ショパンのワルツの難易度は、一番やさしい曲ならブルグミュラー程度、一番難しい曲ならエチュードが数曲弾けるレベルまで、全19曲の中にかなりの幅があります。
「ショパンを弾いてみたい。でもショパンは難しいと聞くし、自分にはまだ早いのでは……」
そう思って、憧れのまま楽譜を開けずにいる方は多いのではないでしょうか?
たしかにバラードやスケルツォは演奏時間10分前後の大曲で、技術的にもかなりの難所が続きます。しかしワルツは、短い曲で1分半、長い曲でも5分程度の小品。ノクターンよりも取り組みやすい曲もあり、「はじめてのショパン」にはワルツがいちばんおすすめなのです。
- ショパンのワルツは、どの曲がやさしくてどの曲が難しいの?
- 「子犬のワルツ」や「別れのワルツ」は、どのくらいのレベルで弾ける?
- ブルグミュラーやソナチネを練習中の自分は、まずどれから始めればいい?
この記事は、ブルグミュラー〜ソナチネ程度の大人の学習者(再開組の方も含みます)に向けて書いています。全19曲を「入門・初級・中級・上級」の4段階に整理した一覧表と、レベルごとの曲の特徴・選び方・練習のポイントをお伝えします。読み終わるころには、「今日から練習を始められる1曲」が決まっているはずです。
ショパンのワルツとは|全19曲・生前出版はわずか8曲
ショパンのワルツは、踊るための実用的な音楽ではなく、ワルツのリズムを借りて内面の心情を描いた「聴くためのワルツ」です。少年時代から晩年まで書き続けられ、現存する作品は遺作を含めて19曲。そのうちショパン自身が生前に出版したのはわずか8曲しかありません。まずは全体像をつかんでおきましょう。
踊るためのワルツではない、ショパンだけのワルツ
ワルツと聞くと、優雅に回るウィンナワルツを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかしショパンのワルツは、当時ウィーンで流行していたウィンナワルツとは少し違う音楽です。
その根底には、故郷ポーランドの音楽があると言われています。実際に踊るには向かない曲がほとんどで、3拍子のステップよりも、旋律に込められた哀愁や華やかさ、心の揺れが主役になっています。
ここに、日本の学習者にとって意外なメリットがあります。「日本人は踊る文化が少ないからワルツの演奏が苦手」とよく言われますが、ショパンのワルツは踊りのステップ感をそれほど必要としません。つまり、ワルツが苦手だと思っている方でも取り組みやすいのです。
ショパンの人生とほかの名曲については、ショパンの生涯と名曲の記事でくわしく解説しています。
生前に出版された8曲と、遺作11曲
ショパンが生前に出版したワルツは、作品番号のついた次の8曲です。
- Op.18 第1番「華麗なる大円舞曲」
- Op.34 第2〜4番「華麗なる円舞曲」(3曲)
- Op.42 第5番「大円舞曲」
- Op.64 第6〜8番(「子犬のワルツ」を含む3曲)
ショパンの死後、友人フォンタナの手で第9番〜第14番の6曲(Op.69・Op.70・遺作)が出版され、その後さらに3曲が発見されました。一般的なパデレフスキ版のワルツ集には第17番までが収録されており、これに加えて第18番・第19番として知られる遺作を含めた全19曲がこの記事の対象です。
「第◯番」は版によって違うので注意
ショパンのワルツは、楽譜の版によって番号の付け方や収録曲数が異なります。「ワルツ全集」と名のつくCDでも14曲だったり17曲だったりするのはそのためです。
第14番以降の遺作は特に番号のずれが起きやすいので、曲を探すときは番号ではなく「調性+作品番号(Op.)」で確認するのが確実です。この記事でもパデレフスキ版の番号を基本にしつつ、必ず調性と作品番号を併記します。
ショパン ワルツ難易度一覧表【全19曲を4段階で比較】

ショパンのワルツの難易度は、練習中の教材で言うと「ブルグミュラー程度」から「エチュードが数曲弾ける程度」までの4段階に分けられます。ここでは全19曲を、やさしい順にランキング形式で一覧にしました。
この記事の難易度の基準
難易度の感じ方は弾く人によってかなり差が出ます。同じ曲でも「速いパッセージが得意な人」と「譜読みが得意な人」では、どちらを難しく感じるかが変わるからです。
そこでこの記事では、次の4つの目安で分けています。
| レベル | 目安となる教材 |
|---|---|
| 入門 | ブルグミュラー25の練習曲の半ば〜卒業程度 |
| 初級 | ソナチネアルバム程度 |
| 中級 | ソナチネアルバム卒業〜ソナタアルバム程度 |
| 上級 | ショパンのエチュードをいくつか弾ける程度 |
なお、資料によって「最難関」とされる曲が違うのは、「音を並べる速さ」「跳躍の多さ」「臨時記号の読みにくさ」「曲の長さ」「表現の深さ」のどれを重く見るかが違うためです。順位の細かい差より「どのブロックにいるか」を参考にしてください。
全19曲 難易度一覧表(やさしい順)
| 順位 | レベル | 番号・調性・作品番号 | 通称 | 難しいポイント |
|---|---|---|---|---|
| 19位 | 入門 | 第19番 イ短調(遺作) | — | 右手の駆け上がるアルペジオ |
| 18位 | 入門 | 第18番 変ホ長調(遺作) | ソステヌート | 左手の跳躍+右手の重音 |
| 17位 | 入門 | 第12番 ヘ短調 Op.70-2 | — | 一箇所だけ出る3度の連続 |
| 16位 | 入門 | 第3番 イ短調 Op.34-2 | 華麗なる円舞曲 | トリルと装飾音 |
| 15位 | 入門 | 第10番 ロ短調 Op.69-2 | — | ♯5つになる中間部の重音 |
| 14位 | 初級 | 第9番 変イ長調 Op.69-1 | 別れのワルツ(告別) | 装飾的なパッセージの歌わせ方 |
| 13位 | 初級 | 第6番 変ニ長調 Op.64-1 | 子犬のワルツ | 速いテンポで動き回る右手 |
| 12位 | 初級 | 第16番 変イ長調(遺作) | — | 動き続ける右手の指使い |
| 11位 | 初級 | 第17番 変ホ長調(遺作) | — | オクターブの連続 |
| 10位 | 中級 | 第15番 ホ長調(遺作) | — | 声部の弾き分け・トリル・左手の跳躍 |
| 9位 | 中級 | 第7番 嬰ハ短調 Op.64-2 | — | 冒頭主題の音色・中間部のペダリング |
| 8位 | 中級 | 第8番 変イ長調 Op.64-3 | — | 明るさの中の繊細な表現 |
| 7位 | 中級 | 第11番 変ト長調 Op.70-1 | — | ♭6つの譜読み・跳躍・3度 |
| 6位 | 中級 | 第14番 ホ短調(遺作) | — | 鍵盤を広く使うアルペジオ・転調 |
| 5位 | 中級 | 第13番 変ニ長調 Op.70-3 | — | 中間部の左手の歌わせ方 |
| 4位 | 上級 | 第4番 ヘ長調 Op.34-3 | 華麗なる円舞曲(猫のワルツ) | 極めて速いテンポで粒を揃える |
| 3位 | 上級 | 第1番 変ホ長調 Op.18 | 華麗なる大円舞曲 | 同音連打・広い音域・長さ |
| 2位 | 上級 | 第2番 変イ長調 Op.34-1 | 華麗なる円舞曲 | 高速の音階と和音の連続 |
| 1位 | 上級 | 第5番 変イ長調 Op.42 | 大円舞曲 | ヘミオラのリズム・駆け回るアルペジオ・転調 |
※難易度はあくまで目安です。版・テンポ設定・得意不得意によって前後します。
入門編:ブルグミュラー程度で弾けるショパンのワルツ5曲

ショパンのワルツの入門編は、ブルグミュラーの半ば〜卒業程度で挑戦できる5曲です。「ショパンはまだ早い」と思っていた方こそ、まずこの5曲の中から選んでみてください。とくに第19番イ短調は、大人の生徒さんの「ファーストショパン」として選ばれることの多い定番曲です。
第19番 イ短調(遺作)|最初のショパンにいちばん選ばれる曲
ワルツ第19番イ短調は、ショパンの全作品の中でも最もやさしい部類に入る曲です。楽譜は見開き1ページに収まり、演奏時間も2分弱。左手は基本的なワルツの伴奏形で、右手は静かに歌う旋律が続きます。
つまずきやすいのは、途中に出てくる右手の駆け上がるアルペジオ(和音の音を1つずつ順に弾く形)です。ここだけを取り出してゆっくり練習し、指使いを固めてしまえば、あとは落ち着いて歌わせるだけ。「ショパンを1曲弾けた」という達成感を、いちばん早く味わえるワルツです。
ショパン以外も含めた入門曲は、ピアノ初心者向けの簡単な曲まとめでも紹介しています。
第18番 変ホ長調(遺作)|短いけれど跳躍が多い
ワルツ第18番変ホ長調(「ソステヌート」と呼ばれることもあります)も、ブルグミュラーの半ばを過ぎたころに挑戦できる曲です。ただし第19番よりは込み入っています。
前半は左手の伴奏の跳躍に右手の重音(2つ以上の音を同時に弾く形)が重なり、途中からは左手で旋律を弾きながら跳躍するベースも出てきます。難しい箇所は意外と多いのですが、演奏時間は2分程度と短いので、部分練習を積み重ねやすい曲です。
第12番 ヘ短調 Op.70-2|パデレフスキ版で最も弾きやすい
ワルツ第12番ヘ短調Op.70-2は、パデレフスキ版に収録されているワルツの中では最も弾きやすい作品です。ブルグミュラー卒業程度で挑戦できます。
ショパンが好んだとされる変ニ長調に転じる部分もあり、終始同じ形の伴奏の上で、基本的には単音の旋律が進んでいくとてもシンプルな曲です。1パターンだけ、1小節の間に3度(ドとミのように音が2つ隣の間隔)の連続が出てきますので、そこは指を決めてしっかり練習しましょう。
第3番 イ短調 Op.34-2|左手の旋律で始まるレントのワルツ
ワルツ第3番イ短調Op.34-2は、「華麗なる円舞曲」と題されたOp.34の3曲のうち、唯一ゆったりとしたレント(ゆっくり)のワルツです。冒頭を左手の有名な旋律で始めるのが特徴で、途中で転調もあるため変化も楽しめます。
トリル(2つの音を素早く交互に弾く装飾)や装飾音がわりと入るので、初心者の方が「楽に弾ける」というわけではありません。ただし速い動きはないので、大人になってからピアノを始めた方でも、じっくり取り組めば形にしやすい曲です。
第10番 ロ短調 Op.69-2|19歳のショパンが書いた哀愁のワルツ
ワルツ第10番ロ短調Op.69-2は、ショパンが19歳のときに書いた作品です。10代でこれほど哀愁のある旋律を生み出したのかと驚かされる、ショパンの並外れた感受性を味わえる1曲です。
中間部で♯が5つになり重音も出てくるので、そこが少し弾きにくく、譜読みもしづらい箇所です。とはいえショパンの作品の中では技術的にやさしめで、構成も理解しやすいため、ピアノの学習用としてよく取り上げられています。
実際に「最初のショパン」を弾いた人は、どこでつまずいたか
大人の生徒さんを多く指導しているピアノ講師のドレミさんは、YouTubeでショパンのワルツ全19曲の難易度解説をされています。その中で語られていたのは、大人の生徒さんの「ファーストショパン」は第19番イ短調が圧倒的に多く、ほぼ全員が途中の右手の駆け上がるアルペジオで足を止めるということでした。逆に言えば、つまずく場所が最初から分かっている曲です。その数小節を「片手・ゆっくり・指使い固定」で先に仕上げてから通し練習に入ると、残りは見開き1ページの歌う旋律だけなので、想像よりずっと早く形になります。
ちなみにドレミさん自身が初めて取り組んだショパンは、入門編ではなく中級編の第14番ホ短調(遺作)だったそうです。「音域も強弱も目まぐるしく変わって練習は大変だったけれど、ショパンを弾けるということが本当に嬉しかった」と振り返っています。難易度順にこだわらず、弾きたい気持ちが強い曲を選んだ人ほど最後まで練習が続くという好例ではないでしょうか。
初級編:子犬のワルツは何級?ソナチネ程度で挑戦できる4曲

「子犬のワルツは何級ですか?」という質問に答えるなら、ソナチネアルバム程度の初級レベルが目安です。同じレベルには「別れのワルツ」もあり、どちらもピアノのレッスンや発表会でよく取り上げられる定番曲です。ここでは初級編の4曲を紹介します。
第9番 変イ長調 Op.69-1「別れのワルツ」|レッスンの定番
ワルツ第9番変イ長調Op.69-1は「別れのワルツ」「告別」の名で親しまれる、ショパンのワルツ入門としてレッスンや発表会で取り上げられることの多い定番曲です。第9番以降のワルツは、作品番号があるものも含めてショパンの死後に出版された遺作にあたります。
装飾的なパッセージが出てきて、いかにもショパンらしく「弾けたら気持ちいい」曲です。途中で調号が変わることはなく、テンポもレントなので、じっくり歌わせる練習に向いています。技術より「表現力」が問われる曲と言ってもよいでしょう。
第6番 変ニ長調 Op.64-1「子犬のワルツ」|速さより軽さ
ワルツ第6番変ニ長調Op.64-1「子犬のワルツ」は、ショパンのワルツの中で最も有名な曲。ワルツといえばこの曲が浮かぶ方も多いのではないでしょうか? 作品番号64の3曲はショパンの晩年に書かれた、生涯最後のワルツ集です。
テンポが速く、右手がコロコロと動き回るのが特徴ですが、規模が小さく2分弱で終わり、音楽的にもとてもシンプルです。子どもの発表会でもよく演奏されます。難しさの正体は「速さ」なので、最初はゆっくり、指の動きが完全に自動化されてから少しずつテンポを上げる練習が欠かせません。
第16番 変イ長調(遺作)|指を決めて練習したい気品ある曲
ワルツ第16番変イ長調(遺作)は、演奏される機会は多くないものの、シンプルながら気品のある曲です。
右手が軽やかに動き回るため、1の指(親指)を柔らかく使う必要があります。運指(指使い)をしっかり決めてから練習しないと、いつまでも安定しません。「あまり知られていない曲を弾きたい」という方にはおすすめの1曲です。
第17番 変ホ長調(遺作)|聴いた印象よりずっと弾きにくい
ワルツ第17番変ホ長調(遺作)も、聴いたことのない方が多いかもしれない曲です。華麗なワルツというより、オクターブのエチュードのような趣があります。
テンポの指定がないので、あまり速くせずゆったり弾いてもよいでしょう。ただし、聴いた印象よりもずっと弾きにくい曲なので、油断は禁物です。
中級編:ソナタアルバム程度で取り組みたいショパンのワルツ6曲

ショパンのワルツの中級編は、ソナチネアルバム卒業〜ソナタアルバム程度で挑戦できる6曲です。人気の第7番Op.64-2をはじめ、ショパンの恋心が込められた第13番、演奏効果の高い第14番など、「聴き映えするワルツ」がそろっています。
第15番 ホ長調(遺作)|弾きやすそうに聞こえて意外と難しい
ワルツ第15番ホ長調(遺作)は、あまり有名ではないものの、感傷的でもあり華やかでもある素敵な曲です。
難しいのは声部の弾き分け。内声(旋律とバスの間の音)がうるさくならないように、メロディーが浮き立つバランスで弾く必要があります。右手のトリルや左手の跳躍も弾きづらく、「弾きやすそうに聞こえて意外と難しい」典型のような曲です。
第7番 嬰ハ短調 Op.64-2|ワルツのペダリングを学ぶ定番
ワルツ第7番嬰ハ短調Op.64-2は、ショパンのワルツの中でも特に人気の高い作品です。レッスンで取り組む方も多く、ワルツのペダリング(ペダルの踏み方)を学ぶ教材としても定番です。
意外と難しいのが、最初のテーマの音色。そして♭系に転じてレントで歌い上げる中間部がとても美しく、その後に再び出てくる部分はピウ・モッソ(より速く)になって変化を楽しめます。哀愁と華やかさを1曲で味わえる、ショパンらしさの詰まったワルツです。
第8番 変イ長調 Op.64-3|ショパンが最後に書いたワルツ
ワルツ第8番変イ長調Op.64-3は、生前に出版された最後のワルツ集Op.64の3曲目、つまりショパンが最後に書いたワルツです。
晩年特有の哀愁とはうって変わって明るく爽やかな曲ですが、初期の華麗なワルツとは違う、美しい儚さも感じられます。それほど有名ではありませんが、通好みの1曲として愛されています。
第11番 変ト長調 Op.70-1|キラキラした主部と歌う中間部
ワルツ第11番変ト長調Op.70-1は、軽やかでキラキラした主部と、カンタービレ(歌うように)で優美な中間部の対比が楽しい曲です。「子犬のワルツ」と並んで2分弱の小さな作品です。
難しいのは、♭が6つつくので譜読みがしづらいこと、跳躍が多いこと、3度の連続があること。小品ながら技巧的な要素が詰まっています。
第14番 ホ短調(遺作)|協奏曲のような演奏効果
ワルツ第14番ホ短調(遺作)は、かなり切迫感のある短調で始まり、鍵盤の幅をいっぱいに使うアルペジオや、外側から指を巻き込むようなフレーズが続きます。ピアノ協奏曲にも通じる書き方で、技巧的に難しい一方、演奏効果がとても高い曲です。
次々に音域が変わり強弱の変化も目まぐるしいので練習は大変ですが、その分「ショパンを弾いている」という手応えを強く感じられます。資料によっては最難関に挙げられることもある曲です。
第13番 変ニ長調 Op.70-3|片思いの相手に宛てたワルツ
ワルツ第13番変ニ長調Op.70-3は、ショパンが19歳のころの作品です。当時ショパンは、同じ音楽院に通う声楽科の学生コンスタンツィアに片思いをしていました。
友人に宛てた手紙には、この半年間毎晩のように夢に出てくる理想の女性がいること、その人を思いながらピアノ協奏曲第2番の第2楽章を書いたこと、そして「今朝このワルツを書いた」こと、中間部の左手に自分の思いを託したことが綴られています。
中間部の左手が高音になっていて驚くかもしれないが、この音に託した僕の思いを、君ならきっと分かってくれると思う
(ショパンが友人に宛てた手紙の趣旨)
そのエピソードを知ってから中間部の左手を弾くと、音の意味がまったく違って聞こえるはずです。
上級編:エチュードが弾ける人向けの華麗なワルツ4曲

ショパンのワルツの上級編は、ショパンのエチュードをいくつか弾ける程度の、かなり難しいレベルの4曲です。いずれも「華麗なる」と名のつく生前出版の作品で、コンサートや発表会で映える演奏効果の高いワルツです。
第4番 ヘ長調 Op.34-3「猫のワルツ」|極めて速いテンポで粒を揃える
ワルツ第4番ヘ長調Op.34-3は、「華麗なる円舞曲」Op.34の最後を飾る、極めて速いテンポの明るく快活な曲です。右手の細かく駆け回る音型から、「子犬のワルツ」と並べて「猫のワルツ」と呼ばれることもあります。
まさに猫が走り回ったり伸びをしたり、気まぐれに表情を変えるような曲。右手の音の粒を揃えること、鍵盤の上で音遊びをするようにいろいろなタッチで弾き分けることが難しいポイントです。
第1番 変ホ長調 Op.18「華麗なる大円舞曲」|同音連打が得意なら
ワルツ第1番変ホ長調Op.18「華麗なる大円舞曲」は、とても有名で親しみやすく、発表会で演奏されることも多い作品です。
この曲の難所は同音連打(同じ鍵盤を素早く連続して弾くこと)。連打が得意な人にとっては、ランキングがかなり変わってくるかもしれません。版によって指使いも違うので、自分の手に合う弾きやすい指を見つけることが大切です。音域が広く曲も長いので、体力配分も意識しましょう。
第2番 変イ長調 Op.34-1|「華麗なる円舞曲」の傑作
ワルツ第2番変イ長調Op.34-1は、第2〜4番をまとめて出版した「華麗なる円舞曲」の1曲目です。第1番に比べると知名度は劣りますが、内容ははるかに濃く、ワルツの傑作と言える作品です。
高速で駆け上がる音階や和音の連続は技術的にも難しく、華やかで演奏効果の高いワルツです。
第5番 変イ長調 Op.42「大円舞曲」|ワルツ最難関
ワルツ第5番変イ長調Op.42「大円舞曲」は、ショパンのワルツの中で最も難易度が高い曲です。演奏時間は4分弱と短いものの、華麗でスケールの大きな、内容の濃い傑作です。
主題はいきなりヘミオラ風のリズム(3拍子の中に2拍子が入り込むリズム)で始まり、その後はアルペジオが駆け回り、後半は転調を重ねながら最後まで技巧的で華やかに進みます。「ワルツ集の最後の目標」として据えたい1曲です。
「聴いた瞬間に弾きたくなった」上級のワルツ|講師の体験談
上級編の4曲は、ランキングの順位よりも「その人の得意・不得意」で難しさが入れ替わりやすいブロックです。ピアノ講師のドレミさんは、第1番Op.18「華麗なる大円舞曲」は同音連打が得意な人なら順位がかなり変わると話しています。版によって連打の指使いが違うので、自分の手に合う指を探すこと自体が練習の一部になる、というのがドレミさんの実感です。
また第4番Op.34-3「猫のワルツ」については、ショパン国際ピアノコンクールで反田恭平さんの演奏を聴き、猫が走り回ったり伸びをしたりする姿が目に浮かぶような表情の豊かさに興奮して、「私もすぐにこの曲を弾きたい」と思ったそうです。ただ実際に取り組んでみると、右手の音の粒を揃えること、鍵盤の上で音遊びをするようにタッチを変えていくことが想像以上に難しかったとのこと。上級のワルツは「憧れて始めて、粒を揃える地道な練習で仕上げる」曲だと言えそうです。
自分に合うショパンのワルツの選び方

ショパンのワルツの選び方でいちばん大切なのは、「今の教材レベル」と「弾きたい動機」の2軸で決めることです。難易度だけで選ぶと、弾けるけれど好きになれない曲を練習することになりかねません。
まず「今の教材」でブロックを決める
自分の練習している教材が、ブルグミュラーならまず入門編、ソナチネなら初級編、ソナタなら中級編から選びます。「1つ上のブロックに挑戦したい」ときは、演奏時間が2分前後の短い曲(第18番・第12番・第11番など)を選ぶと、部分練習を重ねやすく挫折しにくくなります。
次に「なぜ弾きたいか」で1曲に絞る
- 発表会で映えたい → 「子犬のワルツ」「別れのワルツ」「華麗なる大円舞曲」など知名度の高い曲
- 人と被らない曲がいい → 第15番・第16番・第17番などの遺作
- 哀愁のある曲が好き → 第10番・第7番・第14番などの短調のワルツ
- 明るく華やかな曲が好き → 第8番・第11番・第4番
ショパンのワルツを美しく弾くための練習ポイント

ショパンのワルツを美しく弾くには、左手のワルツバス・ペダリング・ルバートの3つを意識することが近道です。どのレベルの曲にも共通するポイントなので、最初の1曲からぜひ取り入れてください。
左手の「ワルツバス」を安定させる
ワルツの左手は「低音→和音→和音」の3拍子(ワルツバス)が基本です。1拍目の低音をしっかり、2・3拍目の和音は軽く。この重さの違いがつくだけで、ぐっとワルツらしく聞こえます。跳躍のある曲では、左手だけを取り出して目をつぶっても届くまで練習しておくと安心です。
ペダルは「1拍目で踏み替える」から始める
ショパンのワルツのペダリングは、基本的に1拍目の低音に合わせて踏み替えます。第7番Op.64-2はワルツのペダリングを学ぶのに最適な曲。まずはペダルなしで手だけで弾けるようにしてから、ペダルを足しましょう。ペダルで音のミスをごまかす癖がつくと、後で苦労します。
ルバートは「取り戻す」までがセット
ルバート(テンポを自由に揺らすこと)はショパンの醍醐味ですが、伸ばした分は必ず取り戻すのが原則です。左手はできるだけ一定に、右手の旋律だけが揺れるイメージで弾くと、崩れずに歌えます。
練習時間は「量より質」——ショパン自身の言葉
ピアノは1日3時間まで。疲れたら、その都度休むように。
(ショパンが弟子に伝えたとされる言葉)
1日6時間、8時間と弾くピアニストも多い中で、ショパンはこう語ったと伝えられています。疲れた手でダラダラ練習して故障するくらいなら、しっかり休んで頭を使った練習をしなさい、という意味に受け取れます。
仕事をしながらピアノを続けている大人の方は、練習時間の確保が難しいものです。しかし1日15分でも、毎日の積み重ねで必ず上達します。集中して考えながら練習する15分は、なんとなく弾き流す1時間に勝ります。
大人の練習で行き詰まりを感じている方は、大人がピアノを「難しい」と感じる理由の記事も参考にしてみてください。
1日中弾いていた20代より、朝30分だけの時期のほうが上達した
練習時間について、ピアノ講師のドレミさんが動画で語っていた体験談がとても参考になります。ドレミさんは20代前半まで、持てる時間のほとんどをピアノの前で過ごし、すべてをかけて練習していたそうです。ところが振り返ってみると、その時期は空回りが多く、限られた時間の中で集中して考えながら練習していた時期のほうが、よほど上達したし得るものも多かったと言います。
実際にドレミさんが高校の教師をしていた時期は、練習時間は毎朝の30分だけ。それでも新しい曲に取り組み、師匠のレッスンにも通い続けていたそうです。仕事をしながらピアノを続けている方にとって、「1日15分でも、頭を使った練習を毎日積み重ねれば必ず上達する」というドレミさんの言葉は、ショパンの「1日3時間まで」という教えと重なって聞こえるのではないでしょうか。
まとめ
この記事では、ショパンのワルツ全19曲の難易度を4段階に分けて紹介しました。冒頭の疑問への答えをまとめます。
- どの曲がやさしくてどの曲が難しい? → 最もやさしいのは第19番イ短調(遺作)、最難関は第5番Op.42「大円舞曲」。全19曲は入門・初級・中級・上級の4段階に分けられます
- 「子犬のワルツ」「別れのワルツ」のレベルは? → どちらもソナチネ程度の初級レベル。子犬のワルツは「速さより軽さ」、別れのワルツは「表現力」がカギです
- 自分はどれから始めればいい? → ブルグミュラー程度なら第19番・第12番・第10番、ソナチネ程度なら別れのワルツ・子犬のワルツから。迷ったら「聴いて好きになった曲」を選びましょう
ショパンのワルツは、1〜5分の小品でありながら、ショパンらしい哀愁と華やかさをしっかり味わえる作品群です。ショパン ワルツの難易度を知ったうえで、自分に合う1曲を決めれば、「ショパンはまだ早い」という思い込みはきっと消えているはず。この記事の一覧表を参考に、今日から憧れの1曲を練習してみてください。
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