トロイメライの難易度は全音D?ピアノ初心者が弾くための目安と練習法

シューマンのトロイメライの難易度は、全音ピアノピースの評価で「D(中級上)」です。「子供の情景」という曲集の1曲で、楽譜はわずか1ページ、テンポもゆっくり。それなのに「中級上」と聞いて、意外に感じた方も多いのではないでしょうか。

実は、トロイメライの難易度はピアノ経験者のあいだでも評価が割れる曲です。「音を並べるだけならBくらい」と言う人もいれば、「プロでも聞かせるのは難しい」と言う人もいます。どちらも正しい、というのがこの曲の面白いところで、「音を並べる難しさ」と「歌わせる難しさ」が別物として存在しているのがトロイメライです。

  • トロイメライの難易度は、全音や他の基準で見ると結局どのくらい?なぜ評価が割れるの?
  • 1ページでゆっくりなのに、具体的にどこが難しいの?
  • ピアノ初心者がトロイメライを目標にするなら、何年目に・何から始めればいい?

この記事は、トロイメライを弾いてみたいピアノ初心者や、大人になってピアノを再開した方に向けて書いています。難易度評価の根拠から、実際に取り組んだ人がつまずいた箇所、声部を分解する練習法、22小節の「届かない和音」の対処法まで、順番にお答えします。

目次

トロイメライの難易度は全音ピアノピースで「D(中級上)」

全音ピアノピースの6段階でトロイメライがD(中級上)に位置することを示す図

トロイメライの難易度は、全音ピアノピースの基準で「D(中級上)」です。全音ピアノピースでは「No.005 トロイメライ/ロマンス」として、同じシューマンの小品「ロマンス」と組み合わせて出版されています。A〜Fの6段階のうち上から3番目で、ソナチネを終えてソナタに入る頃の人が目標にするランクです。

全音ピアノピースの6段階で見るトロイメライの位置

ランク レベル 同じランクの主な曲(全音ピアノピース)
A 初級 モーツァルト「メヌエット」など
B 初級上 モーツァルト「トルコマーチ」
C 中級 バダジェフスカ「乙女の祈り」、サティ「3つのジムノペディ」
D 中級上 シューマン「トロイメライ/ロマンス」、メンデルスゾーン「春の歌」、シューマン「飛翔」、モーツァルト「きらきら星変奏曲」、ドビュッシー「夢想」、ショパン「華麗なる大円舞曲」
E 上級 ベートーヴェン「月光の曲」、ショパン「幻想即興曲」
F 上級上 ショパン「革命のエチュード」など

※全音ピアノピースの難易度分類にもとづく(2026年10月時点)。

同じDには、「きらきら星変奏曲」や「華麗なる大円舞曲」など、指がよく回ることを求められる曲が並んでいます。速いパッセージがほとんどないトロイメライが同じDにいるのは、指の速さとは別の種類の難しさがあるからです。

他の基準ではどう評価されている?

全音以外の基準も見ておくと、トロイメライの立ち位置がよりはっきりします。

基準 トロイメライの評価 補足
全音ピアノピース D(中級上)/6段階 「ロマンス」との2曲セットの評価
Henle(ヘンレ)基準を参考にした国内サイト 5(中級)/9段階 「子供の情景」13曲は4〜5に分布
無料楽譜サイト PiaDOOR 3(中級)/5段階 必要技術は「ポリフォニー・ペダル・旋律の受け渡し」
Yahoo!知恵袋の経験者回答 「音を並べるならB、聞かせるならプロでも難しい」 評価が分かれる典型例

注目してほしいのは、どの基準でも「中級」という言葉が共通していること、そして経験者ほど「音を並べる」と「聞かせる」を分けて語ることです。

なぜ評価が割れる?「2層構造」の難しさ

トロイメライの難易度が人によってB〜Dと割れるのは、この曲に2つの層があるからです。

  • 第1層:音を並べる難しさ……ゆっくりで1ページ。譜読み自体は難しくなく、初級上〜中級で届く
  • 第2層:歌わせる難しさ……複数の声部を弾き分け、小さな音で響きをつなぎ、フレーズに息づかいを持たせる。ここは中級上どころか「一生かけて深める」領域

全音のD(中級上)は、この2層を合わせた「曲として仕上げる」レベルに対する評価だと考えると納得がいきます。ピアノ初心者にとっては、まず第1層を目標にすれば十分現実的で、第2層はピアノを続けるかぎり何度でも戻ってこられる宿題です。

ソラ
「音を並べるならB」って聞くと、初心者でもいけそうな気がしてきた…!
カイ
いけるよ。ただ、通して弾けたあとに「ただ弾いているだけに聞こえる」って壁が待っている。そこからがトロイメライの本番なんだ。

「子供の情景」なのに難しい理由

トロイメライが収められた「子供の情景」Op.15は、子どもが弾くための練習曲集ではありません。シューマン自身がこの曲集を「子供心を描いた、大人のための作品」として書いたとされ、曲名についても「演奏と解釈のための繊細なヒントにすぎない」と語っています。つまり子どもの世界を大人が思い返して描いた音楽であり、弾き手にも大人の感性と表現力が求められます。曲集のタイトルにだまされて「子ども向けの簡単な曲」と思い込むと、楽譜を開いたときのギャップに驚くことになるでしょう。

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トロイメライはどんな曲?難易度に関わる曲の成り立ちと構成

トロイメライの4小節のフレーズが8回繰り返される構成を示す図

トロイメライの難易度を正しくつかむには、曲の成り立ちと構成を知っておくことが近道です。トロイメライはロベルト・シューマンが1838年に作曲したピアノ曲集「子供の情景」Op.15の第7曲で、ドイツ語の「Träumerei」は「夢想」「夢見ること」という意味です。ヘ長調、4分の4拍子、演奏時間は約2分30秒〜3分です。

「4小節のフレーズ×8回」というシンプルな構成

楽譜を見ると分かりますが、トロイメライは冒頭の「ド・ファーミファラドファファ…」という4小節の旋律が、ニュアンスを変えながら合計8回現れる構成になっています。細かく見ると、1回目・3回目・7回目はほぼ同じ動き、2回目と4回目もほぼ同じで、最後の8回目だけが終わりの2小節で変化します。

つまり最初の8小節(1回目と2回目)をしっかり弾けるようになれば、曲の大部分は弾けたも同然です。これは初心者にとって大きな安心材料ではないでしょうか。1ページの曲を「32小節の別々の音楽」と思って構えるのと、「4小節の歌を8回、少しずつ表情を変えて歌う」と捉えるのとでは、練習の見通しがまったく違います。

弱起(アウフタクト)で始まる曲

トロイメライは、小節の頭ではなく弱起(アウフタクト)、つまり小節の途中の弱い拍から始まります。耳になじんだ旋律なのに、いざ弾くと拍子感がつかみにくいのはこのためです。無料楽譜サイトPiaDOORでも「1、2、3、4と数えてから入る」ことが勧められており、最初の「ド」は弱拍として軽く弾き始めるのが基本です。この一音の入り方が、曲全体の「夢見るような」雰囲気を決めます。

クララとの関係と、曲に込められた気分

シューマンは「子供の情景」について、のちに妻となるクララから「あなたは時々子どものようだ」と言われたことがきっかけになったと書き残しています。当初30曲ほどの小品を書き、その中から13曲を選んで曲集にまとめました。トロイメライの、どこか遠くを見つめるような穏やかな旋律は、激しい感情ではなく、静かに思いをめぐらせる時間を描いているように聴こえます。

ある大人の学習者は、子ども時代を懐かしむ情景や、映画で主人公が人生を振り返るシーンを思い浮かべたら弾きやすくなったと語っています。曲に「場面」を与えることは、表現の難しさを乗り越える最初の手がかりになります。

名ピアニストのアンコールとしても有名

トロイメライは、名ピアニストが演奏会のアンコールで弾く曲としても知られています。なかでもウラディミール・ホロヴィッツが1986年4月、61年ぶりの帰郷となったモスクワでの演奏会のアンコールで弾いたトロイメライは、映像でも残る名演として語り継がれています。世界的な巨匠が、最後の1曲に技巧的な曲ではなくトロイメライを選んだという事実は、この曲が「音の少なさ」ではなく「表現の深さ」で勝負する曲であることを物語っています。

▲ ホロヴィッツが弾くトロイメライ(medici.tv公式チャンネル)

ソラ
4小節が8回って、覚える量は少ないんだね。でも同じ旋律を8回も、飽きさせずに弾けるかな…。
カイ
そこがまさに「歌わせる難しさ」だね。8回とも同じに弾いたら退屈で、全部変えたら不自然。1回目と繰り返しで歌い方を少し変えてみる、くらいから始めるといいよ。

有名なピアニストたちのエピソードは、有名なピアニストを紹介した記事でも紹介しています。

トロイメライの難しいポイント5つ|経験者がつまずいた箇所

トロイメライの旋律・内声・低音の3つの声部と音量の目安を示す図

トロイメライの難しいポイントは、①内声の弾き分け、②旋律の受け渡し、③届かない和音、④ペダルと小さな音、⑤テンポの揺らし方の5つです。どれも指の速さとは関係がなく、「耳」と「手のコントロール」が問われる難しさです。実際に取り組んだ学習者やピアノ講師の声をもとに、具体的に見ていきましょう。

1. 「押さえながら動かす」内声の弾き分け

トロイメライは、一番上の旋律だけでなく、その下で動く内声(旋律と低音の間で動く声部)にも歌うような動きがあります。しかも一部の音を押さえたまま、別の指で他の声部を動かす必要があり、ピアノ講師はこれを「押さえながら動かす系」の曲と呼んでいます。同じ仲間として挙げられているのが、ベートーヴェン「悲愴」第2楽章、リスト「愛の夢」、ショパン「別れの曲」です。

この「押さえながら動かす」が、トロイメライを中級上にしている最大の理由です。全部の音を同じ大きさで弾くと、響きがぼやけて旋律が聴こえなくなります。ある大人の学習者は、弾いていて「脳みそが2つ以上、腕も6本くらい欲しい」と感じたと書いていますが、初めてこの曲に向き合った人の実感そのものではないでしょうか。

また、トロイメライは和声(和音の響きの移り変わり)の面でも難しい曲です。春畑セロリ氏の『コードの達人 超入門編』は、トロイメライを例に和音の響きの違いを解説した本として、ピアノ講師がレッスンで参考にしているほどです(現在は絶版のため中古での入手になります)。「今どの和音の上にいるか」を感じながら弾くだけで、音の強弱のつけ方が自然に変わってきます。

2. 旋律が右手と左手を行き来する

トロイメライでは、旋律が右手だけに固定されていません。中間部から再現部にかけて、左手から右手へ、右手から左手へとフレーズを受け渡す箇所があり、受け渡しの瞬間に音色や音量が変わると、旋律が途切れて聴こえてしまいます。

楽譜上も、どちらの手で弾くのかすぐに判断しにくい箇所があり、大人の学習者が「譜読みで戸惑った」と語るポイントでもあります。対策はシンプルで、楽譜に色ペンで旋律・内声・低音を塗り分け、受け渡しの箇所に矢印を書き込むこと。タイやスラーが多くて読みにくい場合は、タイでつながった音に斜線を引いて「もう一度弾かない音」を見える化するのもおすすめです。

3. 22小節の「届かない和音」

トロイメライで最も多くの人が止まるのが、曲の終わり近く、フェルマータの付いた第22小節の和音です。左手は10度(1オクターブ+3度)の広い和音で、手の大きな人以外はまず届きません。右手も10度で、届く人でも余裕はありません。

手が届かない場合の弾き方は1つではなく、大人の学習者がYouTubeや音源を聴き比べたところ、少なくとも次の5通りが見つかったそうです。

  1. 楽譜どおりに両手の和音を同時に弾く(手が大きい人向け)
  2. 左手から右手へ受け渡すように、全体をアルペジオ(和音の音を下から順に鳴らす)にする
  3. 左手だけアルペジオにし、右手は和音で弾く
  4. 左手の最低音2つ(ソ・シ)を先に分けて弾き、残りを和音で弾く
  5. 左手の最低音(ソ)だけを先に弾き、残りを和音で弾く

その学習者が最終的に選んだのは4の方法でした。響きが好みに合い、弾きやすかったからだそうです。「届かない和音は下から順に弾く」のは、トロイメライでは立派な正攻法で、レッスンでも「アルペジオは大丈夫」と認められています。全部の音を完璧に鳴らそうとするより、左手の最低音「ソ」と右手の最高音「ラ」を確実に鳴らすほうが、聴こえ方は安定します。

4. ペダルと「小さな音で弾く」難しさ

声部が重なり合うトロイメライでは、ダンパーペダル(右ペダル)で響きをつなげることが欠かせません。ただし、踏みっぱなしにすると和音が混ざって濁ります。和音や低音が変わるところで、こまめに踏みかえるのが基本です。

経験者のアドバイスで共通しているのが、ペダルを全部踏み込まないこと。踏みかえが速い箇所は浅めに踏むと楽になり、曲全体でも1/2や1/3の深さを使い分けると響きが濁りにくくなります。楽譜のペダル記号は「あくまで参考」と割り切り、自分の耳で濁りを判断するのがトロイメライのペダルです。部分的に左ペダル(ソフトペダル)を使う手もあります。

そしてペダル以上に難しいのが、小さな音で弾くことです。ある経験者は、多くの学習者はまだ音が大きすぎると指摘し、消え入るような演奏には中級者以降の技術が必要だと述べています。pp(ピアニッシモ)で音がかすれず、芯のある柔らかい音を出すには、鍵盤を「叩く」のではなく「押し込む」感覚と、手首の柔らかさが必要です。

5. テンポの揺らし方(ルバート)とフレーズの息づかい

トロイメライには、フェルマータ(音を十分に伸ばす記号)や、rit.(だんだん遅く)とa tempo(元の速さで)がたびたび出てきます。テンポを自然に揺らす表現はルバートと呼ばれ、やりすぎると不自然に、控えめすぎると機械的に聴こえます。

ここで参考になるのが、1か月以上自主練習したトロイメライを初めてレッスンで聴いてもらった大人の学習者の記録です。譜読みに間違いはなく音もきちんと取れていたのに、先生の評価は「ただ弾いているように聞こえる」。言われたのは、フレーズとブレス(息継ぎ)が感じられる演奏にすること、ブレスで音が「ブツっ」と途切れないこと、そして手首の使い方でした。拍を意識しすぎると手首がぎこちなくなる、という気づきも残しています。

ルバートは「正確に弾けるようになってから」が鉄則です。まずメトロノームで元のテンポを体に入れ、そのうえでrit.とa tempoを「心地よさ優先」で揺らす。元のテンポを見失わないかぎり、揺らし方は自由です。

トロイメライはピアノ何年目で弾ける?教本の進度で見る目安

教本の進度と仕上げたいレベルから見たトロイメライが弾ける目安のマトリックス図

「ピアノ何年目でトロイメライが弾けるか」は、年数よりも今どの教本を弾いているか、そして「どこまで仕上げたいか」で考えるのが確実です。トロイメライは、音を並べるだけの段階と、表現まで仕上げる段階で、必要な力が大きく違う曲だからです。

実際に弾いた人の「年数」はこのくらい

経験者の声を集めると、目安が見えてきます。

  • ピアノを始めて2年で発表会で演奏したという人がいます。テンポはゆっくりだが指を大きく広げる箇所があり、譜読みがやや複雑でペダルも必要なので「難しいが、できないとは思わない」という感想でした
  • 経験者からは「ソナチネに入った程度であれば弾けるのではないか」という目安も示されています
  • 大人になってから再開した学習者は、1か月以上の自主練習で通して弾けるようになり、そこからレッスンで「歌わせる」段階に入ったと記録しています

つまり「音を並べて通す」までなら、ソナチネ前後・始めて2〜3年目で十分射程内です。一方で「歌わせる」段階は、その先に長く続きます。

教本の進度とトロイメライの目安表

今の段階 おすすめの取り組み方 目標
導入教本・バイエルの途中 簡単版(初級アレンジ) 旋律を覚えて雰囲気を楽しむ
ブルグミュラー25の練習曲 原曲の最初の8小節を、ゆっくり 音を並べ、和音の形に慣れる
ソナチネ 原曲の全曲(22小節の和音は分散で) 旋律と内声を弾き分ける
ソナチネ修了〜ソナタ 原曲を表現まで仕上げる(全音No.005) ペダル・ルバート・ブレスで歌わせる

この表は、各教本で身につく技術とトロイメライで求められる技術を照らし合わせた当サイトの目安です。全音Dという評価に素直に従うなら、ソナチネを終えてソナタに入る頃が、トロイメライを表現まで仕上げる目安になります。

「1度目は音を並べる、数年後に歌わせる」という考え方

ある学習者の提案が、初心者にとって非常に現実的です。1度目は楽譜どおりに指を動かすことを目標にし、数年後に「歌う」ことを目標に再挑戦する。トロイメライは1ページの短い曲なので、何年か経ってから戻ってきても負担が小さく、そのときには以前見えなかった和音の色合いや、内声の動きに気づけます。「一度で仕上げきらないといけない」と思わないことが、この曲と長く付き合うコツです。

同じ「子供の情景」の中で先に弾ける曲もある

「子供の情景」には、トロイメライより取り組みやすい曲も含まれています。Henle基準を参考にした国内の楽譜サイトでは、13曲が「4(中級)」と「5(中級)」の2段階に分かれており、トロイメライは5のグループです。第1曲「見知らぬ国と人々について」、第2曲「不思議なお話」、第4曲「おねだり」、第6曲「重大な出来事」、第13曲「詩人は語る」が4のグループで、特に第2曲・第4曲・第6曲は演奏時間が1分前後と短く、最初の1曲に向いています。

シューマン特有の声部の重なりに、まず短い曲で慣れてからトロイメライに進むという順番は、遠回りに見えて効果的です。

▲「子供の情景」全13曲(ティファニー・プーン/DW Classical Music公式チャンネル)

子どもの頃に習っていた大人の場合

子どもの頃にソナチネやソナタまで進んでいた方なら、ブランクがあってもトロイメライは現実的な目標です。声部を聴き分ける耳や、和音を押さえる手の形は、ブランクがあっても比較的早く戻ってくることが多いからです。一方で、指の独立やペダルの感覚は鈍っていることがあるので、最初の数週間は音階やハノンで指を慣らし、ゆっくりした小品でペダルの踏みかえを思い出してから取り組むと安心です。

指の間を広げるストレッチを入浴時などに行うと弾き心地が変わる、という大人の学習者の工夫も、再開組には特に有効です。大人になってから改めてトロイメライを弾くと、子どもの頃には気づかなかった和音の色合いや、旋律の切なさに気づけるのも再開組ならではの楽しみです。

ピアノ初心者がトロイメライを目標にするなら

結論から言うと、ピアノ初心者がトロイメライを「目標曲」にすることは十分に意味があります。全音Dという難易度だけを見ると遠く感じますが、トロイメライは速さを求められないため、時間をかければ音を並べるところまでは初心者でも届きます。大切なのは、段階を分けて目標を設定することです。

3段階で目標を設定する

  • 第1段階:簡単版で旋律を覚え、トロイメライの雰囲気を自分の指で味わう
  • 第2段階:原曲の最初の8小節を、ペダルなしでゆっくり弾けるようにする(ここまでで曲の大部分の型が身につく)
  • 第3段階:原曲を通して弾き、旋律と内声の弾き分け、22小節の和音の弾き方を決める

第1段階だけでも、トロイメライの旋律を自分で鳴らす喜びは十分に味わえます。「いきなり原曲で完璧に」を目指さないことが、初心者が挫折しないための一番のコツです。

初心者が先に身につけておきたい基礎

トロイメライの原曲に進む前に身につけておきたいのが、片手の中で旋律の音だけを少し大きく弾く練習と、ペダルの踏みかえです。どちらもトロイメライに限らず、ショパンのノクターンや、ゆっくり歌う曲すべてに役立つ基礎になります。ショパンのノクターンの難易度についてはショパンのノクターンの難易度一覧で詳しく紹介しています。

もう1つ、意外と見落とされるのが「小さな音で弾く」練習です。経験者が口をそろえて「学習者の音は大きすぎる」と言うように、pで弾いているつもりでも録音すると案外大きいものです。スケールを全部ppで弾く、片手ずつ「聞こえるか聞こえないかの音量」で弾く、といった練習をメニューに加えておくと、トロイメライに入ったときの仕上がりが変わります。

大人の初心者にトロイメライが向いている理由

大人の初心者には、トロイメライのようなゆっくりで表現力が問われる曲が向いていることが少なくありません。指の速さで勝負する曲は、練習時間の限られる大人にとってハードルが高い一方、ゆっくりした曲は「どう弾きたいか」を考える時間そのものが楽しみになるからです。

ただし、先に紹介した大人の学習者が「最初からレッスンを受けていればよかった」と振り返っているように、トロイメライは独学で通せても、歌わせる段階では第三者の耳があると進みが段違いです。単発でもいいので、通して弾けた時点で一度プロに聴いてもらうことをおすすめします。大人がピアノでつまずく理由については、大人がピアノを難しいと感じる理由と学び方の記事も参考にしてください。

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トロイメライの練習ステップと簡単版の選び方

トロイメライを声部ごとに分解して組み立てる6ステップの練習法の図

トロイメライの練習は、声部ごとに分解して、少しずつ組み立て直すのが近道です。いきなり両手で楽譜どおりに弾こうとすると、どの音が旋律でどの音が伴奏なのかが分からないまま、全部の音が同じ大きさになってしまいます。レッスンでも「声部ごとに弾く練習と、声部を組み合わせて弾く練習」が指示されるほど、この曲の王道です。

▲ トロイメライの弾き方・練習法の解説(PiaDOOR公式チャンネル)

声部を分解して組み立てる6ステップ

  1. 旋律だけ:一番上の旋律(ソプラノ)を、歌うように弾く。右手と左手を行き来する箇所も旋律だけ追う
  2. 低音だけ:曲の土台になる低音の流れを確認する
  3. 内声の確認:旋律と低音の間で動く声部に印を付け、「押さえたまま動かす」指を確認する
  4. 組み合わせ:旋律+低音、旋律+内声と、2声ずつ合わせる。声部ごとに音量差をつける
  5. ペダル:和音の変わり目で踏みかえを入れる。深く踏まず、浅め・半分を試す
  6. 通し:フェルマータやルバート、フレーズの山とブレスを少しずつ加える

楽譜に色ペンで旋律・内声・低音を塗り分けておくと、弾くときに今どの声部を大切にすべきかが一目で分かります。地味な作業ですが、トロイメライの仕上がりを大きく変える準備です。

「ただ弾いている」から抜け出す練習の工夫

通して弾けるようになったあとの壁が「ただ弾いているように聞こえる」状態です。ここを抜けるための工夫を、経験者とレッスンの記録からまとめます。

  • 旋律以外の声部を「ハミングするように」弱く弾く意識を持つと、旋律が自然に浮かび上がる
  • 片方の声部を歌いながらもう片方を弾くと、声部の流れを体で覚えられる
  • 先生や名演奏家の旋律の歌い方を真似る。レッスンでは先生の手本を聴いて真似る練習が効果的だったと記録されている
  • 長い音は拍を数えて弾く。指定より音を伸ばしすぎない
  • 1回目と繰り返しで歌い方を変える。8回出てくる旋律に、少しずつ違う表情を
  • 聴かせどころの和音は、一音ずつ弾いてフェルマータで伸ばす演奏も選択肢
  • 録音して聴き返し、旋律がいつでもはっきり聴こえているか、音が大きすぎないかを確認する

簡単版を選ぶときのチェックポイント

トロイメライは人気曲なので、初心者向けの簡単版も多く出版・配信されています。全音のDという評価は原曲(ピアノピースNo.005)に対するもので、簡単版の難易度は版によって大きく異なります。選ぶときは次の点を確認しましょう。

  • 内声が省略され、旋律+伴奏のシンプルな形になっているか
  • 手を大きく広げる和音(特に22小節)が、届く範囲の和音に置き換えられているか
  • 原曲のヘ長調のままか、弾きやすい調に移調されているか
  • 指番号が振られているか(旋律をレガートにつなぐ指使いになっているとなお良い)

簡単版で旋律と流れを覚えたら、原曲の楽譜も手元に置いて、どこが省略されているかを見比べてみるのがおすすめです。原曲へ移るときに、新しく覚えるべき音がはっきりします。

原曲の楽譜はどこで手に入る?

原曲の楽譜は、全音ピアノピースNo.005のほか、「子供の情景」全曲の楽譜(ヘンレ版など)にも収められています。また、トロイメライは作曲から長い年月が経ちパブリックドメインになっているため、IMSLP(1839年ブライトコプフ社の初版)やMutopia Projectで無料の楽譜も入手できます。無料楽譜サイトPiaDOORでは、ドレミ付き・全指番号付き・分析付きなど複数の版が用意されており、初心者には指番号付きの版が参考になります。

トロイメライの難易度に関するよくある質問

最後に、トロイメライの難易度について迷いやすいポイントをQ&A形式でまとめます。

トロイメライは本当に「簡単」なの?独学で両手で弾けるようになったけど…

独学で数か月練習して両手でスムーズに弾けるようになった人が、プロの動画を見た友人に「簡単じゃない」と言われた、という質問があります。答えは「両方正しい」です。音を並べる段階まではたしかに初級上〜中級で届きますが、プロが弾くトロイメライは「歌わせる段階」の到達点です。両手で通せたことは立派な第1層のクリアで、ここから声部の音量差やブレスに取り組めば、同じ曲がまったく違って聴こえてきます。

トロイメライとジムノペディはどちらが難しい?

全音ピアノピースでは、サティの「3つのジムノペディ」がC(中級)、トロイメライがD(中級上)で、トロイメライのほうが一段上です。どちらもゆっくりした曲ですが、ジムノペディは旋律と伴奏がはっきり分かれているのに対し、トロイメライは複数の声部が絡み合う点が大きな違いです。ゆっくりした曲に挑戦したい初心者は、ジムノペディでペダルと響きのコントロールに慣れてから、トロイメライに進むと無理がありません。

▲ サティ「ジムノペディ第1番」(カティア・ブニアティシヴィリ公式チャンネル)

手が小さくても弾ける?

弾けます。10度の和音が出てくる第22小節は、音を下から順にずらして弾く(アルペジオ)、左手の最低音2つを先に弾く、内声の一部を反対の手に受け持たせる、といった工夫で対応できます。手の小さな大人の学習者が、5通りの弾き方を比べて自分に合う方法を選んだ例もあります。ただし、どの音を省略・移動してよいかは曲の響きに関わるため、独学の場合も一度は先生や経験者に相談すると安心です。

トロイメライは発表会向き?

トロイメライは短く、聴き手にもなじみのある旋律なので、発表会で演奏しやすい曲の一つです。実際に始めて2年で発表会で弾いた人もいます。一方で、静かな曲は緊張で手が震えると音がそのまま不安定になるという難しさもあります。本番を想定して、家族の前で弾いてみる、録音して聴き返すといった練習を重ねておくと安心です。

感情を込めて弾くコツは?

「感情を込める」を具体的な動作に分解すると、①声部ごとに音量差をつける、②フレーズに山(一番聴かせたい音)を作る、③フレーズの切れ目でブレスを取る、④rit.とa tempoを心地よさ優先で揺らす、の4つです。加えて、曲に場面を与える(子ども時代の記憶、人生を振り返る映画のワンシーンなど)と、音の強弱が自然に決まっていきます。

まとめ|トロイメライの難易度は「耳」で決まる

この記事では、シューマンのトロイメライの難易度と、評価が割れる理由、経験者がつまずいた5つのポイント、何年目で弾けるかの目安、ピアノ初心者が目標にするための段階的な取り組み方を解説しました。

  • トロイメライの難易度:全音ピアノピースで「D(中級上)」。他の基準でも「中級」。ただし「音を並べる」だけならB相当で、「歌わせる」段階がDを押し上げている
  • どこが難しい?:押さえながら動かす内声、旋律の受け渡し、22小節の10度の和音、浅いペダルと小さな音、ルバートとブレス。指の速さではなく耳と手のコントロール
  • 初心者は何から始める?:簡単版で旋律を覚える→原曲の最初の8小節→声部の弾き分け、と3段階で目標を立てる。通せたら一度プロに聴いてもらう

トロイメライは、4小節の歌を8回、少しずつ表情を変えて歌う曲です。少ない音の一つひとつに耳を澄ませることで、どこまでも深まっていきます。トロイメライの難易度を正しく知ったうえで、今の自分に合った段階から、あの夢見るような旋律を自分の指で歌わせてみてください。

ゆっくり歌う曲をもっと知りたい方はドビュッシー「月の光」の難易度と弾き方を、独学で練習を進めたい方は大人のピアノ独学の始め方もあわせてご覧ください。