モーツァルトのトルコ行進曲の難易度は、全音ピアノピースの6段階評価で「B(初級上)」です。ところが、実際に楽譜を開いた人の多くが「これで初級上?」と首をかしげます。ピアノ講師が書いた解説記事を読み比べても「Cくらいでもいいのでは」「中級の入り口が妥当」という声が目立ち、知恵袋では「エリーゼのためにより難しい」という回答がベストアンサーに選ばれています。
運動会やCMで誰もが耳にしてきた曲だけに、「いつか自分の指で弾いてみたい」と思い続けてきた方も多いのではないでしょうか。トルコ行進曲は、勢いで弾けそうに見えて、実は16分音符の粒をそろえる力と右手のオクターブ、そして左手の行進のリズムが試される曲です。だからこそ「今の自分でも届くのか」「どこから手をつければいいのか」を先に知っておくと、途中で投げ出さずに最後まで弾ききれます。
- トルコ行進曲の難易度は、全音や他の基準で見ると本当はどのくらい?
- ピアノを習って何年目くらいで弾けるようになる?子どもと大人で違う?
- 大人の初心者なら簡単版から入るべき?それとも原曲に挑戦していい?
この記事は、トルコ行進曲を「聴く」だけでなく「弾く」ことを考えている方――発表会の選曲に迷う保護者の方、ピアノを再開した大人、独学で練習している初心者の方――に向けて、las-piano編集部が書いています。難易度の根拠、他の有名曲との比較、教本の進度で見る目安、簡単版の選び方、練習のステップまで、順番にお答えします。
トルコ行進曲の難易度は全音ピアノピースで「B(初級上)」
トルコ行進曲の難易度は、全音ピアノピースの基準で「B(初級上)」です。全音楽譜出版社の1曲ずつ買えるシリーズ「全音ピアノピース」では、モーツァルトのトルコ行進曲が「No.004 トルコマーチ」として出版されていて、A〜Fの6段階のうち下から2番目のランクが付いています。
ただし、このBという評価をそのまま受け取ると、練習を始めてから「聞いていた話と違う」となりがちです。ここでは、全音の6段階の中でトルコ行進曲がどの位置にあるか、同じ名前のベートーヴェン版と何が違うか、そして「Bなのに難しい」と感じる理由を整理します。
全音ピアノピースの難易度は6段階
全音ピアノピースの難易度は、A(初級)からF(上級上)までの6段階です。ピアノ教室の先生が発表会の選曲に使うことも多い、日本でいちばん浸透している目安といえます。
| ランク | レベル | 同じランクの主な曲(全音ピアノピース) |
|---|---|---|
| A | 初級 | バッハ「メヌエット ト長調」、ベートーヴェン「エコセーズ」など |
| B | 初級上 | モーツァルト「トルコマーチ」(No.004)、ベートーヴェン「エリーゼのために」、ランゲ「花の歌」、メンデルスゾーン「ヴェニスの舟歌」 |
| C | 中級 | バダジェフスカ「乙女の祈り」、ショパン「子犬のワルツ」、サティ「ジムノペディ」 |
| D | 中級上 | ベートーヴェン「トルコ行進曲」(No.009)、ショパン「ノクターン第2番」 |
| E | 上級 | ショパン「幻想即興曲」、ドビュッシー「月の光」 |
| F | 上級上 | ショパン「英雄ポロネーズ」、リスト「ラ・カンパネラ」 |
表を見ると、トルコ行進曲は「エリーゼのために」と同じランクで、「乙女の祈り」や「子犬のワルツ」より一段やさしい位置づけです。楽譜の見た目の複雑さ、和音の厚み、音域の広さで評価すると、確かに入門〜初級を抜けた人が挑戦できる範囲にある、というのが全音の判断だと読み取れます。
ベートーヴェンの「トルコ行進曲」はD(中級上)で別の曲
「トルコ行進曲」と呼ばれるピアノ曲は、モーツァルトとベートーヴェンの2曲が有名です。ベートーヴェンのトルコ行進曲は全音ピアノピースNo.009で、難易度はD(中級上)。もとは劇付随音楽「アテネの廃墟」Op.113の中の1曲で、ピアノ独奏用に編曲されたものが親しまれています。
知恵袋の「トルコ行進曲とエリーゼのためにはどちらが難しい?」という質問でも、回答者がまず「どちらのトルコ行進曲か」を確認していました。ベートーヴェン版は重音(2つ以上の音を同時に鳴らす弾き方)をしっかり響かせる難しさや、手の大きさによってはアルペジオにせざるを得ない左手の和音があり、モーツァルト版とは別種の難しさがあります。
楽譜を買うときに「トルコマーチ」とだけ書かれていると取り違えやすいので、作曲者名とピース番号(モーツァルトはNo.004)を確認してから購入しましょう。この記事では、以降モーツァルトのトルコ行進曲について解説します。
「Bなのに難しい」と感じる3つの理由
全音のBという評価に対して、現役のピアノ講師や演奏家が書いた記事では「Cくらいでもよいのでは」「中級の入り口が妥当」という意見が目立ちます。知恵袋のベストアンサーも、モーツァルト版はエリーゼのためにより難しいと断言していました。編集部が各記事の根拠を読み比べると、理由は次の3つに集約されます。
- 右手に休みがない。冒頭から16分音符が続き、行進の部分ではオクターブ、中間部ではさらに長い16分音符と、右手が休む場所がほとんどありません。「通して弾くだけで体力を使う」という講師の指摘は、同じBの「花の歌」や「エリーゼのために」にはない特徴です。
- ごまかしが効かない。モーツァルトの曲はペダルで響きをつなげてごまかすことができず、音の粒がそろっていないとすぐに分かります。「真珠が転がるように」と形容される中間部の音階は、音を並べるだけなら簡単でも、聴かせる演奏にするには一段上の技術が必要です。
- オクターブが多い。行進の部分(いわゆるサビ)は右手がずっとオクターブで、左手にもオクターブを含む和音が出てきます。手の大きさで弾きやすさが大きく変わるため、子どもや手の小さい大人にはBより上に感じられます。
つまり、トルコ行進曲は「音を並べるだけならB、聴かせる演奏にするならC」と考えておくと、練習計画を立てるときにズレが出にくくなります。
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トルコ行進曲の難易度を有名曲と比較|エリーゼのために・子犬のワルツ

トルコ行進曲の難易度を実感するには、同じ時期に候補になりやすい有名曲と「難しさの種類」で比べるのがいちばん分かりやすい方法です。上の図は、編集部が各曲の難所を「指を速く・粒をそろえて動かす力」と「手の大きさ(オクターブ・和音)への依存度」の2軸に置いたものです。同じBのエリーゼのためにと、一段上のCにあたる子犬のワルツ・乙女の祈りで、位置がはっきり分かれます。
エリーゼのためにとトルコ行進曲はどちらが難しい?
モーツァルトのトルコ行進曲のほうが、エリーゼのためにより難しいというのが、講師・経験者の意見の多数派です。知恵袋のベストアンサーは「モーツァルトでもベートーヴェンでも、トルコ行進曲のほうが難しい」と明言していて、エリーゼのためには「A部分は簡単、B部分がやや難しい」程度だとしています。
難しさの種類も違います。エリーゼのためには中間部の速い音階と和音の連打が山場で、そこを越えれば有名な冒頭の旋律に戻ってきます。一方トルコ行進曲は、冒頭の16分音符、サビのオクターブ、中間部の長い音階、終結部の装飾音と、山場が4回やってくるイメージです。どちらを先に弾くか迷ったら、オクターブが無理なく届くかどうかで判断するとよいでしょう。エリーゼのためにの難所や練習のコツは、エリーゼのためにの難易度と弾き方の解説記事で詳しく紹介しています。
子犬のワルツ・乙女の祈りとの比較
ショパンの子犬のワルツは全音でC(中級)で、トルコ行進曲より一段上です。ピアノ講師の記事でも「速いパッセージの多い子犬のワルツのほうが難しい」という見解で一致しています。ただし、子犬のワルツはオクターブの連続がなく、手が小さくても指さえ回れば弾けるという点で、トルコ行進曲とは難しさの方向が逆です。手が小さくて指が速い人は子犬のワルツ、手が大きくて指の速さに自信がない人はトルコ行進曲のほうが取り組みやすい、という逆転が起こり得ます。
同じCの乙女の祈りは、トルコ行進曲ほど指を速く動かす場面はありませんが、両手で広い和音をつかみ、アルペジオ(和音の音を1つずつ順番に弾く弾き方)で歌わせる曲です。トルコ行進曲を原曲で弾けたあとに「次は響きを磨く曲を」と考える人に向いています。
海外のピアノ学習者はどう見ている?
海外のピアノ愛好家が集まる掲示板Reddit(r/piano)でも、「エリーゼのために・トルコ行進曲・子犬のワルツのどれから始めるべきか」という定番の質問が立っています。回答の流れは日本とほぼ同じで、エリーゼのために → トルコ行進曲 → 子犬のワルツの順に難しくなるという見方が一般的です。トルコ行進曲については「ゆっくりなら早い段階で弾けるが、本来のテンポで粒をそろえるのは別の話」という指摘が繰り返し出てきます。国が違っても、つまずくポイントは同じだと分かります。
トルコ行進曲はどんな曲?難易度に関わる曲の成り立ち

トルコ行進曲の難易度を正しくつかむには、曲の正体と構成を知っておくのが近道です。モーツァルトのトルコ行進曲は、ピアノソナタ第11番 イ長調 K.331の第3楽章で、楽譜には「Alla Turca(トルコ風に)」と書かれています。1曲の独立した小品ではなく、ソナタの最後の楽章だという点と、同じ部分が何度も戻ってくるロンド形式だという点が、弾きやすさにも関係しています。
ピアノソナタ第11番K.331の第3楽章「トルコ風ロンド」
ピアノソナタ第11番は、1783年ごろにウィーンまたはザルツブルクで作曲されたとする説が有力なソナタです(1778年のパリ説もあり、正確な時期は分かっていません)。第1楽章が変奏曲、第2楽章がメヌエット、第3楽章がトルコ行進曲という、ソナタ形式の楽章をひとつも含まない珍しい構成で、全体を通すと約20分かかります。
第3楽章だけが突出して有名になり、ソナタ全体が「トルコ行進曲付き」と呼ばれるようになりました。楽譜に書かれた正式な表記は「Alla Turca」で、「トルコ行進曲」は通称です。トルコ風ロンド(Rondo alla turca)と書かれている楽譜もありますが、同じ曲を指します。
「トルコ風」の正体は打楽器のリズム
18世紀のウィーンでは、オスマン帝国の軍楽隊「メフテル」の響きが大流行していました。シンバル、大太鼓、トライアングルがにぎやかに鳴る行進曲のスタイルを、モーツァルトはピアノ1台で再現しようとしたのです。左手の分散和音(アルペジオ)は大太鼓とシンバル、右手のオクターブは管楽器の合奏のイメージだと説明する講師が多く、「遠くから行進してくる音楽隊が近づいてくる」ように反復ごとに変化をつけると、曲の表情が出ます。
同じ時代のトルコ趣味は、ハイドンの交響曲第100番「軍隊」や、ベートーヴェンの「アテネの廃墟」にも見られます。モーツァルト自身も歌劇「後宮からの逃走」でトルコ風の音楽を書いています。モーツァルトの他の名曲や生涯については、モーツァルトの有名な曲・名曲を解説した記事で詳しく紹介しています。
曲の構成(ロンド形式)と難しさの対応表
トルコ行進曲は、冒頭の旋律(A)と行進の部分(B)が交互に現れるロンド形式です。上の図と合わせて、それぞれの部分の調と難しさの中身をまとめると、次のようになります。
| 部分 | 調 | 難しさの中身 | 難しさ |
|---|---|---|---|
| A:冒頭の有名な旋律 | イ短調 | 右手の16分音符を均一にそろえる。2小節目頭の音が重くならないように | ★★ |
| B:行進の部分(サビ) | イ長調 | 右手のオクターブ、左手のアルペジオ(分散和音) | ★★★ |
| C:中間部 | 嬰ヘ短調 | 黒鍵が増える長い16分音符。講師が口をそろえて「最難所」と呼ぶ部分 | ★★★★ |
| B’:行進の部分(変奏) | イ長調 | オクターブが16分音符に細かくなって戻ってくる | ★★★★ |
| コーダ(終結部) | イ長調 | 特殊な装飾音、オクターブの跳躍、盛り上がりの中でテンポを崩さない | ★★★★ |
冒頭の旋律(A)だけなら比較的早い段階で弾けますが、最後まで通すと「オクターブ → 長い16分音符 → 装飾音とテンポ維持」の順に壁がやってきます。有名な部分が弾けても全曲は別物、というのがトルコ行進曲の難易度の正体です。
トルコ行進曲の難しいポイント5つと練習のコツ
トルコ行進曲の難しいポイントは、講師・演奏家の解説を横断すると5つに絞れます。どれも「速く弾く技術」というより、一定の粒・一定のリズム・軽いタッチを保ち続ける技術です。自分がどこでつまずきそうかをチェックしながら読んでみてください。
1. 冒頭の16分音符を転ばずにそろえる
トルコ行進曲の冒頭は、右手が細かい音型でぐるりと回り込むように始まります。ここで指の強さの差がそのまま音の大きさのムラになって聴こえてしまい、特に薬指・小指が弱いと音型の途中だけ音が小さくなりがちです。
講師が共通して勧めているコツは、鍵盤を底まで押さえず、半分くらいの深さで弾くイメージを持つことと、指を「下ろす」だけでなく素早く「上げる」(離鍵)を意識することです。スタッカートにする必要はありませんが、指を離す速さを意識するだけでモーツァルトらしい軽いタッチになります。2小節目の1拍目にある8分音符は重くなりやすいので、直後の休符を意識して軽く指を離すのもポイントです。
2. 右手のオクターブ(行進の部分)
イ長調の行進の部分では、右手がオクターブ(1オクターブ離れた2音を同時に押さえる弾き方)で旋律を弾きます。手が小さい方や子どもにとっては、オクターブが届くかどうかが最初の関門です。届いても、手首が固まると音が硬くなり、腕がすぐに疲れます。
指番号は白鍵が1と5、黒鍵が1と4が一般的で、4の指を使うと手首の移動が少なくなり音を外しにくくなります。練習の順番としては、まず親指だけでメロディーをなぞって幅を覚え、慣れてから小指を足す方法が講師から勧められています。小指を突き立てると音が輝きますが、大きくなりすぎるので注意しましょう。どうしてもオクターブが届かない場合は、上の音だけを弾く簡単版から始める方法もあります。
3. 左手の分散和音と行進のリズム
行進の部分の左手は、和音を下から素早く崩して鳴らす弾き方(アルペジオ)で、大太鼓とシンバルを表現しています。最初は装飾音を和音として同時に弾き、慣れてから少しずらす練習が効果的です。バスの音(いちばん下の音)にわずかなアクセントをつけ、他の音は軽く短く弾くと、行進のリズムが前に進みます。
左手のマーチ風の伴奏は全曲を通して出てくるので、スラーとスタッカートの指示を最初に確認して、確実に覚えてしまうのが近道です。ペダルは控えめにし、ハーフペダル(半分だけ踏む)で響きすぎを防ぐと、当時のフォルテピアノに近い軽快さが出ます。
4. 中間部の長い16分音符(最難所)
嬰ヘ短調に転調する中間部は、右手の16分音符が長く続き、黒鍵も増えるため、講師が口をそろえて「最も難しい部分」と呼ぶ場所です。ここで指が転ぶと曲全体が崩れて聴こえます。
練習法として複数の講師が紹介しているのは、次の2つです。
- 2音ずつのまとまりで考え、頭の音にアクセントをつけて練習する。次に2つ目の音にアクセント、と一音ずつずらしていくと、どの指も均等に鳴らせるようになります。
- フレーズをすべてスタッカートで弾き切る。腕の力みが抜けて指が軽く動くようになり、そのあと腕の重さを少しずつ鍵盤にかけると「コロコロした音色」に移行できます。
音名を声に出して覚えてから弾く、指使いを先に決めて楽譜に書き込む、という基本も、この部分では特に効きます。
5. コーダの装飾音と跳躍するオクターブ
終結部(コーダ)は、拍手や歓声が続くような華やかさがある一方、装飾音、和音、16分音符のスラーとスタッカートが詰め込まれた、いちばん忙しい部分です。特に101小節目付近の装飾音は特殊で、「ミ」と「レ」を同時に弾き、離すときに「ド」をスタッカートで弾くという弾き方を紹介する講師もいます。
コーダ直前では右手のオクターブが跳躍するため、ミスタッチがいちばん起きやすい場所です。次の音の位置に手を準備してから押さえる、焦らず1音ずつ丁寧に、が鉄則です。最後はテンポやリズムを変えず、重くならないように軽快に締めると、曲全体が引き締まって聴こえます。
ピアノ何年目でトルコ行進曲が弾ける?教本の進度と年齢で見る目安

「ピアノ何年目でトルコ行進曲が弾けるか」は、習い始めた年齢や練習時間によって大きく変わります。講師の記事を比べても「3年真剣に取り組んで弾けるかどうか」「3年以上の経験があれば半年〜1年で」「5〜6年を見込むとよい」「小学3年生・ピアノ歴4年で弾けた」とばらつきがあり、年数だけでは判断できません。確実なのは「今どの教本を弾いているか」で見ることです。
教本の進度とトルコ行進曲の目安表
| 今の教本の段階 | おすすめの版・範囲 | ポイント | 年数の目安 |
|---|---|---|---|
| バイエル・導入教本の途中 | 簡単版(初級アレンジ) | 旋律と簡単な左手で曲の流れを楽しむ | 1〜2年目 |
| ブルグミュラー25の練習曲 | 原曲の冒頭(A)〜簡単版の全曲 | 16分音符をそろえる練習に最適 | 2〜3年目 |
| ブルグミュラー修了〜ソナチネ | 原曲の全曲(全音No.004) | オクターブとテンポ維持が課題 | 3〜5年目 |
| ソナチネ修了〜ソナタ | 原曲を表現まで仕上げる | 軽さ・強弱・装飾音の美しさを磨く | 5年目〜 |
この表は、各教本で身につく技術とトルコ行進曲で求められる技術を照らし合わせた当サイトの目安で、年数は「週1回のレッスン+毎日少し練習」という子どもの標準的な進度を想定しています。講師の記事でも「ソナチネを卒業したくらいが目安」「ツェルニー30番〜40番、ソナチネ終盤〜ソナタのレベル」という表現が多く、全音Bという評価より少し先の段階で「原曲に手が届き始める」と考えるのが現実的です。
子どもの場合:小学生でも弾ける?発表会の目安
子どもの発表会でトルコ行進曲が選ばれることは珍しくなく、小学校高学年〜中学生なら適切な練習で十分に弾けるというのが講師の共通見解です。実際に「小学3年生、ピアノ歴約4年で弾けるようになった」という演奏家の体験談もあります。
ただし目安にしたいのは学年ではなく、オクターブが無理なく届く手の大きさがあるかと、ブルグミュラー程度の16分音符を均一に弾けるかの2点です。手が小さいうちにオクターブを無理に広げると指を痛めることがあるため、オクターブを単音にした版を先生と相談して選ぶとよいでしょう。モーツァルト自身が書いた曲なので、初心者向けに編曲された練習曲にありがちな「弾きやすいけれど不自然」という問題がなく、子どものモチベーションが上がりやすい曲でもあります。
大人の場合:独学でも弾ける?練習時間で考える
大人の再開組や初心者の場合、子どもより手が大きくオクターブが届きやすい一方で、まとまった練習時間を取りにくいのが悩みどころです。大人の場合は「何年目」よりも「1日に何分、何か月で仕上げるか」という逆算のほうが現実的です。
独学については、講師の記事では「よほどの練習量と時間がない限り難しい」という慎重な意見があります。理由は、我流の指使いが癖になりやすいことと、粒のムラを自分で聴き分けにくいことです。ただ、トルコ行進曲は旋律になじみがあって譜読みが進みやすく、繰り返しが多いので覚える量は見た目より少ない曲でもあります。指使いが細かく書かれた楽譜を選び、録音して自分の演奏を聴き返す習慣をつければ、独学でも原曲に到達できます。独学の進め方全般は大人がピアノを独学で練習する方法で詳しくまとめています。
トルコ行進曲の簡単版(初級アレンジ)の選び方

トルコ行進曲の簡単版(初級アレンジ)は、「オクターブ」「左手」「長さ」の3点がどこまで簡単になっているかで選ぶのが失敗しないコツです。「簡単」「初級」と書かれていても、どこを簡単にしたかは楽譜によってまちまちで、短くなっただけで指づかいはほぼ原曲どおり、という版も少なくありません。
簡単版を選ぶ3つのチェックポイント
- ① オクターブ:行進の部分の右手がオクターブのままか、単音や3度に置き換えられているか。手が届かない人は単音版を選びます。
- ② 左手:原曲どおりのアルペジオ(分散和音)か、2音の伴奏や単音に簡略化されているか。左手が原曲のままなら、それは実質「原曲の短縮版」です。
- ③ 長さ:中間部(C)やコーダが省略されているか、繰り返しがカットされているか。
この3つがすべて簡単になっている版は、導入教本を終えたくらいの方でも取り組みやすくなります。購入前に楽譜サンプルの1ページ目と行進の部分を確認すれば、3点とも判断できます。ヤマハの「ぷりんと楽譜」のようなダウンロード販売サイトなら、同じ曲の初級・中級・上級アレンジを並べて見比べられるので便利です。
簡単版から入ったほうがいい人
次のどれかに当てはまる方は、簡単版から入るのがおすすめです。
- オクターブがまだ無理なく届かない(子ども・手の小さい大人)
- バイエル・導入教本の途中で、16分音符の曲をまだ弾いたことがない
- 「とにかく早く1曲通して弾きたい」「家族に聴かせたい」が最優先
簡単版で曲の流れと左手のリズムを体に入れておくと、原曲に移ったときの譜読みが驚くほど楽になります。
原曲に早めに挑戦したほうがいい人
一方で、ブルグミュラーを終えている人や、すでにソナチネを弾いている人は、簡単版を経由せずに最初から原曲を部分練習するほうが近道です。簡単版で覚えた左手や指づかいは、原曲に移るときに覚え直しが必要になることがあるからです。
「原曲の冒頭(A)だけ」を目標にするのも立派な選択肢です。冒頭の旋律はトルコ行進曲でいちばん有名な部分なので、そこが原曲どおりに弾けるだけでも十分な達成感を味わえます。原曲の楽譜の選び方は、後半のよくある質問で紹介します。
大人・初心者がトルコ行進曲を弾くための練習ステップ

大人の初心者がトルコ行進曲を最後まで弾ききるコツは、曲を部分ごとに分け、ゆっくりのテンポで1つずつ仕上げていくことです。いきなり通して弾こうとすると、難しい部分で毎回止まり、そこだけが上達しないまま時間が過ぎてしまいます。ここでは「1日20〜30分」で原曲を目指す大人を想定した、5つのステップを紹介します。
STEP1〜2:左手のリズムと冒頭の右手(1〜3週目)
最初に練習したいのは、意外にも左手です。トルコ行進曲は左手のリズムが安定しているほど、右手の細かい音型が自由に動ける曲だからです。左手だけでメトロノームに合わせて、行進の伴奏を最後まで弾けるようにしましょう。
左手が安定したら、冒頭の右手(A)を片手で練習します。付点のリズム(タッカ、タッカ)に変えて弾く練習をはさむと、弱い指が鍛えられて粒がそろいやすくなります。指番号は楽譜どおりを守り、番号のない音は自分で決めて書き込んでおくと、あとで迷いません。
STEP3〜4:行進の部分と中間部(3〜8週目)
行進の部分(B)は、右手のオクターブを「上の音だけ」で先に覚えてから下の音を足すと、手が覚えやすくなります。左手の装飾音は、最初は和音として同時に弾いてかまいません。
中間部(C)は、2小節ずつ区切って、つなぎ目を重ねながら練習するのがおすすめです。つなぎ目でつまずく人が多いので、区切りの最後の音と次の最初の音をセットで弾く練習をはさみましょう。前述の「2音ずつアクセント」「全部スタッカート」の練習も、この段階で取り入れます。
STEP5:通し練習とテンポアップ(8週目〜)
すべての部分が片手・両手で弾けるようになってから、初めて通し練習に入ります。テンポは♩=100前後のゆっくりから始めて、5ずつ上げていくのが目安です。トルコ行進曲の速度表示はAllegretto(やや速く)で、よく聴く演奏は原曲の指示より速いことが多いと指摘する講師もいます。速さを競う曲ではないので、崩れないテンポで止めておく判断も大切です。
通せるようになったら、強弱をつけて仕上げます。楽譜にはメゾピアノとピアノしか書かれていない部分も多いので、2小節ごとに強弱を変える、4小節ごとに変えるなど、自分の好みで設計してかまいません。サビのフォルテは大音量にしすぎず、ピアノとの対比で聴かせると、当時のフォルテピアノらしい軽快さが出ます。
「ひとりで練習計画を立てるのが不安」「難しい部分の弾き方を動画で確認しながら進めたい」という方は、1曲を仕上げることに特化したオンライン講座を使うのも一つの方法です。マナビーノ(楽曲マスター講座)の紹介記事で、講座の内容と向いている人をまとめています。
\難所の弾き方を動画で確認しながら進める/
トルコ行進曲の難易度に関するよくある質問
最後に、トルコ行進曲の難易度について迷いやすいポイントをQ&A形式でまとめます。
指が速く動かなくても弾ける?
弾けます。トルコ行進曲の速度表示はAllegrettoで、超絶技巧の速さが必要な曲ではありません。大切なのは速さよりも、16分音符の粒をそろえて一定のテンポを保つことです。ゆっくりでも整った演奏のほうが、速くて崩れた演奏よりずっと音楽的に聴こえます。知恵袋の回答者も「音の均一さを気にしなければかなり速く弾ける」と述べていて、速さそのものより均一さが評価の分かれ目だと分かります。
ペダルは使う?
トルコ行進曲はペダルが少なくて済む曲で、「ペダルが難しくないので小学生にもおすすめ」と挙げる講師もいます。完璧でなくても要所で適度に踏めれば様になりますし、ノンペダルで粒をそろえる練習にも向いています。使う場合は全開で踏まず、ハーフペダルやクォーターペダルで響きすぎを防ぐのがコツです。
原曲の楽譜はどれを選べばいい?
トルコ行進曲だけを弾きたいなら、1曲ずつ買える全音ピアノピースNo.004「トルコマーチ」が手に取りやすい選択肢です。価格が手ごろで譜面台に置きやすく、書き込みもしやすいのが利点です。
ピアノソナタ第11番を第1楽章から通して弾きたい方や、今後ほかのモーツァルトのソナタにも挑戦したい方は、K.331を収録したソナタ集を選ぶと長く使えます。講師の間ではウィーン原典版(第2巻にトルコ行進曲を収録)を勧める声があります。版によって指づかいや強弱記号、装飾音の書き方が少しずつ異なるので、先生についている場合はレッスンで使う版を先に確認してから購入すると、指づかいの直しが少なく済みます。独学の場合は、指づかいが細かく書き込まれている版を選ぶと迷いにくくなります。
なお、著作権が切れているため、IMSLPやMutopia Projectで古い版の楽譜を無料で閲覧できます。ただし古い版は指づかいや装飾音の表記が現代の楽譜と違うことがあるので、最初の1冊には市販の楽譜をおすすめします。
トルコ行進曲の次に挑戦するならどの曲?
トルコ行進曲を原曲で弾けたら、全音でC(中級)にあたるバダジェフスカ「乙女の祈り」、ショパン「子犬のワルツ」、サティ「ジムノペディ」が次の目標になります。子犬のワルツは「速い指」をさらに磨く方向、乙女の祈りとジムノペディは「響き」や「歌わせ方」を磨く方向で、どちらに進むかで次の課題が変わります。モーツァルトをもっと弾きたい方は、同じK.331の第1楽章(変奏曲)に進むと、トルコ行進曲で身につけた軽いタッチがそのまま生きます。
まとめ|トルコ行進曲の難易度は「Bで始めてCで仕上がる」
この記事では、モーツァルトのトルコ行進曲の難易度を、全音の評価、講師・経験者の意見、曲の構成、教本の進度の4つの角度から整理しました。冒頭の3つの疑問への答えは次のとおりです。
- 難易度:全音ピアノピースではB(初級上)。ただし講師の多くが「中級の入り口」と感じており、エリーゼのためにより難しく、子犬のワルツよりやさしい位置。音を並べるだけならB、聴かせる演奏にするならCと考えると実態に近い。
- 何年目で弾ける:年数よりも教本の進度で判断する。ブルグミュラー修了〜ソナチネの段階(子どもなら習い始めて3〜5年目が目安)で原曲の全曲に手が届く。小学校高学年以上なら十分に挑戦できる。
- 簡単版か原曲か:オクターブが届かない・16分音符の曲が初めてなら簡単版から。ブルグミュラーを終えていれば最初から原曲を部分練習するほうが近道。簡単版は「オクターブ・左手・長さ」の3点をサンプルで確認して選ぶ。
トルコ行進曲は、冒頭の旋律だけなら早い段階で弾けますが、全曲を通すとオクターブ、長い16分音符、コーダの装飾音と、壁が順番にやってくる曲です。だからこそ、部分ごとに「弾けた」を積み上げていく練習が、結果的にいちばんの近道になります。
トルコ行進曲の難易度を正しく知ったうえで、簡単版・冒頭だけ・原曲の全曲と、今の自分に合った目標から一歩ずつ挑戦してみてください。モーツァルトの他の曲も弾いてみたい方はモーツァルトの名曲解説を、もっとやさしい曲から始めたい方はピアノ初心者向けの簡単な曲の紹介記事もあわせてご覧ください。