ソナチネを難易度順に弾きたいと思って調べている方は、「ソナチネアルバムの1番から弾き始めたら、思った以上に難しくて止まってしまった」という経験があるかもしれません。実は、ソナチネアルバム1は1番から順に難しくなる構成ではありません。冒頭のクーラウより、途中に載っている曲のほうがやさしいことも多いのです。
さらにややこしいのは、「ソナチネの難易度順」と検索すると、サイトによって順番が違うことです。ピティナのステップを基準にした順番、ピアノ講師が生徒に渡す練習順序、楽譜の目次に書かれた順序。どれも間違いではなく、基準が違うだけです。
- ソナチネアルバムの曲は、どれがやさしくてどれが難しい?
- ソナチネアルバムは何番から弾き始めればいい?
- 全部の楽章を弾くべき?独学でも進められる?
この記事は、ブルグミュラーを終えてソナチネに進む方、大人になってからソナチネアルバムに挑戦している方に向けて書いています。ピティナ・ピアノステップのレベルを基準にした一覧表を軸に、講師ブログやQ&Aサイトで語られている別の順番とも比べながら、自分に合う順番を決める方法を解説します。
ソナチネアルバムは難易度順に並んでいない

結論から言うと、ソナチネアルバム1の曲順は、難易度順ではなく作曲者ごとのまとまりです。最初にクーラウ、次にクレメンティ、そのあとにハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンと続きます。そのため、1番から順番に弾くと、いきなり手ごわい曲に当たることがあります。
ソナチネとは「小さなソナタ」のこと
ソナチネとは、ソナタを小規模にした器楽曲のことです。多くは2〜3つの楽章でできていて、第1楽章には「提示部・展開部・再現部」からなるソナタ形式(テーマを示し、変化させ、もう一度戻ってくる形)が使われます。古典派の様式を学ぶ入り口として、ピアノ教育で長く使われてきました。
「ソナチネ」という言葉には、もう一つの使われ方があります。「ソナチネ程度」「ソナチネレベル」のように、ピアノの進度を表す目安としての使い方です。楽譜売り場で「難易度:ソナチネ程度」と書かれていたら、「バイエルとブルグミュラーを終えた中級の入口くらい」という意味だと考えておくとよいでしょう。
日本で「ソナチネアルバム」というと、ドイツのペータース社から出版されたケーラーとルートハルト編の「Sonatinen Album」をもとにした曲集を指すことが多く、全音楽譜出版社や音楽之友社などから日本語版が出ています。
ソナチネアルバム1の曲順は作曲者ごと
ソナチネアルバム1の前半は、次のような並びになっています(全音楽譜出版社・音楽之友社の各版の収録内容より)。
- 第1〜3番:クーラウ ソナチネ Op.20-1〜3
- 第4〜6番:クーラウ ソナチネ Op.55-1〜3
- 第7〜12番:クレメンティ ソナチネ Op.36-1〜6
- 第13番以降:ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンのソナタ、ドゥシェック(ドゥシーク)のソナチネ、バッハの前奏曲や小品など
クーラウの作品番号の大きいOp.55が、Op.20のあとに置かれている点がポイントです。作品番号順に並んでいるだけで、やさしい順に並んでいるわけではありません。また、ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンの曲は、もともと「ソナチネ」として書かれたものではなく、ソナタの中から比較的やさしい曲が選ばれて収録されたものです。曲集の後半に、ソナチネより一段上の曲が混ざっていると考えてください。
ソナチネアルバム2との関係
ソナチネアルバムには第1巻と第2巻があります。音楽之友社の「ソナチネアルバム2」解説付き版の紹介によると、第2巻にはクーラウ、クレメンティ、ベートーヴェン、ディアベリなどの作品が収められ、巻頭には第1巻に続いてソナタ形式の詳しい解説が付いています。
「第1巻を全部終えてから第2巻へ」と考える方も多いかもしれませんが、巻の番号も難易度の順番を示しているわけではありません。第2巻にはソナタ形式ではない曲も含まれていて、第1巻と第2巻の間に大きなレベル差があるわけでもないため、第1巻のあとはソナタアルバムに進む人が多いのが実情です。第1巻の段階1〜2を終えたら、第2巻のやさしめの曲と並行して進める、という使い方もできます。この記事では、収録曲の多くにピティナのステップが登録されている第1巻を中心に整理しています。
ラヴェルの「ソナチネ」は別物
「ソナチネ 難易度」で検索すると、モーリス・ラヴェルの「ソナチネ」が出てくることがあります。1905年に完成した全3楽章のピアノ曲で、同じ「ソナチネ」という名前でも、ソナチネアルバムとはレベルがまったく違う上級者向けの作品です。第1楽章はソナタ形式で書かれていますが、色彩的な和音と両手の重なりで譜読みに時間がかかり、終楽章はトッカータ風の速い音型が続きます。「ソナチネという名前だからやさしい」とは限らない、という例として覚えておいてください。
♪ ラヴェル:ソナチネ 第1楽章(参考:ソナチネアルバムとのレベル差を聴き比べ)
演奏:佐野隆哉(ピティナ ピアノチャンネル PTNA/YouTube)
【一覧表】ソナチネアルバム1の難易度順

ソナチネアルバム1の主なソナチネ・ソナタを難易度順に並べると、次の4段階になります。基準にしたのは、ピティナ・ピアノ曲事典に掲載されている全音楽譜出版社「ソナチネアルバム1〔標準版〕」の各楽章のステップレベルです。
| 段階 | アルバム番号・曲 | 調 | ピティナ・ステップ(目安) |
|---|---|---|---|
| 1 入門 | 第4番 クーラウ Op.55-1 | ハ長調 | 基礎5〜応用3 |
| 1 入門 | 第5番 クーラウ Op.55-2 | ト長調 | 基礎5〜応用3 |
| 1 入門 | 第6番 クーラウ Op.55-3 | ハ長調 | 基礎5〜応用3 |
| 2 初級〜中級 | 第7番 クレメンティ Op.36-1 | ハ長調 | 基礎5〜応用5 |
| 2 初級〜中級 | 第8番 クレメンティ Op.36-2 | ト長調 | (基礎5)応用1〜応用5 |
| 2 初級〜中級 | 第9番 クレメンティ Op.36-3 | ハ長調 | (基礎5)応用1〜応用5 |
| 3 中級 | 第1番 クーラウ Op.20-1 | ハ長調 | 応用3〜応用7 |
| 3 中級 | 第2番 クーラウ Op.20-2 | ト長調 | 応用3〜応用7 |
| 3 中級 | 第3番 クーラウ Op.20-3 | ヘ長調 | 応用3〜応用7 |
| 3 中級 | 第10番 クレメンティ Op.36-4 | ヘ長調 | 応用3〜応用7 |
| 3 中級 | 第11番 クレメンティ Op.36-5 | ト長調 | 応用3〜応用7 |
| 3 中級 | 第12番 クレメンティ Op.36-6 | ニ長調 | 応用3〜応用7 |
| 3 中級 | ドゥシェック ソナチネ Op.20-1 | ト長調 | 応用3〜応用7 |
| 4 中級〜上級 | ベートーヴェン ソナタ第20番 Op.49-2 | ト長調 | 応用5〜発展3 |
| 4 中級〜上級 | モーツァルト ソナタ ハ長調 K.545 | ハ長調 | 応用6〜発展3 |
| 4 中級〜上級 | ベートーヴェン ソナタ第19番 Op.49-1 | ト短調 | 応用6〜発展4 |
| 4 中級〜上級 | ハイドン ソナタ ハ長調 Hob.XVI:35 | ハ長調 | 応用7〜発展3 |
※ステップは楽章ごとに幅をもって表示されているため、曲全体の目安としてまとめています。同じ段階の中は番号順に並べました。版によって番号や収録曲が異なる場合があります。
表を見るとわかるとおり、いちばんやさしいのは第4〜6番のクーラウOp.55、次が第7〜9番のクレメンティです。冒頭の第1番クーラウOp.20-1は、クレメンティのOp.36-4〜6と同じ「中級」の段階に入ります。
\弾きたい曲を1曲ずつ完成させる/
「ソナチネの難易度順」は基準で変わる|3つの順番を比べてみた

ソナチネの難易度順は、どの基準で測るかによって順番が入れ替わります。この記事ではピティナ・ステップを基準にしましたが、ピアノ講師のブログやQ&Aサイトでは別の順番が紹介されていることも多く、「結局どれが正しいの?」と迷う方もいるはずです。ここでは代表的な3つの考え方を比べて、共通点を取り出します。
基準1:ピティナ・ステップ(この記事の一覧表)
ピティナ・ピアノ曲事典のステップは、楽章ごとにレベルが登録されている客観的な指標です。曲全体で見ると、クーラウOp.55(第4〜6番)がいちばん低く、クレメンティOp.36-1〜3(第7〜9番)がそれに続き、クーラウOp.20(第1〜3番)は中級に入ります。「誰が見ても同じ基準」で比べられるのが強みで、独学の方が自分の現在地を測るのに向いています。
基準2:ピアノ講師が生徒に渡す「練習順序」
ピアノ講師のブログでは、第7番クレメンティOp.36-1を最初に渡し、次に第4番クーラウOp.55-1、そのあと第8番・第9番・第10番と進み、第6番・第12番は第1楽章だけを弾かせる、といった練習順序が紹介されています。ピティナの段階とは少し順番が違いますが、最初の2曲が第7番と第4番である点は共通しています。
全音楽譜出版社の版には目次に練習順序の目安が書かれており、解説付きの版には難易度の表示もあります。講師がこうした順序を参考にしつつ、生徒の手の大きさや得意不得意に合わせて組み替えている、というのが実際のレッスン現場に近い姿です。
基準3:「7番は実は難しい」という反対意見
一方で、Q&Aサイトには「第7番を最初に勧めるのは間違いで、第1番のほうが弾きやすい」という意見もあります。理由として挙げられているのは、クレメンティOp.36-1は冒頭から音域の移動が大きく、オクターブの跳躍やアルペジオ(和音の音を1つずつ順番に弾く弾き方)が頻出するのに対し、クーラウOp.20-1は音階のように隣の音へ進む順次進行が中心で、譜読みがしやすいという点です。
これは「何を難しいと感じるか」の違いです。手が小さい人や跳躍が苦手な人には第7番がつらく、長い曲を集中して弾き通すのが苦手な人には第1番がつらい。どちらの意見も、半分ずつ正しいと考えるのが自然でしょう。
3つの基準に共通する結論
順番の細かい違いはあっても、3つの基準から共通して言えることは次の3点です。
- 入口は第4番(クーラウOp.55-1)か第7番(クレメンティOp.36-1)。どの基準でも早い段階に出てくる
- クーラウOp.20(第1〜3番)とクレメンティOp.36-4〜6(第10〜12番)は後半。長さと表現の壁がある
- ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンのソナタは、ソナチネを数曲終えてから
迷ったら、この3点だけ守って、あとは「弾きたい曲」や「音源を聴いて気に入った曲」を優先して大丈夫です。難易度順はあくまで挫折を減らすための道具であって、守らなければならないルールではありません。
段階別に見るソナチネの特徴とつまずきポイント
ソナチネの難易度は、段階ごとに「何が増えるのか」を知っておくと練習の見通しが立ちます。ここでは4つの段階それぞれの特徴と、講師ブログなどで共通して指摘されているつまずきポイントを整理します。各段階の代表曲は、ピティナ公式YouTubeチャンネルの演奏動画もあわせて載せています。譜読みの前に一度聴いておくと、曲の全体像がつかみやすくなります。
段階1:クーラウOp.55(第4〜6番)は短くて取り組みやすい
クーラウのソナチネOp.55-1〜3は、ピティナのステップで「基礎5〜応用3」とされ、ソナチネアルバム1の中でいちばん低いレベルに位置づけられています。Op.55-1とOp.55-3は2楽章構成で、曲全体の長さも比較的コンパクトです。
ブルグミュラー25の練習曲を終えたばかりの方なら、まず第4番クーラウOp.55-1から始めると、ソナタ形式の流れを無理なく体験できます。Op.55-1はリズムに変化があって曲想をつけやすく、音が上がっていくところで自然にクレッシェンドをかけるだけでも、ぐっと曲らしく聴こえます。一方、第6番Op.55-3は3度・6度(2つの音を同時に鳴らす重音)の動きが多く、段階1の中では指の練習の要素が強い曲です。
作曲者のフリードリヒ・クーラウ(1786〜1832)はドイツに生まれ、デンマークのコペンハーゲンを拠点に活躍した作曲家です。フルート作品でも知られ、ピティナ・ピアノ曲事典の解説では、クーラウのソナチネはクレメンティと並んで古典派の音楽を学ぶうえで欠かせない作品とされています。明るく歌うような旋律が多いのも、クーラウのソナチネが親しまれている理由の一つです。
♪ クーラウ:ソナチネ Op.55-1 第1楽章(ソナチネアルバム第4番)
出典:ピティナ ピアノチャンネル PTNA(YouTube)
♪ クーラウ:ソナチネ Op.55-3 第1楽章(ソナチネアルバム第6番)
出典:ピティナ ピアノチャンネル PTNA(YouTube)
段階2:クレメンティOp.36-1〜3(第7〜9番)で古典派の基本を身につける
ムツィオ・クレメンティ(1752〜1832)は、イタリア出身の作曲家・鍵盤楽器奏者です。ピアノという楽器が発展していく時代に、演奏家・教育者としても活躍しました。ソナチネアルバムに収められたOp.36の6曲は、クレメンティの作品の中でも特に学習者に親しまれているシリーズです。
クレメンティの「段階的な6つのソナティナ」Op.36は、ピティナ・ピアノ曲事典によると1797年に出版され、1820年に一部改訂されました。タイトルのとおり段階的に難しくなる構成で、演奏時間も第1番の約3分30秒から、第5番の約8分20秒まで長くなっていきます。
同事典の解説では、Op.36-1は単純な形式や多様なアーティキュレーション(スラーやスタッカートなど音のつなぎ方・切り方)がそろい、古典派を理解するための要素が詰まった曲とされています。「ソナチネといえばクレメンティ」と言われるほど定番なのは、この学びやすさが理由です。
ただし、第7番Op.36-1を「いちばん簡単」と思って油断すると、オクターブの跳躍と左手のアルペジオでつまずきます。ブルグミュラーにもオクターブの跳躍は出てきますが、音型がパターン化されていて感覚をつかめば弾きやすいのに対し、ソナチネでは手首の柔らかさと指の広がりがそのまま問われます。「短いのに弾きにくい」と感じたら、原因はたいていここにあります。
♪ クレメンティ:ソナチネ Op.36-1 第1楽章(ソナチネアルバム第7番)
演奏:中川京子(ピティナ ピアノチャンネル PTNA/YouTube)
段階3:クーラウOp.20とクレメンティOp.36-4〜6は「長さ」と「表現」が壁
中級の段階に入ると、1曲の演奏時間がぐっと長くなります。ピティナ・ピアノ曲事典では、クーラウOp.20-2の全楽章で約10分30秒、Op.20-3で約11分30秒とされています。1つの楽章だけでも4分を超えるものがあり、最後まで集中を切らさずに弾き通す力が求められます。
クレメンティOp.36-4の第1楽章は、低音のトレモロの上に淡々とした第1主題が置かれ、スタッカートと掛け合いによる活発な第2主題と対比される構成です。音の数よりも、テーマごとの性格の弾き分けが難しくなってきます。左右の手が会話するように受け渡す場面が多く、ここを楽しめるかどうかで段階3の印象が変わります。
第12番Op.36-6は第1巻の中でも長めで、音型が次々に変わるため、通して弾こうとすると崩れやすい曲です。講師ブログでも「区切って練習する」ことが勧められていて、音型が変わるところで線を引いて、ブロックごとに仕上げてからつなぐのが近道です。
♪ クーラウ:ソナチネ Op.20-1 第1楽章(ソナチネアルバム第1番)
演奏:中田雄一朗(ピティナ ピアノチャンネル PTNA/YouTube)
♪ クレメンティ:ソナチネ Op.36-4 第1楽章(ソナチネアルバム第10番)
演奏:嶌村直嗣(ピティナ ピアノチャンネル PTNA/YouTube)
♪ クレメンティ:ソナチネ Op.36-6 第1楽章(ソナチネアルバム第12番)
演奏:中田雄一朗(ピティナ ピアノチャンネル PTNA/YouTube)
段階4:ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンは「ソナタ」への橋渡し
ソナチネアルバム1の後半に入っているハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの作品は、名前のとおり「ソナタ」です。ピティナのステップでは応用5〜発展4と、ソナチネより一段上のレベルに位置づけられています。ピアノ講師の中には「この3人はソナチネアルバムの中で無理に扱わず、ソナタを学ぶ段階で改めて弾けばよい」という考え方もあります。
中でもベートーヴェンのソナタ第20番Op.49-2の第2楽章(メヌエット)は、ステップが応用5からと比較的低めです。モーツァルトのK.545は「やさしいソナタ」として知られていますが、ステップでは応用6〜発展3。音が少ないぶん、粒のそろった音階や透明な音色がごまかせない曲だと考えておくとよいでしょう。モーツァルトの人物像についてはモーツァルトの生涯と代表曲で紹介しています。
♪ ベートーヴェン:ソナタ第20番 Op.49-2 第2楽章(メヌエット)
演奏:中川京子(ピティナ ピアノチャンネル PTNA/YouTube)
♪ モーツァルト:ソナタ ハ長調 K.545 第1楽章
演奏:中川京子(ピティナ ピアノチャンネル PTNA/YouTube)
ソナチネは何番から?おすすめの弾く順番

ソナチネアルバムを何番から始めるか迷ったら、第4番(クーラウOp.55-1)か第7番(クレメンティOp.36-1)からがおすすめです。どちらもピティナのステップで基礎5から設定されている、アルバムの中でいちばん入りやすい曲です。
おすすめルート:クーラウとクレメンティを交互に
独学の方や、なるべく挫折せずに進めたい方には、段階1と段階2を交互に弾くルートをおすすめします。
- 第4番 クーラウ Op.55-1
- 第7番 クレメンティ Op.36-1
- 第5番 クーラウ Op.55-2
- 第8番 クレメンティ Op.36-2
- 第6番 クーラウ Op.55-3
- 第9番 クレメンティ Op.36-3
- ここから段階3(第1〜3番、第10〜12番)へ
作曲者を交互にすると、クーラウの明るく歌う旋律と、クレメンティのきびきびとした古典派らしさを行き来でき、同じ作曲者が続くよりも飽きにくくなります。
ちなみに、ピアノ講師のブログを読むと「子どもはブルグミュラーよりソナチネをつまらなく感じやすい」という声が見つかります。ブルグミュラーには「アラベスク」「貴婦人の乗馬」のような題名があって曲の情景を想像しやすいのに対し、ソナチネは「Op.36-1」のような番号しかないからです。大人も同じで、番号だけで選ぶと気持ちが乗りません。だからこそ、弾く前に音源を聴いて「この曲が好き」と思えるものを選ぶ価値があります。
段階3へ進む前のチェックポイント
段階1・2の6曲を終えて段階3(クーラウOp.20やクレメンティOp.36-4〜6)に進む前に、次の点を確認しておくと安心です。
- 第1楽章を止まらずに通して弾ける(途中で弾き直さない)
- スラーとスタッカートの弾き分けが、録音で聴いても分かる
- 提示部・展開部・再現部が楽譜のどこから始まるか、自分で指させる
- 4〜5分程度の曲を最後まで集中して弾き通せる
段階3の曲は1曲の演奏時間が長くなるため、「最後まで集中力を保てるか」が特に重要になります。チェックが付かない項目があれば、段階2の曲をもう1曲増やしてから進むのも良い選択です。
先生がいる場合は番号順でもOK
レッスンに通っている場合は、先生の方針で第1番から順に進めることもあります。第1番クーラウOp.20-1は段階3に入りますが、先生のサポートがあれば十分に取り組めます。前の章で触れたとおり「第1番は順次進行が多くて譜読みしやすい」という見方もあるので、先生が第1番を選んだなら、それにはそれなりの理由があります。むしろ、独学で第1番から始めて止まってしまった方は、いったん第4番や第7番に戻ると流れがつかみやすくなります。
ソナチネを始める時期の目安
ソナチネを始める時期は、ブルグミュラー25の練習曲の後半あたりが一般的な目安です。ブルグミュラーで16分音符・3連符・ペダルなどに一通り触れていれば、段階1・2のソナチネに無理なく入れます。教室によっては、ブルグミュラーを終えるのを待たずに途中から並行して進めるところも多くあります。
「ソナチネに入る準備ができているか」を自分で確かめるなら、次の4つが目安になります。
- 両手の譜読みが、1段ずつなら自力でできる
- ハ長調・ト長調・ヘ長調の音階を、指くぐりを含めて2オクターブ弾ける
- 左手のアルベルティ・バス(ド・ソ・ミ・ソのように和音を分けて弾く伴奏)を、一定のテンポで保てる
- 強弱・スラー・スタッカートの違いを意識して弾き分けられる
ブルグミュラーからソナチネに移ると、楽譜の音符が急に小さく見えて難しく感じる、という声もよく聞かれます。曲が長くなり、楽譜が複雑になるため、ブルグミュラーより1段階上がったように感じるのは自然なことです。基礎練習とのバランスは、ピアノ基礎練習を独学で続けるコツと練習メニューも参考にしてください。
ソナチネは全楽章弾くべき?楽章の選び方

ソナチネは可能であれば全楽章を通して弾くのが理想ですが、目的によっては楽章を選んで弾く方法もあります。多くのソナチネは「速い第1楽章→ゆっくりした第2楽章→速い終楽章」という構成で、楽章ごとに学べることが違うからです。
実際のレッスンでは、練習用のソナチネは速い楽章(第1楽章と終楽章)だけを弾き、ゆっくりした第2楽章は省略することも珍しくありません。ただし、ソナタに進む前に、少なくとも数曲は全楽章を通して弾いておくと、ソナタの長さに戸惑わずに済みます。
第1楽章:ソナタ形式を体で覚える
第1楽章の多くはソナタ形式で書かれています。たとえばピティナ・ピアノ曲事典の解説によると、クレメンティOp.36-3の第1楽章では、第2主題が13小節目から属調のト長調で現れ、展開部でハ短調に転調し、再現部で主調に戻ってきます。「どこからテーマが戻ってくるか」を楽譜に書き込みながら練習すると、暗譜もしやすくなります。
♪ クレメンティ:ソナチネ Op.36-3 第1楽章(ソナチネアルバム第9番)
演奏:中田雄一朗(ピティナ ピアノチャンネル PTNA/YouTube)
ソナタ形式を自分で分析できるようになることは、ソナチネアルバムの大きな目的の一つです。提示部でテーマAとテーマBを見つけ、展開部でそれがどう姿を変え、再現部でどう戻ってくるかを追えると、ベートーヴェンやモーツァルトのソナタを弾くときにも同じ目で楽譜を読めるようになります。
第2楽章:歌うことと音色のコントロール
ゆっくりした第2楽章は、指の速さよりも旋律を歌わせる力が問われます。ピティナのステップでも、クレメンティOp.36-1〜3の第2楽章は基礎5から設定されており、技術的にはやさしめです。ただし、ゆっくりだからこそ1音1音の音色や、伴奏とのバランスが目立ちます。
「第2楽章は飛ばす」という進め方が多い一方で、「第2楽章を飛ばすのはもったいない」という意見もあります。短くて難度が低めなので、通して弾ける曲を増やしたい時期には、第2楽章だけを拾って仕上げるのも一つの方法です。モーツァルトK.545の第2楽章(アンダンテ)は、その代表例としてよく名前が挙がります。
♪ モーツァルト:ソナタ ハ長調 K.545 第2楽章(アンダンテ)
演奏:中川京子(ピティナ ピアノチャンネル PTNA/YouTube)
終楽章:軽やかなリズムと推進力
終楽章はロンド形式など、テーマが何度も戻ってくる明るい曲が多く、発表会で単独で弾かれることもあります。ピティナ・ピアノ曲事典に掲載されているクレメンティOp.36-6第2楽章の解説では、6/8拍子で前へ進む曲として、フェルマータ以外で不要に止まらないことが勧められています。テンポを保って最後まで弾き切ることが、終楽章の一番の課題です。
♪ クレメンティ:ソナチネ Op.36-6 第2楽章(終楽章)
演奏:中田雄一朗(ピティナ ピアノチャンネル PTNA/YouTube)
目的別・楽章の選び方の例
全楽章を弾く時間がとれないときは、目的に合わせて楽章を選ぶと効率よく学べます。
| 目的 | 優先して弾く楽章 | 理由 |
|---|---|---|
| ソナタ形式を理解したい | 第1楽章 | 提示部・展開部・再現部の流れを体験できる |
| 表現力・音色を磨きたい | 第2楽章 | ゆっくりした旋律で、音のバランスに集中できる |
| 発表会で弾きたい | 終楽章 | 明るく華やかで、単独でもまとまりがある |
| 通して弾ける曲を早く増やしたい | 第2楽章 | 短く技術的にやさしめで、仕上がりが早い |
| 次の段階に進む力をつけたい | 全楽章 | 長い曲を通して弾く集中力がつく |
楽章を選んだ場合でも、一度は全楽章を音源で通して聴いておくのがおすすめです。曲全体のなかでその楽章がどんな役割を担っているかが分かると、テンポや表情の付け方に迷いにくくなります。
独学でソナチネを1曲仕上げる練習法

ソナチネを独学で仕上げるコツは、「音源を先に聴く」「小さく区切る」「ゆっくり正確に」の3つに尽きます。ブルグミュラーと違って曲が長く、タイトルもないので、全体像をつかまないまま弾き始めると、どこを練習しているのか分からなくなりやすいからです。
ステップ1:弾く前に音源で全体像をつかむ
ソナチネにはタイトルがありません。「Op.36-1」という名前から曲の雰囲気を想像するのは無理なので、弾き始める前に全楽章を音源で聴いておきましょう。聴きながら「ここでテーマが戻ってきた」「ここから暗くなった」と感じた場所に印を付けておくと、あとで提示部・展開部・再現部を探す手がかりになります。
ステップ2:片手で2〜4小節ずつ、音価を正確に
難所は2〜4小節程度に区切り、片手ずつ練習します。ソナチネでつまずく原因の多くは、8分音符が走ったり、16分音符が遅れたりといった音価(音の長さ)のずれです。速い音符のスタッカートや、トリルの回数を適当に済ませる癖も、このときに直しておきます。左手は単独で一定のテンポを保てるかを必ず確認してください。両手で止まる場所は、片手に戻すと原因が切り分けられます。
ステップ3:両手でゆっくり、メトロノームで一定に
両手に進んだら、「ほぼ間違えずに音をそろえられる速さ」から始めます。速く弾いて何度もミスするより、遅くても正確に弾くほうが、結果的に早く仕上がります。部分練習の段階からメトロノームを使い、一定のテンポで弾ける状態をつくってから、少しずつ上げていきます。
ステップ4:週1回は通して録音する
ソナチネはブルグミュラーより1曲が長いため、通して弾いたときに後半で崩れていても気づきにくくなります。週に1回は通し演奏を録音し、再現部でテーマが戻ってきたところのテンポや強弱が、冒頭と比べてどうなっているかを聴き比べてみましょう。自分の音を第三者の耳で聴く習慣は、ソナタに進んでからも役に立ちます。
ステップ5:止まったら1つ下の段階に戻る
何週間たっても同じ場所で止まる場合は、曲そのものではなく技術が足りていないサインです。その曲を無理に続けるより、1つ下の段階のソナチネや短い曲に戻って、苦手な技術(跳躍・重音・アルベルティ・バスなど)を補ってから戻ってくるほうが、結果的に早く仕上がります。独学で伸び悩んだときのサインはピアノ独学の限界はどこ?伸び悩む7つのサインと教室に切り替える目安でも整理しています。
大人・独学でソナチネアルバムを進めるコツ
大人が独学でソナチネアルバムを進めるときは、「難易度順に選ぶ」「楽譜の版を選ぶ」「形式を意識する」の3つを押さえると、途中で止まりにくくなります。
解説付きの版を選ぶ
ソナチネアルバムには複数の版があります。たとえば音楽之友社の「ソナチネアルバム」解説付きの版は、各曲に構造を一目で把握できる図と文章が付いていると紹介されています。全音楽譜出版社からは、今井顕氏が初版や初期の楽譜にもとづいて校訂した版も出ています。独学なら、曲の構造が解説されている版を選ぶと、先生の代わりに道しるべになってくれます。
版によって指使いが違うこともあり、ピアノ講師の中には「別の版の指使いに変えたら急に弾きやすくなった」という経験を語る方もいます。1つの版で行き詰まったら、別の版の指使いを見てみるのも手です。
レベルを気にしすぎず「弾きたい曲」を優先する
大人の学習者に対しては、ピアノ講師の多くが「レベルを気にしすぎず、弾きたい曲を見つけて楽しむこと」を勧めています。好きな曲であれば、今のレベルを少し超えていても完成できる例は多く、情熱と適切な助言があれば区分にとらわれずに弾けるようになる、という考え方です。
難易度順は、「1番から弾いて挫折する」ことを避けるための地図であって、「この順番でなければ上達しない」という決まりではありません。音源を聴いて気に入った曲があれば、段階が少し上でも挑戦してみてください。難しければ保留して、実力がついてから戻ってくればよいだけです。
「何番まで進んだか」で人と比べない
ソナチネは進度の目安として使われることが多いため、「○年生でソナチネの何番」といった比べ方をされがちです。けれども、同じ曲でも楽章によって求められる速さや指の動きは違い、曲名や番号だけでは実力を測れません。比べるなら、他人ではなく半年前・1年前の自分の演奏と比べるのがいちばん確かです。大人になってから再開した方は、【大人のピアノ再開】何から始める?ブランク別の教本・練習曲と中級の壁も参考になります。
止まったら先生に一度見てもらう
段階3以降の長いソナチネで止まってしまったときは、オンラインレッスンなどで一度演奏を見てもらうのも一つの方法です。強弱の付け方やフレーズのまとめ方は、自分ひとりでは判断しにくい部分です。短期間だけでも客観的なアドバイスをもらうと、その後の独学がスムーズになります。大人の独学の進め方全般は、大人のピアノ独学は何から始める?60日で1曲弾ける練習の順番で詳しく解説しています。
\まずは体験レッスンから/
ソナチネアルバムの次に進む曲集

ソナチネアルバムの段階3までを終えたら、次はいよいよソナタです。ソナチネアルバムの類似曲集として「ソナタアルバム」があり、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどのソナタが収められています。
橋渡しの2曲:ベートーヴェンOp.49-2とモーツァルトK.545
ソナチネアルバム1の後半に入っているベートーヴェンのソナタ第20番Op.49-2や、モーツァルトのK.545は、ソナチネからソナタへの橋渡しにちょうどよい曲です。ソナタアルバムに進む前に、まずはこの2曲のどちらかに挑戦してみると、自分の現在地を確かめられます。
ソナタの最初の1〜2曲として選ばれやすいのは、ハイドンならHob.XVI:35を含むハ長調・ニ長調のソナタ、モーツァルトならK.545やK.283、ベートーヴェンならOp.49の2曲と第25番「かっこう」あたりです。ここを1〜2曲弾いてから、「悲愴」「月光」といった有名曲に向かうのが王道の流れです。ベートーヴェンのソナタの難易度はベートーヴェン「熱情」の難易度の記事でも触れています。
ソナタと並行して「3つの柱」を育てる
ソナチネを終えたあとは、曲の難易度だけでなく「どの力を育てるか」を考える段階に入ります。練習時間が限られている大人ほど、片っ端から弾くのではなく、次の3つの柱から1曲ずつ選んで並行して進めると伸びやすくなります。
- ポリフォニー:バッハのインヴェンション。左手でも旋律を歌えるようにする。順番はバッハ インベンション難易度順|何番から弾く?全15曲の順番と目安を参考に
- 古典派のソナタ:ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンから、まず1曲
- ロマン派以降の小品:シューベルトの即興曲、メンデルスゾーンの無言歌、ショパンのワルツやノクターンなど
ソナチネアルバムで身につけた「形式を読む目」は、この3つの柱すべてで役に立ちます。ソナチネは通過点ですが、通過点だからこそ、ここで古典派の弾き方の土台を固めておく価値があります。
まとめ:ソナチネは難易度順に選べば挫折しにくい
この記事では、ソナチネアルバム1の収録曲を難易度順に4段階で整理し、基準の違う3つの順番を比べたうえで、おすすめの弾く順番と独学の練習法を紹介しました。
- やさしい曲・難しい曲は?→いちばんやさしいのは第4〜6番のクーラウOp.55、次が第7〜9番のクレメンティOp.36-1〜3。第1番クーラウOp.20-1と第10〜12番は中級、ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンのソナタは一段上のレベルです。
- 何番から弾き始める?→第4番か第7番から。ピティナ基準でも講師の練習順序でも、この2曲が入口になります。跳躍が苦手なら第4番、長い曲が苦手なら第7番から。
- 全楽章弾くべき?→理想は全楽章。目的に応じて第1楽章(形式の学習)や終楽章(発表会)を選ぶ方法もあり、第2楽章だけ仕上げて「通せる曲」を増やすのも一つの手です。
ソナチネの難易度順を知っておくだけで、「弾けない自分」を責める必要がなくなります。この記事の一覧表を参考に、まずは第4番か第7番から始めてみてください。ソナチネの先にあるベートーヴェンのソナタに興味がわいたら、ベートーヴェンの生涯と代表曲もあわせてどうぞ。
ソナチネで止まったら、一度だけプロに見てもらう
段階3以降のソナチネは、独学だと「どこが崩れているか」に気づきにくい曲が増えます。オンラインの単発レッスンなら、1回の体験で弾き方のクセと次の課題がはっきりします。