紹介されています。いきなり端から端へ飛ぶのではなく、着地点の手前に「中継地点」を作るイメージです。

  • まず跳躍先の音だけを、目をつぶっても取れるまで繰り返す
  • 次に中間の音を経由する形で、ゆっくり往復させる
  • 最後に中間の音を省き、元のリズムに戻す

この順で、手が「距離」を覚えていくのが理想です。127〜129小節は左手に助けてもらう指使いも提案されているので、右手だけで抱え込まないことも大切です。

難所3:イ長調の中間部と、約800小節を貫く構成力

スケルツォ第2番の中間部はイ長調に転じ、それまでの劇的な雰囲気から一転して神秘的で瞑想的な音楽になります。ここから再び激しさを取り戻して冒頭の主題へ戻っていくまでの道のりが長く、迷子にならずに弾き通す構成力が求められます。前述の学習者ブログでも、中間部後半の「じわじわ盛り上がって疾走感が増していく部分」が難所に挙げられていました。

ピティナの解説によると、スケルツォ第2番は短い動機が作品全体で関連づけられているため、800小節に迫る長さでも散漫になりにくい作りになっています。逆に言えば、弾き手が動機のつながりを理解していないと、ただ長いだけの演奏になってしまうということです。

救いもあります。スケルツォ第2番は繰り返しが多く、部分練習がしやすい曲です。独学でこの曲を通したという学習者は、バラード第1番と比べて「複雑な和音が少なく、運指が自然で、流れをさらいやすい」と書いています。800小節という数字に怯む必要はありません。

難所4:492小節以降の連打と544小節以降のコーダ

終盤、492小節以降の右手の同音連打は、音が埋もれないように一音一音を明確に聴かせる必要があります。そして544小節以降はピティナで「最も難しい箇所の一つ」とされる部分で、アルペジオの和音を一つひとつ分散させるより、速くつかんでしまう弾き方が勧められています。コーダは変ニ長調に転じて華やかに締めくくられます。

9分以上弾いてきた最後に最難所が来るため、通し練習では毎回コーダから逆算して体力を残す意識が欠かせません。部分練習ではコーダを「曲の最初」に練習する日を作るのもひとつの方法です。独学の学習者が紹介していた「スロー通し練習」(ゆっくりのテンポで最初から最後まで止まらずに弾く)も、長い曲の全体像をつかむには有効な方法です。

スケルツォ第1番・第3番・第4番の難易度と特徴

第2番以外のスケルツォ第1番・第3番・第4番も、ヘンレではすべて「8」の上級曲です。ただ、難しさの種類がまったく違うので、自分の得意・不得意と照らし合わせて選ぶことができます。

スケルツォ第1番 ロ短調 Op.20|テンポの速さと右手の広い跳躍

スケルツォ第1番は、2つの激しい和音のあと、プレスト・コン・フォーコ(火のように速く)の主題が駆け抜ける曲です。ピティナの演奏ヒントでは、4小節を1つのフレーズとして数えるとリズムが安定しやすいこと、そして94小節目からの左手の跳躍が技術的な難所であることが挙げられています。右手も10度・11度の跳躍を含めて鍵盤の広い範囲を走り回るため、「速く弾けないと曲の形にならない」タイプの難しさです。

中間部ではポーランドのクリスマス・キャロル「眠れ、幼子イエス(Lulajże Jezuniu)」が引用され、穏やかなロ長調の音楽になります。コーダには不協和な和音の連打や半音階の上行が続き、速さに負けない体力と、和音をつかむ手の大きさが問われます。一方で、Q&Aサイトでは「第1主題は弾きやすい」「先生から最初に渡されたスケルツォが1番だった」という声もあり、指がよく回るタイプの人には得意曲になりやすいのが第1番です。

スケルツォ第3番 嬰ハ短調 Op.39|オクターヴの主題と「すだれ」

スケルツォ第3番は、マヨルカ島滞在中の1838年に書き始められ、愛弟子アドルフ・グートマンに献呈された曲です。グートマンは大きな手の持ち主だったと伝えられ、荒々しい主題がオクターヴの連続で書かれているのもそのためだと言われます。Q&Aサイトの回答者が「手が小さいと非常に難しい」と断言するのも、この主題が理由です。

一方で、変ニ長調のコラール(賛美歌のような和音の旋律)と、その合間に上から降ってくる繊細なアルペジオの対比はスケルツォ4曲の中でも屈指の美しさです。この下降音型は日本で「すだれ」とも呼ばれ、木枯らしのエチュード Op.25-11の練習が役立つと紹介しているサイトもあります。オクターヴに自信がある人にとっては、ピティナが勧めるように第2番より取り組みやすい入口になるかもしれません。

スケルツォ第4番 ホ長調 Op.54|唯一の長調、軽さこそが難しい

スケルツォ第4番は1842〜43年に書かれた、4曲の中で唯一の長調の作品です。前の3曲のような激しさは少なく、明るく軽やかな雰囲気が全体を包んでいます。ジャンヌ・ド・カラマンに献呈されました。

ところが、この「軽さ」こそがスケルツォ第4番の難しさです。ピティナでは即興的な軽さやルバートの必要性、終盤の音階で力まないことが注意点として挙げられています。場面ごとに弾き方を切り替える必要があり、速いアルペジオ・オクターヴ・トリルが次々に出てくるため、先ほどの体感ランキングでもほぼ全員が第4番を最難関に置いていました。力で押し切れない分、コントロールの難易度が高い曲で、演奏時間も約11分と4曲で最も長くなっています。

曲 主な難しさ 向いている人
第1番 速いテンポ、左手・右手の広い跳躍、和音の連打 勢いのある曲が好き、指がよく回る、体力に自信がある
第2番 弱音のコントロール、大きな跳躍、長い構成、歌わせ方 歌う旋律が好き、跳躍の練習をいとわない
第3番 オクターヴの連続、「すだれ」の下降音型、コラールの響き 手が大きい、オクターヴが得意、和音の響きを作るのが好き
第4番 軽さとルバートの制御、場面転換、長さ 軽やかなタッチが得意、繊細な表現が好き

スケルツォ第2番は何年目で弾ける?挑戦前に弾いておきたい曲

全音ピアノピースのランクを階段にして、ショパンのスケルツォ第2番までの道のりを示したロードマップ図

スケルツォ第2番を弾ける時期は、ピアノ歴の年数よりも「どのレベルの曲を仕上げてきたか」で決まります。ピアノを始めた年齢や練習時間によって大きく変わるため、年数で一律に言うことはできません。そこでこの記事では、全音ピアノピースのランクを階段として使い、今いる段から逆算する方法をおすすめします。

全音ランクで見る「スケルツォ第2番までの階段」

段階 全音ランク ショパンの曲の例(全音ピアノピース)
1段目 E(上級) 雨だれの前奏曲、夜想曲 Op.9-2、子守歌 Op.57
2段目 E(上級) 幻想即興曲、軍隊ポロネーズ
3段目 F(上級上) 別れの曲、革命のエチュード、英雄ポロネーズ、バラード第1番
到達点 F(上級上) スケルツォ第2番(No.535)

同じEやFの中でも曲ごとの差は大きいので、表の段階は目安として見てください。ポイントは、Eランクの曲を2〜3曲、自信を持って人前で弾ける状態にしてからFに進むことです。いきなりFの大曲に飛びつくと、仕上がるまでに時間がかかりすぎて途中で心が折れてしまいやすくなります。

幻想即興曲の難易度についてはショパン「幻想即興曲」の解説記事、エチュードの難易度はショパンのエチュード(練習曲)の記事で詳しく紹介しています。

「革命」「幻想即興曲」「英雄」と比べると?学習者の体感スケール

同じFランクの中でもスケルツォ第2番はどのあたりなのか。42歳で再開した前述の学習者は、自分が弾いた曲を10段階で次のように並べています。

曲 体感難易度(10段階) 全音ランク
英雄ポロネーズ 9 F
スケルツォ第2番 8 F
幻想即興曲 7 E
革命のエチュード 7 F
ノクターン第1番・第2番・第15番 5 E

この学習者の感想は「英雄ポロネーズより1ランク弾きやすく、革命や幻想即興曲よりは難しい。一部を切り出せば同程度でも、曲が長く難所が多いぶん上に来る」というものでした。結論として「革命のエチュードや幻想即興曲が弾ける人なら、体力と気力があればスケルツォ第2番も弾ける」と書かれています。ひとりの体感にすぎませんが、全音の階段表と見事に一致しているのが面白いところです。

バラードとスケルツォ、どちらを先に弾く?

ショパンの大曲で、スケルツォと並んでよく比べられるのがバラードです。バラード第1番も全音ではFに分類されており、レベル感はスケルツォ第2番と同じ棚にあります。Redditの英語掲示板でも「スケルツォ2番 vs バラード1番」という比較スレッドが立つほど、世界中の学習者が同じところで迷っています。

どちらを先にするかは、物語のように語る曲が好きならバラード、緊張と解放のコントラストが好きならスケルツォと、好みで選んで問題ありません。Q&Aサイトで紹介されていたある先生の指示順は「スケルツォ1番→バラード3番→スケルツォ3番→バラード2番→スケルツォ2番→バラード1番」で、スケルツォとバラードを交互に進めていく考え方です。同じ回答では「好きになれない曲は技術的にやさしくても弾きにくく、好きな曲なら多少難しくても乗り越えやすい」とも書かれていました。

バラード4曲の難易度比較はショパンのバラード難易度|1番〜4番を比較した記事にまとめています。スケルツォの比較表と並べて見ると、自分に合う「最初のショパンの大曲」が選びやすくなります。

挑戦前のセルフチェック

次の項目に3つ以上当てはまれば、スケルツォ第2番の部分練習を始めてもよいタイミングと言えます。

  • 全音Eランクのショパン作品を、通して止まらずに弾けたことがある
  • オクターヴを含む跳躍を、鍵盤を見ずにある程度つかめる
  • ピアニッシモで和音や三連符を、音を抜かさずに弾ける
  • 5分以上の曲を、集中を切らさずに通した経験がある
  • ペダルを耳で判断して踏み替えられる

Q&Aサイトのベストアンサーには「無理をすると腱鞘炎になり、治りにくい」という忠告もありました。背伸びは大切ですが、手首や前腕に痛みが出たら迷わず休む。それも大曲を仕上げるための技術のひとつです。

初心者・大人がスケルツォを目標にするなら

ピアノ初心者や再開したばかりの大人がスケルツォ第2番を目標にすることは、まったく無謀ではありません。ただし「全曲を通す」をいきなりゴールにすると、長さと難所の多さで挫折しやすくなります。ゴールを分割するのが、大人が憧れの大曲に近づくいちばん現実的な方法です。

まずは「冒頭だけ」「中間部だけ」を目標にする

スケルツォ第2番は、冒頭の問いかけと答え、そしてその後に続く変ニ長調の歌うような旋律だけでも、十分に「スケルツォを弾いている」実感が得られます。中間部のイ長調の部分も、テンポがゆるやかで和音の響きを味わえる場面です。

全曲は無理でも、好きな部分を1ページずつ仕上げていけば、音の読み方やショパン特有の和声に少しずつ慣れていきます。繰り返しの多い曲なので、1か所仕上げると同じ形が別の場所でも使える。その積み重ねが、将来全曲に挑むときの大きな土台になります。

同じ作曲家の「入口の曲」で手を慣らす

ショパンの書き方に慣れるには、比較的やさしいワルツやノクターンから入るのが近道です。ショパンのワルツの記事やノクターンの記事で紹介している曲は、スケルツォで必要になる「歌う右手」と「支える左手」のバランスを学ぶのにぴったりです。

楽譜選びでは、日本語訳があり練習法や解説が詳しいコルトー版を勧めるピアノブログもありました。難所ごとの練習パターンが載っているので、独学で進める大人には心強い1冊です。大人の学習者は、子どもに比べて練習時間が限られる一方で、曲の背景を理解して表現に生かす力があります。スケルツォの構成やショパンの言葉を知ってから練習すると、同じ1時間でも得られるものが変わってくるはずです。

1曲を仕上げる経験を積み重ねる

スケルツォのような大曲ほど、「1曲を最後まで仕上げた経験」が効いてきます。途中まで弾いて次の曲に移るのを繰り返すより、短い曲でもいいので仕上げ切る経験を重ねたほうが、大曲に必要な粘り強さが身につきます。独学で第2番を通した学習者が「出来に落ち込んでも、通して弾けたこと自体の楽しさを大切にしたい」と書いていたように、仕上げた回数そのものが次の大曲への切符になります。

\弾きたい曲を1曲ずつ完成させる/

▶スケルツォ第2番への階段を、1曲ずつ仕上げて登るならマナビーノ

そもそもスケルツォとは?ベートーヴェンとの違いと作曲の背景

スケルツォとは、イタリア語で「冗談」「おどけ」を意味する言葉で、もともとは交響曲やソナタの中の速い3拍子の楽章を指していました。ショパンはこのスケルツォを独立したピアノ曲として4曲書き、ジャンルの規模と表現の幅を大きく広げました。

ベートーヴェンのスケルツォとの違い

ベートーヴェンのスケルツォは、交響曲やピアノソナタの一楽章として置かれ、拍の裏のアクセントやはっきりしたリズムが特徴でした。ショパンも3拍子、A-B-A形式、鋭いアクセントといった要素を受け継いでいますが、4曲すべてがプレスト(非常に速く)で書かれ、1曲で10分前後のドラマを描く独立した作品になっています。

特に最初の3曲は、「冗談」という名前からは想像できないほど暗く激しいエネルギーに満ちています。ロベルト・シューマンが第1番について、冗談がこれほど暗いヴェールをまとうなら、厳粛さはどう装えばよいのか、という趣旨の言葉を残したのは有名な話です。

スケルツォ第2番が書かれたころのショパン

スケルツォ第2番は1837年に出版され、アデール・ド・フュルステンシュタイン伯爵夫人に献呈されました。ピティナの解説によると、作曲の時期はマリア・ヴォジンスカとの恋愛とその破局の時期と重なっています。シューマンはスケルツォ第2番をバイロンの詩になぞらえ、やさしく、大胆で、愛に満ち、軽蔑に満ちていると評しました。

ショパンの生涯の流れの中で、この時期がどんな時代だったのかはショパンの生涯と代表曲の記事で詳しく紹介しています。背景を知ってから冒頭の「問いかけ」を聴き直すと、また違った響きに聞こえてくるかもしれません。

まとめ:ショパン スケルツォの難易度と最初の1曲の選び方

この記事では、ショパンのスケルツォ4曲の難易度を、全音ピアノピース・ヘンレ・ピティナの3つの指標と、学習者の体感ランキングで比べてきました。

  • 4曲の難易度:すべて上級。ヘンレでは第1番・第3番・第4番が8、第2番が7。全音ピースでは第2番がF(上級上)。学習者の体感では第4番が最難関、第2番は「入口」派と「最難」派に割れる
  • スケルツォ第2番の難易度:技術面では4曲中もっとも取り組みやすいが、118〜130小節の跳躍・544小節以降のコーダという高い難所と、歌わせる表現の難しさがある
  • 挑戦前に弾きたい曲:全音Eの幻想即興曲や軍隊ポロネーズを仕上げ、Fの革命のエチュードやバラード第1番と同じ段に立ってから。体感では「革命・幻想即興曲が弾けるなら、体力と気力があれば届く」

ショパンのスケルツォの難易度は、数字だけ見るとどれも高く感じますが、自分の得意な技術に合った1曲を選べば、憧れは決して遠い目標ではありません。まずは好きな数小節から音にしてみてください。

▶ あわせて読みたい:ショパン バラードの難易度|1番〜4番を比較/ショパンとは?生涯と代表曲